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伝統在る超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」は明日、其の歴史に一旦幕を下ろす。ホテルを訪れた宿泊客其れ其れの運命の行方は?
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下村敦史氏の小説「ヴィクトリアン・ホテル」は、百年の歴史を持つ超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」が一旦幕を下ろす最終日、宿泊した人々の姿を描いている。悩める人気女優、自暴自棄な掏摸、新人賞受賞作家、軟派な宣伝マン、人生の最期をホテルで過ごす老夫婦・・・交わる事が無かったで在ろう人々の群像劇だ。
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「デビューした当時、僕が大先輩から言われたことがあるんです。“善意でとらえるか悪意でとらえるかで人の印象は変わる”って。“人間の見方は、本人が気づいていないだけで、自分の偏見をさらけ出しているのと同じだ”って。最終的にどんな選択をするにしろ、一度、向き合ってみるのも大事かもしれませんよ。」。
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「善意からの言動を、“意図的に”『悪意からの言動だ!』と主張し、叩く事に快感を得ている様な人達。」が、悲しいけれど世の中には存在する。そういう糞の様な連中によって、懊悩させられる人々も。「ヴィクトリアン・ホテル」に登場する人々の多くは、前者のタイプ。「後者のタイプの人間に不快感を持ち、逆に前者のタイプの人間にシンパシーを覚える読者にとっては、納得の行く結末だろう。
“叙述トリック”が用いられた作品で、まんまと騙された。そういう意外性を楽しませてくれるが、ストーリー自体は、そう捻った物では無い。個人的には、もっと捻りが欲しい所。
総合評価は、星3つとする。