「2014本格ミステリ・ベスト10【国内編】」の1位に輝いた「貴族探偵対女探偵」(著者:麻耶雄嵩氏)を読了。麻耶氏の作品を読むのは、「隻眼の少女」に次いで2作品目。「隻眼の少女」は「2011本格ミステリ・ベスト10(国内編)」の1位となり、自分の総合評価も「星4つ」としたが、「本格ミステリ・ベスト10」で高い評価を得た作品は概して、「個人的には、ぴんと来ない物が多い。」のだが・・・。
「貴族探偵対女探偵」は「貴族探偵シリーズ」の第2弾で、5つの短編小説から構成されている。「高級なスーツを着込み、立派な口髭を蓄えた優男。」、「上流階級に属しているらしく、裕福で浮世離れしている。」、「女性に目が無い。」、「空気が読めない言動が多く、人の神経を逆撫でする様な皮肉を口にする。」、「自称『貴族』で、趣味は『探偵』。」というのが、貴族探偵のキャラクター設定。
一方、女探偵は高徳愛香(たかとく あいか)という名前。大学を1年で中退し、名探偵として名高い師匠の許に弟子入りして修行するも、其の師匠は4年半後に癌の為、45歳の若さで死んでしまう。探偵として独り立ちし、半年間の間に大きな事件を2つ解決。探偵の世界で、名前が少しは知られる様になったという状況。
しかし、行く先々で貴族探偵と出会す様になって以降、愛香の評判はがた落ちしてしまう。貴族探偵の皮肉や挑発によって神経を逆撫でされた愛香が、発生した殺人事件の謎解きに失敗するだけで無く、代わりに貴族探偵に謎解きされてしまう事が続いたからだ。「自信満々に推理を口にするも、全くの誤りで、別の人間が謎解きをしてしまう。」というのは良く在るパターンで、古くは「加藤武氏演ずる警察関係者(橘署長等)と金田一耕助」、最近で言えば「毛利小五郎と江戸川コナン」なんかがそうだ。
「代わりに貴族探偵に謎解きされてしまう」と記したが、此れは正確では無き。実際に謎を解くのは執事や運転手、料理人、メードと、貴族探偵の使用人達で在り、貴族探偵自身は一切推理しないのだ。
ネット上の書き込みで知ったのだけれど、麻耶氏は「○○という要素を取り除いても、探偵と言えるのか?」という実験的な設定を、幾つかの作品で試みているのだとか。○○は「ロジック」で在ったり、「モラル」で在ったりだとかするのだが、此の貴族探偵シリーズでは「推理」という事になる。「自分自身で推理しない人間でも、(自身の)使用人達の推理で謎解き出来れば、探偵を自称出来るのか?」という読者への問い掛け。
そういう意味では斬新な設定と言えるが、自身で謎解きを一切せず、皮肉や挑発をするだけの貴族探偵というのは、茶々を入れているだけという感じで、唯々うざい存在にしか思えなかった。肝心のトリックも目新しさが無く、ストーリーに深みを感じ得なかった。
総合評価は、星3つとする。