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太平の世に行き場を失い、人生に惑う武家の男達。身一つで生きる女ならば、答えを知っていようか。
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第154回(2015年下半期)直木賞を受賞した小説「つまをめとらば」(著者:青山文平氏)は、表題作を含めた5つの中編小説から構成されている。「戦の時代が終わり、太平の世を迎えた中で、“戦う”という自身のアイデンティティーを取り上げられ、人生に迷う武家の男達が、様々なタイプの女性を見詰めている。男の立場からすると不思議だったり、理解し辛かったりする女性という生き物を淡々と、そして時には情緒的に描いた作品群。」といった感じ。
青山氏の作品を読むのは今回が初めてなのだが、同性として感じるのは「女性の心理描写が、実に上手いなあ。」という事。男性の身からすると思いが馳せ辛い女性の心理をさらっと描き上げ、「そういうもんなんだ。」とか「確かにそうなのかも。」と納得させられてしまう。「自分の容姿等に自信が持てない女性が、自分よりも凄いと思ってしまう女性達に対して悋気を抱き、そして其の事で落ち込んでしまうものの、悋気を抱いた女性達の“真の姿”に触れた事で、“濁った心”が氷解して行く。」というストーリーの「乳付」という作品なんぞは、其の最たる物。
表題作の「つまをめとらば」も、老いた男性の心の内が何とも切なく、心に残る作品で、総合評価は星4つ。