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此の人は、人生をリノヴェーションする積りだ。亡き夫から莫大な遺産を相続した女性の前に絶縁した筈の兄が現れ、「貴方は偽者だ。」と言い出す。女性は一笑に付すが、一部始終を聞いていた元マジシャンのマスター・神尾武史(かみお たけし)は、驚くべき謎解きを披露する。果たして、嘘を吐いているのは何方なのか?謎に包まれたバー「トラップハンド」のマスターと、彼の華麗なる魔術によって変貌を遂げて行く女性達の物語。其の“マジック”は、謎解きの為の華麗な武器。全貌を知る時、彼女達は何を思うか?そして、どう生きて行くのか?
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東野圭吾氏の小説「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」は、「『ブラック・ショーマン』シリーズ」の第2弾。超一流のマジシャンだったが、現在はバー「トラップハンド」のマスターを務める神尾武史と、其の姪で不動産会社のリフォーム部で働いている神尾真世(かみお まよ)を主人公とし、彼等に関わる女性達を描くミステリー。全部で6つの短編小説から構成されている。
観客を騙す卓抜したテクニックが無ければ、一流には成れないマジシャン。超一流のマジシャンだった武史には、其れに加えて優れた洞察力を有している。臨機応変に平然と“嘘”を吐き、謎を解いて行く彼に、真世は呆れ乍らも、凄さも感じている様だ。
一番最初の作品「トラップハンド」で武史に“男性の査定”をして貰った女性が、最後の作品「査定する女」で“査定される側”となる。ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、“着地点を決めた上での巧みな前振り”は見事だ。
唯、其の最後の作品「査定する女」が、“余りにも芝居じみた設定”なのが、個人的には鼻白んでしまった。「恐らくは、こういう“落ち”になるんだろうなあ。」という読みが当たってしまったのも、ガッカリ感を増させた。凡庸な作家の作品ならば、充分に合格点を与えられるのだろうが、高く評価している東野氏の作品なので、自分が求める物は非常に高いのだ。
総合評価は、星3つとする。