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様々な部署のプロフェッショナルが集う、組織犯罪対策部マネロン室。新たな捜査の対象となったのは、仮想通貨の取引所・ビットスポット。マネー・ロンダリング担当の樫村恭祐(かしむら きょうすけ)は、CEOに事情聴取を求める。そして、ITの隠れ蓑から姿を現さなかった犯罪者が、遂に現実世界での犯行に出る。
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ミステリーに限らない事だが、古い小説を読んでいると、記述の意味合いが良く判らない事が在ったりする。其れは物で在ったり、設定で在ったりするのだが、例えば今の若い人達にとっては、レコード・プレーヤーを使ったトリックなんていうのは、但し書きが無いと、何の事だから判らないかも知れない。レコード・プレーヤーの存在自体を知らない可能性が在るから。「作品が書かれた当時は普通の事でも、後になると普通では無い。」という事は結構多く、逆に言えば「“過去の人達”が現在に連れて来られた場合、“今の小説の記述”の意味合いが判らない。」という事も、当然在るだろう。
今回読んだ「引火点 組織犯罪対策部マネロン室」(著者:笹本稜平氏)は仮想通貨、マネー・ロンダリング、ハッカー、タックス・ヘイヴン等、“昔の世界”には存在しなかった事柄や用語が取り上げられており、“過去の人達”が読んでも珍紛漢紛な内容に違い無い。
仮想通貨に関しては特に詳しい訳では無いけれど、マウントゴックスやコインチェックを巡る事件は知っている。今後、仮想通貨がどうなって行くのかは不明なれど、少なくとも現状では“投機対象”という面が強く、又、ハッキングやらマネー・ロンダリングに利用される危うさを秘めているのは事実で、そういう事を改めて感じさせられる作品だった。
此の小説で描かれている様な事態、現実社会でも起こり得る事だとは思うけれど、FBIだCIAというのが絡んで来ると、少なくとも今回の作品では風呂敷を広げ過ぎな感が在り、自分にはぴんと来なかった。
総合評価は星2.5個。