ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「池袋ウエストゲートパークⅨ ドラゴン・ティアーズ-龍涙」

2009年10月18日 | 書籍関連
「ふっと頭に浮かんだ曲のタイトル、又はその曲の詞がどうしても思い出せない。其処で知人にハミングして聞かせるも、やはり判らなくてもどかしい思いをずっと持ち続ける。」、そんな経験をされた方は少なくない事だろう。そんな人達に御薦めのサイトが「midomi」。こちらでは「マイクを通して曲の一部を歌えば、当該しそうな曲名候補がズラッと並ぶという塩梅。思い出せずに苛々させられるという事も、少なくなるのではないだろうか。

閑話休題

小説にはシリーズ物が結構在るけれど、著者がそのシリーズにどういう思いを抱いているかは千差万別だろう。それが実際に当っているかどうかは著者に確認しないと判らないけれど、小説を読み漁っていると「義務感だけで嫌々書き続けている。」のと、「著者自身がノリノリで書いている。」のとは或る程度見分けが付く。石田衣良氏の「池袋ウエストゲートパーク」シリーズの場合は後者の様に感じる。“比喩力の王様”の実力を存分に味わえ、ストーリーも他作品に比べて流麗さを増している様に思うから。その「ウエストゲートパーク」シリーズの第9弾が「池袋ウエストゲートパークⅨ ドラゴン・ティアーズ-龍涙」で在る。

*************************************
茨城の“奴隷工場”から中国人研修生の少女が脱走した。彼女が1週間以内に戻らなければ、残り249人の他の研修生達は中国に強制送還されてしまう。彼女の捜索を頼まれた真島誠(マコト)は、チャイナ・タウンの裏組織“東龍”に近付く。
*************************************

「悪質なキャッチセールス被害に遭った女性を救う『キャッチャー・オン・ザ・目白通り』。」、「弱肉強食の構図に懊悩するホームレスを救う『家なき者のパレード』。」、「出会い系の店で働く女性と、彼女に思いを寄せて救い出そうとする“彼女いない歴28年”のサラリーマンを描く『出会い系サンタクロース』。」、そして「上記梗概の『ドラゴン・ティアーズ-龍涙』。」の4編で、この本は構成されている。「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」では「オカマ・キャラで有名な某メイクアップ・アーティストを思わせる人物」に苦笑させられ、“普段見せる顔”と“裏の顔”の落差には「然も在りなん。」と感じた。

だからさ、社会にとっては、サブプライムローンもホームレスの人たちも、一箇所に集めておくと人目につくし危険なんだよ。それでばらばらにして、薄く広くばらまく。そういう方法で、問題を全部なかったことにしてしまうんだ。

「家なき者のパレード」に書かれた一節だが、そういう面は確かに在ると思う。御役所関係に直接電話して雇用情勢を確認しようが、其処で確認出来た事が全てでは無い。「そういった一部の情報以外は一切存在し得ない。」とばかりに、「働きたい。」という思いが強いホームレス迄も十把一絡げで、それも嬉々としてバッシングしているかの様な人達には、どうしても自分はシンパシーを感じ得ない。

一番印象に残ったのはこの本のタイトルでも在る「ドラゴン・ティアーズ-龍涙」だった。「上を見ても限りが無し。下を見ても又限が無し。」というのは世の常。我が国もその例外では無いし、貧困に喘ぐ者は居るけれど、それでも海外に目を向けると未だ未だ恵まれているとは思う。中国の貧富の差はしばしば見聞しているけれど、この小説でもその差の激しさを改めて感じさせられる。

*************************************
リンが帰ってから、おれは自分の四畳半で天井を見あげていた。働くこととその報酬の関係について考えていたのだ。正社員と非正規派遣社員のあいだには格差がある。こいつはもう誰もがしっている社会的トピック。だがそのしたには、さらに外国人労働者の集団がいるという。労働条件にも時給にも、おまけに仕事のイケテル度にも果てしない格差があるのだった。

よくメジャーリーグの中継なんかで、アナウンサーがいってるよな。ニューヨーク・ヤンキースのスーパースターの年俸が二十二億円。一打席あたりの報酬は、初球を引っかけたあの冴えないぼてぼてのショートゴロでも三百万円弱なのだ。

スーパースターの締りのないワンスイングと研修生が生きるたのしみをすべて封印して三年間でためる金額が、ほぼ同じ。なにかが間違っている気がしたけれど、おれにはどこに間違いがあるのか、まったく指摘できなかった。労働と報酬の関係は、永遠の謎である。
*************************************

資本主義社会に於いては、才能在る人間が、その才能に見合った高給を得るのは何等おかしい事では無い。唯、「必死で働いている者が、不当に安い対価しか得られない状況。」というのは、とてもまともな事とも思えない。

“池袋のトラブル・シューター”マコトに、今回“妹”が誕生する。今後の展開が更に楽しみ。

総合評価は星4つ

コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 日本シリーズに進出出来るチ... | トップ | 別の生き方 »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown ()
2009-10-18 20:12:57
とても面白そうです参考になりました
返信する
>K様 (giants-55)
2009-10-18 22:11:04
書き込み有難う御座いました。

当り外れが概して少ない石田作品の中でも、やはり「池袋ウエストゲートパーク」シリーズは別格の存在と改めて感じました。是非読んでみて下さい。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。