本題に入る前に一言。
*********************************
たった1度だけ、死者との再会を叶えてくれる人が居るらしい。半信半疑で依頼をしてくる人達の前に現れたのは、極普通の男子高校生・渋谷歩美(松坂桃李氏)だった。彼は、既に死んでしまった人との再会を仲介する使者「ツナグ」を、祖母のアイ子(樹木希林さん)から引き継ぐ途中の見習いで在る。
横柄な態度で、癌で亡くなった母・畠田ツル(八千草薫さん)に会う事を希望する中年男性・靖彦(遠藤憲一氏)。喧嘩をした儘、自転車事故で死んでしまった親友・御園奈津(大野いとさん)に、聞きたい事が在る女子高生・嵐美砂(橋本愛さん)。プロポーズ直後、突然失踪した恋人・日向キラリ(桐谷美玲さん)の安否を確かめたいサラリーマン・土谷功一(佐藤隆太氏)。
歩美の下には次々と依頼が舞い込んで来るが、歩美は其の過程で様々な疑問を抱く。死者との再会を望む事は、生者の傲慢なのではないか?果たして会いたかった死者に会う事で、生きている人達は救われるのか?
軈て其の疑問は、自身の両親の不可解な死の真相へも向けられて行く事に。
*********************************
作家・辻村深月さんが著し、第32回(2011年)吉川英治文学新人賞を受賞した小説「ツナグ」。此れを原作にした映画「ツナグ」の評判が良い様なので、映画館に足を運んでみた。
観終わって最初に感じたのは、「樹木希林さんや遠藤憲一氏は、相変わらず上手い役者だなあ。」という事。「心の動き大袈裟な表情や話し方でのみ表そうとする役者は一杯居るけれど、然りげ無い表情の変化や話し方で表せる役者は、そうは多くない。」と感じているだけに、彼等の上手さは際立っている。
そして着物を召した八千草薫さんの所作、特に紅茶を入れる際の手の運びの美しさには、ついつい見惚れてしまった。「ああいう美しい所作が自然に出来てしまう俳優って、どんどん少なくなって行くんだろうなあ。」と思うと、八千草さんには少しでも長く役者人生を続けて欲しい。
ネタバレになってしまうが、女子高生の嵐美砂は自転車事故で亡くなってしまった“親友”の御園奈津に対し、或る秘め事が在った。「天に召された奈津が、其の秘め事を知っていたのかどうか?」に強い不安と恐れを抱いて彼女だったが、奈津との“再会”で「秘め事に気付いていない。」と感じ、一旦はホッとする。しかし・・・。
奈津との再会を終えた後に美砂は、奈津が歩美に託した或る“伝言”を知る。其の事で、美砂は一生“重荷”を背負って生きて行かなければいけなくなる。歩美にとっては、意味が良く判らない伝言。そして奈津と会っている時に、其の“事実”を知らされたならば、美砂は苦しみから解放されたのだろうが、再会を終えた後では“更なる呵責”に苦しまされる結果に。奈津が美砂に与えた“罰”とも言え、複雑な気持ちになった。
キラリと功一との話では、「7年前にキラリは、フェリー事故で亡くなっていた。」というストーリー展開だったが、「最愛の人が旅に出て、(恐らくは)其の直後にフェリー事故で亡くなっていたという事ならば、何で其の事実が判らなかったのだろう?」という疑問が。フェリー事故で死者が出たならば、仮に身元不明で在っても新聞やテレビのニュースで取り上げるだろうし、最愛の人が行方不明になっているならば、そういった報道を功一は、小忠実にチェックしていそうな物だが。(「フェリーから誰にも気付かれない内に、キラリは海に落ちて亡くなってしまった。」というケースなら、話は別だろうけれど。)
基本的に「泣ける作品」は好きで、此の映画も泣ける事を期待していた部分は在る。ツルと靖彦の会話の場面では少しだけウルウル来たけれど、泣く迄には到らなかった。そういう意味では物足りなさが在るけれど、全体を通しては「見入ってしまう作品」だったと思う。総合評価は、星3.5個。
私も女子高生の再会の話は複雑な気持ちになりました。
1回観ただけでは分からなかったので、原作を読みました。
女の子の友情って。。。って感じもして 切なくもあり怖くもありました(笑)
樹木婆ちゃんと桃李孫が、本当に血のつながりがあるように見えた部分が一番良かったです。
若かりし頃、可愛がって貰っていた上司と飲んでいた際、「女性の嫉妬は凄いって言うだろ?でも、俺から言わせれば、男の嫉妬の方が凄いと思う。同世代の出世争いなんかを見ていると、女性よりも男の方が遥かに執念深い感じがするし。」という事を言われました。若造だったので「そんなもんですか。」と今一つピンと来なかったのですが、年を重ねる毎に、其の時の上司の話が判る様になりました。
勿論、人によって異なるとは思うけれど、「嫉妬」という点で言えば、男女変わらない気がするし、「男の友情」も「女性の友情」と結構変わらない様にも思います。裏切る奴は、平気で裏切るし。
奇木さんと桃李君、何か良い感じでしたね。
今後とも、何卒宜しく御願い致します。