政権交代は果たしたものの、国民を失望させる迷走振りを見せ続けている民主党。ジョージ・W・ブッシュ前大統領が残した巨大な“負の遺産”に振り回されて来た面が在るバラク・オバマ大統領と同様、長期政権を敷いていた自民党の“負の遺産”の大きさに、民主党が振り回されていた面も在ったとは思うが、それにしても民主党の迷走は御粗末だ。
民主党政権の最たる失敗は、「参議院では過半数(122議席)に近い109議席を有し、衆議院では圧倒的多数(320議席)に近い308議席を有していた2009年8月31日から2010年7月11日迄の間に、『議員定数及び公務員の大幅削減』という“身内切り政策”が断行出来なかった。」事だと思っている。「国民に重荷を背負わせる以上、先ずは“身内”で在る政治家や公務員に重荷を背負わせるべきだ。」と考える国民は少なくないだろうし、そういう世論を背景にして、“数の論理”で断行しようと思えば、身内切り政策は成し得た筈だ。
「身内切り政策を推進したくとも、『小沢問題』やら『鳩山問題』許りを野党が取り上げるので叶わなかった。」、「自民党等、議員定数や公務員の大幅削減を声高に叫ぶ政党は他にも幾つか在るけれど、実際には其れ等の推進を望んでいない所許りで、審議が進めようも無かった。」等々の“言い訳”を民主党の議員達は口にするのかもしれないが、“本当に遣る気が在るのならば”、世論を喚起すれば確実に推進出来ただろう。要は、民主党“も”身内切り政策に後ろ向きだったという事。もし身内切り政策が断行出来ていたならば、国民の民主党に対する支持は此処迄落ちなかったに違いない。
昨日、野田佳彦首相が内閣改造に踏み切った。「『社会保障と税の一体改革』を強く意識した陣容」とも言われているが、野田首相は「国民の理解を得る上で、議員定数及び公務員定数の削減等が不可欠。」という思いを側近に語っているとか。特別会計や独立行政法人の見直しにも強い意欲を見せているとかで、もし断行出来れば高く評価出来る。
新内閣の顔触れを見渡すと安住淳財務大臣や田中直紀防衛大臣(好き嫌いだけでワアワア騒ぐ、妻の田中眞紀子さんを黙らせる為に、“人質として”内閣に取り込んだ気がしてならないが。)等、不安を感じる人物も居ないでは無いが、(基本的には「死刑制度反対」の立場と言われているけれど)法務大臣に就任した小川敏夫氏は死刑執行に前向きな姿勢を見せたし、国家公安・消費者・拉致問題担当大臣に就任した松原仁氏は昔から拉致問題に熱心に取り組んでいる人物で在る等、前内閣よりは仕事をしてくれそうな気がしないでも無い。
「仏の顔も三度」と言う。民主党政権になって以降、野田首相は3人目の首相で在り、今回の内閣がきちんと仕事を成し得なかったら、民主党政権下での次期首相には多くが期待しない事だろう。身内切り政策の断行は、最低限の義務だ。
民主党が駄目でも、「過去の反省を全くしないで、粗捜しに汲々としている自民党。」や「宗教法人への“適正な課税”すらも反対するで在ろう公明党。」が政権与党の座に返り咲くのは強い抵抗を覚える。「既存政党との違い」をアピールし、国民に期待を持たせたみんなの党も、政権批判をしている許りで、尚且つ「政治資金の私的流用を思わせる行為を働く。」等、既存政党の悪い部分を引き摺っている。近い将来、大阪維新の会が国政に打って出るだろうけれど、代表の橋下徹・大阪市長の手法には疑問を感じる点が少なくないし、何よりも石原慎太郎都知事やら東国原英夫前知事、中田宏前市長等、彼の“取り巻き”には余りに胡散臭い人間が多くて、其の点でも信が置けない。本当に困った政治状態で在る。
民主党の最大の失策は、身内切りではないと思います。この身内切り政策というものは、民主党得意の大衆迎合政策と大きく変わらないと思います。
最大の失策は、本質の議論をしないこと。
本当に必要な議員の数とは?議員報酬とは?等々。表に出てきた政策で納得するまで考えた物があるのかってことです。もっと考え、もっと議論しろということですよ。
既得権益を死守せんが為、問題の本質を議論しようとしない(又は「掏り替えを図る」)。」というのは自民党政権下でも見られた事では在りますが、民主党政権下でそういう遣り方がより目立つ様になった面は在るかもしれません。思うに「外交政策」を始めとして、諸々の政策に確固たる「背骨」が無いというのが、民主党の大きな弱みで在り、其れが故に「議論を避ける体質」というのが醸成されたと言えなくも無い。(小沢派と反小沢派の対立を避ける為という面も在りましょう。)
以前に石破茂氏が「民主党と話を進め様にも、何処を窓口にして話を進めて良いのか判らない。窓口と思って話を進めると、別の窓口が幾つも在ったりする。此れでは、真摯に話し合いなんか出来ない。」といった趣旨の発言をされていましたが、此れも“真の意味で”侃々諤々と民主党内部で意見を闘わせ抜いていないからとも言えましょうね。
民主党が駄目さ加減を曝け出している一方、自民党も「『子ども手当』という呼称を廃止し、自民党政権下での『児童手当』に戻さなければ、話し合いに応じない。」的な不毛な難癖を付けている現実。(他にも修正ポイントを指摘してはいますが。)互いに“揚げ足取り”に汲々としていて、国民が置き去りになっているというのは、本当に情けない限りです。
議論しないから、意味のわからない力関係で話が決定することを許すのですよ。
民主党議員は、もっとそのことを怒らないと。力不足と反省しないと。対抗するため勉強しないと。
そんな姿が見えるようになれば、もっと支持されますよ。
何処の党だろうが無関係に、「議論を避ける体質」や「議論をしている様に見せ掛けるだけの体質」というのは駄目。民主党も駄目だけれど、他の党にも魅力を感じ得ない現実は、本当に困った物です。
例え高邁な政治思想や未来戦略を持っていたとしても、選挙に通らなければ何もならない。そういった事から、特定の組織にべったりと依存してしまう構図。結局は「選挙民個々が、『私』よりも『公』を最優先させて投票する。」という当たり前の事が出来ていないのが問題なのでしょうけれど。