*********************************
公園の木立で発見された絞殺死体は、裸足の女性。捜査本部に着任した警視庁捜査一課のキャリア管理官は、我が息子だった。同時に“帳場壊し”で知られる捜査十三係の鬼係長・山岡宗男(やまおか むねお)も派遣されて来た。
26歳警視の俊史(としふみ)と犯人を追う事になった城東署の強行犯係長・葛木邦彦(かつらぎ くにひこ)の、所轄刑事の意地を懸けた苦闘の日々が始まった。
揺れる捜査方針に、本庁と所轄の面子が火花を散らしてぶつかり合う!
*********************************
笹本稜平氏の「所轄魂」は、先達て読了した「失踪都市 所轄魂」の前作で在り、「所轄魂シリーズ」の第一弾に当たる。
主役の葛木父子に関しては此方に詳細を記しているが、ノンキャリアの父・邦彦とキャリアの息子・俊史という警察官父子で、共に“警察の腐敗した部分”を何とかしようとしている。キャリア管理官として初めて捜査本部に着任した息子を、不安の思いで見詰める邦彦。そして、刑事としての父親を尊敬し、心が揺らいだ際には、父親に相談を持ち掛ける俊史。べったりとする事無く、だからと言って突き放した感じでも無く、程良い関係性の父子に、どんどん感情移入してしまう。年頃の子供を持つ親ならば、余計にそんな風になってしまう事だろう。
程度の差は在りこそすれ、どんな組織にも“我が強くて、組織を掻き乱す人物”というのは居るもの。「所轄魂」で言えば、捜査十三係の係長・山岡がそうで、本庁の人間として所轄の人間を馬鹿にし、ノンキャリアの人間としてキャリアの俊史を忌み嫌う事から、捜査現場が攪乱されて行く。そんな山岡に対し所轄組が、“所轄魂”を見せて行く所に小気味好さを感じる。
「失踪都市 所轄魂」よりは謎解き要素が低い様に感じるけれど、キャラクターの魅力やストーリーの面白さは評価出来る。一般的な知名度は高く無い様に思うが、笹本稜平氏の筆致はもっと評価されて良いと思う。
総合評価は、星4つ。