ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「六法推理」

2022年08月03日 | 書籍関連

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学園祭賑わう霞山大学片隅法学部4年・古城行成(こじょう ゆきなり)が運営する「無料法律相談所」(通称「無法律」)に、経済学部3年の戸賀夏倫(とが かりん)が訪れる。彼女が住むアパートでは、過去に女子大生が妊娠中に自殺。最近は、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえ、真っ赤な手形が窓に付く等、奇妙な現象が起きていると言う。戸賀は“悪意正体”を探って欲しいと古城に依頼するが・・・。

リヴェンジ・ポルノ放火事件、毒親問題、カンニング騒動等、法曹一家に育った“法律マシーン”の古城と、“自称助手”の戸賀との凸凹コンビが、5つの難事件に挑む
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第62回(2020年)メフィスト賞小説法廷遊戯」で受賞した五十嵐律人氏は、現役の弁護士でも在る。そんな彼の第4作目として上梓されたのが、今回読了した「六法推理」。

主人公の1人・古城行成の父は裁判官、母は弁護士、そして兄は検察官。3人が法曹関係者というエリート一家に身を置いているが、彼自身は特に資格を取る事も無く、未だ具体的な将来像が描けないでいる。(昔、似た様な設定のTVドラマが在ったっけ。)或る理由から彼1人だけになってしまった自主ゼミの「無料法律相談所」にて、相談に訪れる人間も皆無に等しい状況で、無聊な日々を送っていた。そんな彼のに或る日、奇妙な出来事の相談をしに、1人の後輩遣って来た。戸賀夏倫という名前の、空気が読めないの在る彼女の出現により、行成の環境は大きく変わっ行く。そんなストーリーだ。

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親族相盗例と短く答えた。「ソウトウレイ?」。親族間の犯罪には、特例が定められているものがある。窃盗はその代表例で、親が子供の財産を持ち去っても処罰することはできない学者実務家からの批判も多い論点だ。厄介な話になってきた。「険悪な関係性でも?」。「例外は定められていない。」。「別居していても
?」。兄弟とかは同居している場合に限られるけど、親子の場合は関係ない。。「どうして、特別扱いなんですか?」。法は家庭に入らずっていう法諺で説明されることが多い。つまり、家族内で起きた一定のトラブルは、警察介入するよりも家族の話し合いで解決すべきって考え方明治時代から受け継がれてきた規定であり、当時は家長強大権利有していたため、財産も父親や祖父が管理するという考え方が根強かった。「無責任な丸投げじゃないですか。」。僕も、現代の価値観とは合致しない規定だと思っている。でも、削除されない限りは警察も従わなくちゃいけない。罪を犯した家族をかくまう犯人蔵匿罪なんかは、“免除[できる]”って特例だから、処罰するか選択の余地があるんだ。だけど、“免除[する]”って断言している親族相盗例の場合は、どれだけ酷い事案でも、窃盗に留まる限り見逃すしかない
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大学時代に法学専攻していた事も在り、法律に関する記述には、どうしても関心が向いてしまう。法律に関する知識が非常に深い行成は、「与えられた情報を整理し、法律を駆使して、論理的に可能性を絞り込んで行く能力に優れている。」ものの、法律知識に縛られて都合が悪い事実を見落としたり、必要以上気負っ思考を停止したりしてしまうが在り、最後の結論が誤ってしまう事が多い。そんな彼を“助手”としてサポートし、“真実”を導き出すのが夏倫の役割。

5つの短編小説と4つの“幕間”で構成されているが、個人的には親子不知」という作品が非常に面白かった上記した「親族相盗例」という概念が扱われているのだが、此の概念が大きなポイントになっている。現役の弁護士ならではの着眼点だろう。

総合評価は星4つ。続編を期待したい。


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