切っ掛けは、青空百景様のブログ「手当たり次第の読書日記」だった。「『配達あかずきん』 大崎梢」という記事を拝読して「こりゃあ面白そうな小説だ。」と思い、早速読む事に。
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近所に住む老人に頼まれたという謎の探求書リスト「いいよんさんわん」は、一体何を意味しているのか?コミック『あさきゆめみし』を購入した女性は、何故失踪してしまったのか?そして何処に居るのか?配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真は、誰が何の目的でした事なのか?学生達が一生懸命作り上げた店内のディスプレーを滅茶苦茶にしたのは、一体誰の仕業なのか?
駅ビル内の書店「成風堂」を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、様々な謎に取り組んで行く。
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2006年迄書店で勤務されていた経験を生かし、同年に連作短編集を上梓して文壇デビューしたという大崎梢さん。恥ずかし乍ら、青空百景様の記事を拝読する迄、彼女の事も其の作品も全く存じ上げなかった。彼女のデビュー作にして、不思議なタイトルの「配達あかずきん 成風堂書店事件メモ」。
シャーロック・ホームズ・シリーズで言えば杏子がワトスン役、多絵はホームズ役という感じなのだが、彼女達が扱う“事件”は「血腥い殺人事件」とかでは無く、「日常の中でポンと生じた出来事」という違いが在る。でも「不思議な謎」が存在しているという点では、どっちも同じだ。
幼少時に「本屋さんで働きたいなあ。」と夢見た程、本が大好きな自分。だからこそ書店の裏も表もリアルに描いている此の作品は、其れだけで興味をそそられる。書店に足を運んだ際、「自社の本を必死で売り込む出版社の営業員」と「時には耳を傾け、時には忙しいので適当にあしらっている店員」というシーンを目にし、「どっちも大変だなあ。」思う事が何度か在ったので、次の記述なんぞは読んでいてニヤッと笑ってしまった。
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ひとりの営業さんが引き上げていくと、待ちかまえたように次の人がにこやかに歩み寄ってきた。今度は児童書だ。欠本の補充やら新刊案内やらセット物のごり押しやら、営業さんは文字通りがっちり営業していく。コミックと児童書を担当している杏子だが、それらのジャンルだけでなく、フロアには大小さまざまな出版社、いわゆる「版元」が訪れていた。
社員は各自複数のジャンルを掛け持ちしているので、ぼやぼやしていると営業とのやりとりで一日がつぶれてしまう。適当に聞き流すのも、早々に切り上げるのも仕事のうちだ。
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「登場人物の造形に、殆ど過不足が無い。」と青空百景様は指摘されていたが、全く同感。キャラ立ちさせようとして無理無理&こってりと人物描写に文章を裂く作家が結構居たりするけれど、此の作品には其れが無い。然りげ無い描写で各々の「人となり」をサラリと表しているのが心地良い。又、「そうそう、こんな客居るよなあ。」と感じさせるのは、書店という場に身を置いていた作者ならではの描写だろう。(“困ったちゃん”な客に関しては“単行本”の巻末に、現役書店員の女性達の対談でも紹介されており、其れも必読!)
「パンダは囁く」という作品の「キーになる謎」、実は自分が昔「ミステリーを書いてみたいなあ。」と恐れ多い事を思った際、「似た様な謎」を考えた事が在る。でも「“時代”が移り変わったら、此の謎は使えないなあ。」と思って頓挫した経緯が。個人的には、読んでいてホンワカした気持ちになれた「六冊目のメッセージ」という短編が一番好き。女性ならば「標野にて 君が袖振る」がグッと来る作品かもしれない。
一気に読み終えてしまう程、魅力的な作品だった。総合評価は星3.5個。
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近所に住む老人に頼まれたという謎の探求書リスト「いいよんさんわん」は、一体何を意味しているのか?コミック『あさきゆめみし』を購入した女性は、何故失踪してしまったのか?そして何処に居るのか?配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真は、誰が何の目的でした事なのか?学生達が一生懸命作り上げた店内のディスプレーを滅茶苦茶にしたのは、一体誰の仕業なのか?
