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「英盗聴 被害者家族も対象 大衆紙廃刊へ」(7月8日、東京新聞)
大衆日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの記者等が芸能人や政治家の携帯電話の留守番電話サービスを盗聴していた問題で、犯罪被害者の家族も盗聴していた事が判り衝撃が広がっている。キャメロン首相は警察の捜査終了後に政府も調査する事を表明。同紙を傘下に置くメディア王ルパート・マードック氏の息子は7日、次の日曜発行分を最後に同紙を廃刊する方針を発表した。
英メディアによると、2002年に発生した誘拐殺人事件で、同紙の雇った探偵が行方不明になった少女の携帯電話の留守番電話サービスを盗聴。家族が吹き込んだ伝言を同紙は特種として報道していた。
更に、一定量を超えると新たな伝言が残せなくなる為、勝手に古い物を消去。サービスを利用した形跡が在った事から家族は少女が未だ生存していると信じ込み、同紙のインタビューに「未だ希望を持っている。」と答え、其れも特種として報じていた。
同紙による過去の盗聴の手口では、探偵が対象者の電話番号を入手。メッセージを聞く為、暗証番号の初期設定されている事が多い「0000」や誕生日等身近な数字を押して暗証番号を割り出し盗聴していた。
首相は、著名人盗聴事件当時に編集長だったクールソン氏を自身のスポークスマンとして起用していた。更に、今回の誘拐殺人事件当時の編集長を今も定期的に自宅に招いており、野党は独自調査への取り組み姿勢に疑問を投げ掛ける。
経営幹部は社員向けの声明で廃刊に付いて「間違った行動が評判を台無しにした。盗聴疑惑が本当なら余りに非人間的で、此の会社は存在する余地は無い。」とした。
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此のニュース、我が国では余り大きく取り上げられていない気がするけれど、非常に大きな問題だと思う。「マスメディアが取材対象に盗聴を仕掛ける。」というのも酷いが、「愛する娘を誘拐され、其の安否を日夜気に掛けているで在ろう家族を弄んだ上、『特種』という形で自分達の手柄にしていた。」というのは全く許し難い。「報道に従事する人間」という以前に、「1人の人間」として遣ってはいけない事だ。
以前にも書いた事だが、強大な権力を有する人間に対して、一般市民は常に「懐疑的な見方」を忘れてはいけないと思っている。「何から何迄疑って掛かれ。」とは言わないけれど、「強大な権力を有する人間の言動には、別の意味合いが果たして存在しないのか?」というチェックは絶対に必要。我々の生殺与奪権を握っている政治家もそんな対象だが、より強大な権力を有する「政府」に対しては、よりシヴィアな目を向け続けていなければいけない。
そういった意味で、管政権に厳しい目が向けられるのは当然なのだけれど、我々一般人に情報を伝えるマスメディアが、正確な報道を心掛けているかどうかも同時に注意を払う必要が在る。「世論誘導を目的とした『情報加工』をマスメディアが行う。」なんて事は充分在り得る訳だし。
「マスメディアによる事実を歪曲した報道」というのは、過去に幾つも在った。歪曲報道の事実を認めた上で、きちんと謝罪をしたケースも無くは無いけれど、其の多くは「適当な誤魔化し」をしたり、黙りを決め込んで騒ぎが収束するのを待ったりだったと思う。明らかな過ちすらも認めないのは、マスメディアに従事する人達の間に「俺達は情報を伝えて遣っているんだ。」という驕りが少なからず在るからではないか?そんな驕りが「俺達は何をしても許される。」という勘違いを生み出し、其の結果として今回の様な事件を引き起こしてしまった様に感じる。
マスメディアが妙な世論誘導を図り、国をおかしな方向へと向かわせたというケースは、過去に幾らでも在るだろう。多大な影響力を有しているという点で、我々はマスメディアに対してもシヴィアな目を向けなければいけない。そうでないと日本でも、今回の様な事件は起こり得る。