ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「最終退行」

2013年05月10日 | 書籍関連

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都市銀行の中でも「負け組」と言われる東京第一銀行の副支店長・蓮沼鶏二(はすぬま・けいじ)は、締め付けを図る本部と、不況に苦しむ取引先や現場行員との板挟み遭っていた。

 

一方、嘗て頭取・久遠和彌(くおん・かずや)は、バブル期放漫経営の責任をも取らず、会長として院政敷き尚も私腹を肥やそうとしている。リストラされた行員・塔山諭史(とうやま・さとし)が意趣返しに“罠”を仕掛けるが、蓮沼は其の攻防から大掛かり不正の匂いを嗅ぎ付け遂に反旗を翻す

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「『企業小説』、其れも『中小企業を舞台にした小説』を書かせたら天下一品。」と評価しているのが、直木賞作家の池井戸潤氏。バブル期に旧三菱銀行入行した彼は、直ぐに「『何でも一緒に。』と横並びで、何事も細部マニュアルで決められている、丸で“大人の幼稚園”みたいな銀行体質。」に合わなさを感じ、「何時か辞めよう。」と思っていたそうだ。しかし、其れでも7年間も務めたのは、「『中小企業向けの融資』という仕事其の物が、面白かったから。」と言う。中小企業向けの融資に従事している中で、様々な人々の“息遣い”を生で知ったからこそ、彼が書く「中小企業を舞台にした小説」は“良くも悪くも”生々しさが在って面白いのだろう。

 

「生々しい」と言えば、彼が著す「銀行を舞台にした小説」も同様。昔の職場だから当然なのかもしれないが、実に生々しい。今回読了した彼の小説「最終退行」にも「自分の手柄は、自分の物。他者の手柄も、自分の物。」、「責任が絶対に自分に及ばない様、常に逃げを打ち、“人身御供”も用意している。」等々、社会人の経験が在れば「こういう人居るよなあ。」と思う、卑劣な人間が登場する。「過ぎた形式主義権威主義から、どうでも良い事に難癖を付け稟議書を何度も何度も書き直させる上司。」というのには、以前自分が勤務していた会社にも同様の“種族”が幅を利かせていた事も在り、思わず苦笑してしまった。

 

読んでいて「もう駄目か・・・。」と、何度ハラハラ&ドキドキさせられた事か。「世の中、腐った奴も大勢居るが、腐ってない人間も又、少なく無い。」という事を改めて感じさせてくれるし、最後の最後には爽快感が味わえる等、良質なエンターテイメント小説だ。

 

総合評価は、星3.5個


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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2013-05-11 19:07:22
この作品は「鉄の骨」の次くらいに読んだ記憶があります。 さて、私も私のポジションをねらう者に、手柄を横取りされましたし、あらぬうわさをでっち上げられて排除された経験があります。 男の嫉妬ほど恨めしいものはないとはよく言われておりましたが、まさにその通りだと思いました。 まあ、B級C級サラリーマンの集まりのような、サラリーマンネオを地で行くような会社ですので、別に出世などしなくても人生どうということもありません。 むしろ、名ばかり管理職になるよりも、生涯現場で働いた方が、基本給が高いだけに残業手当が多く、結果生涯賃金はほとんど差がないのです。 池井戸潤さんの作品は必ず、最後に正直者が救われる結末が用意されているので、現実の世界ではそうならなくても、心がすっきりしますね。 「空飛ぶタイヤ」などは実話でしたが、現実にも正義が勝ちましたね。
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>マヌケ様 (giants-55)
2013-05-11 21:33:33
書き込み有難う御座いました。

口数も少なく、人の悪口も言う事の無い、実に我慢強い伯父。そんな伯父が定年を迎えてから暫くして、伯母から「或る時期、(伯父が)非常に落ち込んでいた時期が在った。定年を迎えてから、『彼の時、何か在ったの?』と聞いたら、『実は、自分が担当していた研究の成果を、上司に全部持って行かれた許りか、口封じの為に様々な陰険な嫌がらせをされていた。』という事を初めて聞き、吃驚した。」と聞かされました。

前にも書いた事ですが、社会人になった頃、上司から「『女は執念深い。』と言うだろ?でもな、俺は男の嫉妬程、恐ろしい物は無いと思う。」と言われました。「そんなものかなあ?」と思ったのですが、社会人経験が長くなるにつれ、其の言葉が真実だった事を痛感。

だからこそ池井戸作品には感情移入出来るす、実社会では中々無い事だけれど、勧善懲悪的な展開にスカッとさせられますね。
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