17年前の記事「ハラショー!」でも記したが、アラ還の自分にとってサーカスは、独特な存在感を有している。"華麗で楽しいパフォーマンスを堪能出来る場所"で在る一方で、"心寂しさや怪しさを感じる場所"でも在ったから。後者の場合、「派手なメークをしているものの、素の表情が窺い知れないピエロに、恐怖感めいた物を感じたりもする。」というのも在るが、何と言っても「サーカスに行くと良く流れていた曲『天然の美』【歌】の物悲しい曲調。」に加え、「子供の頃に夢中になって読んでいた『少年探偵団シリーズ』で、悪漢が出入りしている場所が古い洋館やサーカスだった。」事が大きいだろう。なので、悪さをすると親から「そんなに悪い事をするなら、サーカスに売っちゃうよ!」と怒られた当時の子供は、結構居たのではないか?
自分が此れ迄に観に行ったサーカスは、木下大サーカスとキグレサーカス、そしてボリショイサーカスの各1回ずつ。木下大サーカスとキグレサーカスを観に行ったのは子供の頃で、ボリショイサーカスは17年前だった。大昔、"日本の3大サーカス"と言えば木下大サーカスとキグレサーカス、そして矢野サーカスとされていたが、矢野サーカスは1996年に活動休止と成り、キグレNewサーカスと団体名を変えていたキグレサーカスも2010年に廃業したそうだ。木下大サーカスは現在も頑張っており、1996年に設立されたポップサーカス、そしてハッピードリームサーカスが、今は日本3大サーカスと呼ばれている様だ。
サーカスと言えば昔は象や虎等の動物のパフォーマンスも売りの1つだったが、「調教等が動物虐待に当たる。」として、世界的に動物使用禁止の流れが在る。サーカス事情も、大昔とは随分変わっている様だ。そんな今のサーカス事情を紹介していたのが、18日に放送された紀行ヴァラエティ番組「クレイジージャーニー」【動画】。ポップサーカスの団長・久保田悟氏が、パフォーマーのスカウトの為、メキシコとキューバを訪れた際の映像が流されていた。
父はサーカスの裏方、母は綱渡りのパフォーマーというサーカス一家に育った久保田氏。親戚もサーカスでパフォーマー等を務めている中、彼だけは裏方なのだとか。でも、「団長って派手な燕尾服とハットを着用、口髭を生やして、手に持った鞭(ベンジャミン伊東のイメージ)で虎等の猛獣の芸を見せるパフォーマーでは?」と思ったりするのだが、分業制が進んだ今のサーカスでは、団長の彼は裏方としてパフォーマーのスカウト等を担当しているそうだ。
【伊東四朗氏扮するベンジャミン伊東】
「サーカスの団体は世界で3千以上在り、抱えるパフォーマーの数は10万人以上。」と言う。そんな中、「国土面積は日本の約5倍、総人口は日本と余り変わらない約1億2,600万人。」というメキシコは、「国内に大小併せて300程の団体を有するサーカス国。」なのだそうだ。カナダのシルク・ドゥ・ソレイユやアメリカに存在したリングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス等の様な大規模な物では無く、家族で経営する庶民向けサーカスが一般的。
今回、久保田氏はメキシコで幾つかのサーカスを訪れた様だが、映像として紹介されたのは2ヶ所で、其の内の1つ「ティアニーサーカス」は凄かった。家族経営では無く、世界各国からトップ・パフォーマーを搔き集めたエリート集団。メキシコ最大級とされる同サーカスは、会場の外観も中も豪華絢爛だし、何よりもパフォーマーの質の高さが半端無い。実際の映像が見付からなかったのが残念だが、男性1人で演じるパントマイムは衝撃的だった。
"狭い世界"という事も在って、"パフォーマーの強引な引き抜き"というのは、サーカスでは御法度らしい。パフォーマー本人のみならず、団体の経営者と「年間契約料や移籍金、パフォーマーへの報酬、渡航費、保険料、家賃。食費、契約期間、シフト等。」をきちんと詰めた上、穏便にスカウトするのが普通。パフォーマンス力等によって上下は在るが、年間契約料の相場は「空中ブランコ:4人で約2千万円、バランス芸:1人約400万円、オートバイ・ショー【動画】:3人で約1,700万円~1,800万円。」との事。契約料に関してだけとはいえ、「意外と安いんだなあ。」という感じが。
社会主義国という事も在って、キューバにはサーカスの団体が1つしか存在しない。「国営サーカス」という位置付けで、所属する人は皆"公務員"。サーカスを"芸術文化"と捉えている同国では、サーカスの社会的地位は低く無く、同国唯一のサーカス団体「シルクバ」にはサーカスのパフォーマーを養成する学校(国内から集まった14歳~18歳のエリートが所属し、学校の勉強とサーカスのパフォーマンスを学ぶ。)も併設されている。「此の学校が施設面のみならず、指導者の質&量共に充実していた。」のが印象的だった。