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19歳の山下スミト(やました すみと)は演劇塾で学ぶ為、船に乗って北を目指す。辿り着いた其の先は【谷】と呼ばれ、俳優や脚本家を目指す若者達が、自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な肉体労働、【先生】との軋轢、そして地元の女性と同期との間で揺れ動く思い。
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小説「しんせかい」で第156回(2016年下半期)芥川賞を受賞した山下澄人氏は、脚本家・倉本聰氏が脚本家&俳優養成を目的に開設した「富良野塾」の第2期生。
「授業料は無料だけれど、地元農家から依頼される農作業で生活費を稼ぎ乍ら、2年間共同生活を送る。」というのが、富良野塾スタイルだった様だが、そんな日々を題材にして描いたのが「しんせかい」と思われる。【谷】は富良野塾で、【先生】は倉本氏を指すのだろう。小説なのでフィクションを交えてはいるのだろうけれど、山下氏の経歴を見る限りでは、“自身の青春記”という感じがする。
プロの劇作家として活躍されている方の作品に対し、自分の様など素人が「ああだこうだ。」書くのは僭越だけれど、「こんな内容で、芥川賞が受賞出来ちゃったの!?」と思ってしまう。「何を描きたいのか全く判らず、減り張りの無い内容。」というのも在るが、一番受け容れられなかったのは文章力。
意図しているのかもしれないけれど、“平仮名の多用”や“読点の少なさ”は読み進めるのが辛かったし、「とたんにうんこのにおいのようなにおいがした、というかうんこのにおいがした、というかあの中はうんこだ。」等、自分が苦手とする明石家さんま氏の“くどい1人ボケ&ツッコミ”を思わせる記述の多用には、唯々閉口させられた。
「色んな意味で宗教団体っぽい生活だなあ。」と感じさせられる【谷】での生活は興味深かったが、後は残る物が全く無い。申し訳無いけれど、自分には評価出来る作品では無かった。
総合評価は、星1.5個とする。