駅ビル内の書店「成風堂」を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、様々な謎に取り組んで行く。
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2006年迄書店で勤務されていた経験を生かし、同年に連作短編集を上梓して文壇デビューしたという大崎梢さん。恥ずかし乍ら、青空百景様の記事を拝読する迄、彼女の事も其の作品も全く存じ上げなかった。彼女のデビュー作にして、不思議なタイトルの「配達あかずきん 成風堂書店事件メモ」。
シャーロック・ホームズ・シリーズで言えば杏子がワトスン役、多絵はホームズ役という感じなのだが、彼女達が扱う“事件”は「血腥い殺人事件」とかでは無く、「日常の中でポンと生じた出来事」という違いが在る。でも「不思議な謎」が存在しているという点では、どっちも同じだ。
幼少時に「本屋さんで働きたいなあ。」と夢見た程、本が大好きな自分。だからこそ書店の裏も表もリアルに描いている此の作品は、其れだけで興味をそそられる。書店に足を運んだ際、「自社の本を必死で売り込む出版社の営業員」と「時には耳を傾け、時には忙しいので適当にあしらっている店員」というシーンを目にし、「どっちも大変だなあ。」思う事が何度か在ったので、次の記述なんぞは読んでいてニヤッと笑ってしまった。
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ひとりの営業さんが引き上げていくと、待ちかまえたように次の人がにこやかに歩み寄ってきた。今度は児童書だ。欠本の補充やら新刊案内やらセット物のごり押しやら、営業さんは文字通りがっちり営業していく。コミックと児童書を担当している杏子だが、それらのジャンルだけでなく、フロアには大小さまざまな出版社、いわゆる「版元」が訪れていた。
社員は各自複数のジャンルを掛け持ちしているので、ぼやぼやしていると営業とのやりとりで一日がつぶれてしまう。適当に聞き流すのも、早々に切り上げるのも仕事のうちだ。
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「登場人物の造形に、殆ど過不足が無い。」と青空百景様は指摘されていたが、全く同感。キャラ立ちさせようとして無理無理&こってりと人物描写に文章を裂く作家が結構居たりするけれど、此の作品には其れが無い。然りげ無い描写で各々の「人となり」をサラリと表しているのが心地良い。又、「そうそう、こんな客居るよなあ。」と感じさせるのは、書店という場に身を置いていた作者ならではの描写だろう。(“困ったちゃん”な客に関しては“単行本”の巻末に、現役書店員の女性達の対談でも紹介されており、其れも必読!)
「パンダは囁く」という作品の「キーになる謎」、実は自分が昔「ミステリーを書いてみたいなあ。」と恐れ多い事を思った際、「似た様な謎」を考えた事が在る。でも「“時代”が移り変わったら、此の謎は使えないなあ。」と思って頓挫した経緯が。個人的には、読んでいてホンワカした気持ちになれた「六冊目のメッセージ」という短編が一番好き。女性ならば「標野にて 君が袖振る」がグッと来る作品かもしれない。
一気に読み終えてしまう程、魅力的な作品だった。総合評価は星3.5個。
続きを買いに行って、2冊目の長編『晩夏に捧ぐ』が見つからず、すっ飛ばして3冊目の短編集『サイン会はいかが?』を買ってきてしまいました。
これも期待に違わず面白かったので、また近々にブログに書きたいと思います♪
どんな仕事でも楽しい面も在れば、辛い面も在る。其れは書店で働くのも同じなのでしょうが、登場する書店のスタッフ達を“通じて”、元スタッフの大崎さんがどれだけ此の仕事が好きだったかが伝わって来ます。
漫画で字が多いと言えば、自分の場合は「名探偵コナン」が当該します。ミステリー好きなのですが、漫画としては結構文字が多く、尚且つ絵が細々とした感じなので、読んでいて疲れる面が・・・。