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「<犯罪白書>刑務所入所の高齢者、20年で4倍超 再犯深刻」(11月17日、毎日新聞)
法務省は17日、2017年版犯罪白書を公表した。昨年1年間に刑務所に入所した受刑者は2万467人(前年比5%減)で、此れ迄で最も少なかった1992年を下回り、戦後最少となった。一方、1年間に入所する高齢者(65歳以上)の人数や高齢者率は、此の20年間で大幅に増加し、最多を更新。昨年入所の高齢者は2,498人で、1997年から約4.2倍になった。約7割が入所2度目以上で、高齢者の再犯状況の深刻さも、改めて浮き彫りになっている。
昨年の刑法犯認知件数は99万6,120件で14年連続で減少し、戦後初めて100万件を下回った。検挙者数は2013年から戦後最少を更新し続け、昨年は22万6,376人(前年比5.4%減)だった。だが、高齢者に付いては、昨年の検挙者数が4万6,977人(同1.4%減)と、他の年齢層と比べて高止まりの状況だ。罪種別では、窃盗が約7割を占めるが、近年は傷害や暴行が著しく増えており、強盗も増加傾向に在る。女性高齢者では、約9割が窃盗だった。
政府は刑務所出所から2年以内に再入所する人の割合(2年以内再入率)を、2021年迄に16%以下にする数値目標を設定。2015年の出所者の2年以内再入率は18%で、前年の出所者から0.6ポイント低下した。年齢層別で見ると、29歳以下は11.1%、30~64歳は18.1%、65歳以上は23.2%だった。高齢者は例年、他の年齢層よりも高くなっている。
白書は、昨年12月に刑務所出所者等の再犯防止を国と地方自治体の責務と明記した「再犯防止推進法」が成立したのを受けて、「更生を支援する地域のネットワーク」と題した特集を掲載。犯罪や非行をした人の立ち直りに対する国民の意識を調査し、「立ち直りに協力したい。」と回答した人は約6割だったが、複数回答で「直接的な支援をしたい。」と答えた人は、其の内約2割に留まっている。
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何年か前から、「高齢者の刑務所入所数が増えている。」という話は聞いていたが、1997年から比べると、20年で約4.2倍になっているというのだから、急増という感じだ。
総務省統計局のデータによると、我が国の高齢者(65歳以上)数は1995年が約1,828万人に対し、2015年は約3,395万人となっている。20年で「約1.86倍」という事になり、高齢者の刑務所入所数の増加率「約4.2倍」よりも遥かに低い。詰まり、“高齢者の増加”が、必ずしも“高齢者の刑務所入所数急増”とリンクしている訳では無い。
高齢者の刑務所入所者数がこんなにも急増している背景には、「持たざる者が増加している。」事も大きく影響しているのだろう。若ければ未だ働き口は在ろうが、高齢者となると難しいだろうし、そうなると窃盗により生活を立て様としたり、もっと言えば「犯罪を犯して刑務所入りし、食べ物と生活する場所を確保する。」という考えも出て来るのは、想像に難く無い。
高齢者の再犯を防ぐには、彼等が働ける場所を作り出す事に加え、彼等への偏見を少しでも無くす環境作りというのが大事。“弱者虐めが蔓延るネットの対策”も含め、腰を据えて行わなければならない事は少なく無い。
で、私なりの見解を述べますと、“1997年から約4.2倍”という数字は、増加したと言うよりは、“昔の高齢者は犯罪がうんと少なくて、時代が進むにつれ、他の年代の数字に近づいた”という事なのだと思います。
昔(昭和中期位まで)は、老人になると、家督を息子に譲って隠居し、盆栽いじりなど悠々自適の老後生活を送る…というのが一般的なパターン、というか、それが当然だった時代がありました。
住む家も、ほとんどが一軒の家(老人が所有)に長男夫婦が同居し、長男の嫁が義父、義母の世話をするのが当たり前、嫁さんもそれを覚悟の上で結婚する、というのが一般常識でした。
私の実家もまさにそのパターン、私の母は家事を切り盛りしながら舅、姑の世話に明け暮れておりました。たまに辛いと愚痴をこぼしながらも、私の祖父、祖母が亡くなるまで世話を続けていました。多分大正、昭和初期生まれの女性は皆、そうするのが当たり前、という教えを叩き込まれ、世間もそれが当然とする空気があったように思います。
そんなわけで、昔の老人は生活も、身の回りもまったく不自由しませんから、犯罪に走る事なんて、極端な話、限りなくゼロに近いと言っていいでしょう。
ところが高度成長期以降、核家族化が進み、親子2世代同居というパターンは崩れ、次第に子供が親の身の回りの世話をする事も減り、家計も独立、という事で親の方も老後生活は自分の蓄えと年金だけでまかなう、というケースも増えて来たように思います。
それでも1990年代末頃までは、結構蓄えがある老人が多く、生活に困る、という事はあまりなかったでしょう。ところが近年の老人はあまり貯金をしてなかったり、物価が上がってる割に年金受取額はそれほど増えず、生活が苦しくなって貯金を取り崩してやりくりし、それも底をついて…という事で、生活苦から犯罪に走るケースが増加して来たのだと思います。また夫婦のどちらかが亡くなると、独居老人、という事になり、寂しさから心が荒んだり、あるいは高齢化による軽度の認知症から、暴力をふるったりして逮捕される、というケースもあるのだと思います。
結局の所、老人が住みにくい時代になった、という事なのでしょうね。悲しい事です。
「老人が働ける場所を作る」のも大事かも知れませんが、「親と子が、日頃のコミュニケーションを大切にする」、あるいは「社会全体が、老人の心のケアを図る」事を推進して行かないと、老人犯罪はこれからも増え続けるのではないかと危惧します。
ちなみに私の両親については、家は離れていましたが兄弟全員交代で身の回りの世話、生活費、介護施設費を分担したりして10年前と今年、それぞれ安らかに最期を看取る事が出来ました。
先ずは、今年、親御様が鬼籍に入られたとの事、心より御悔み申し上げます。御兄弟が分担され、御両親の晩年をケアされていたとの事、御両親は幸せの内に旅立たれて行かれた事でしょう。
「家庭環境の変化が、高齢者の犯罪率を高めた一要因。」というのは、自分も「在るだろうなあ。」という気がします。「家族の為に必死で働き、晩年は其の家族によってケアされる。」、昔は其れが普通でしたね。今でも「そうしたい。」と思っておられる御家族は少なく無いと思うけれど、経済的な面をメインに、「ケアしたくても、出来ない状況に在る。」という、「自分達の生活を死守するだけで、もう目一杯。」という現実が、悲しいかな存在している。
経済的には大きく発展し、GDPでは世界第3位の国になったというのに、必死で生きて来た人達の多くが“苦しい晩年”を送らなければいけないというのは、何とも遣り切れない。其れなのに、国はバンバンと大金を彼方此方に散撒いている。何かおかしいです。