変ったタイトルなので、「何だ??」と思い、手に取ってしまった。「宮辻薬東宮」という本が其れで、「みやつじやくとうぐう」と読ませる。「宮」は宮部みゆきさん、「辻」は辻村深月さん、「薬」は薬丸岳氏、「東」は東山彰良氏、そして最後の「宮」は宮内悠介氏を意味する。
当代人気の作家5人を集め、其れ其れに“ホラー”をテーマにした短編小説をリレー形式で書いて貰ったアンソロジー。本好きにとっては堪らない、実に豪華な本だ。
宮部さんは「人・で・なし」、辻村さんは「ママ・はは」、薬丸氏は「わたし・わたし」、東山氏は「スマホが・ほ・し・い」、そして宮内氏は「夢・を・殺す」と、全てのタイトルには「・」による区切りが用いられている。上でリレー形式と書いたけれど、1つ1つの作品には全く関連性が無い。“ホラー”という共通点が在るだけ。
ミステリーの書き手という印象が強い面々なので、そういうテーストを期待していたが、完全に裏切られた。純粋か否かは読み手によって判断が分かれる所だろうけれど、ホラーに分類される作品群で、少なくともミステリーの範疇では無い。そういう意味で、ミステリー好きの自分はがっかりさせられた。
ミステリーどうこうは別にして、読み物として評価するならば、辻村さんの「ママ・はは」と東山氏の「スマホが。ほ・し・い」は面白かった。宮部さんの「人・で・なし」はヴェテランならではの安定感は在るし、薬丸氏の「わたし・わたし」も決して悪い内容では無いけれど、飛び抜けて面白い内容とは思えず、宮内氏の「夢・を・殺す」に到っては、正直肌合いが合わなかった。
同じリレー形式で在っても、1つ1つの作品が独立した形では無く、“連作”で在ったなら、又違った感じが在ったろう。個人的には、そういうのを読んでみたかった。
総合評価は、星3つとする。