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「米『新自由主義』の結末 ~車産業衰退 米・デトロイト市財政破綻~」(7月24日付け東京新聞【朝刊】)
自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が本社を置く等、「自動車の町」として知られる米ミシガン州デトロイト市が財政破綻に追い込まれた。自動車産業の衰退と共に人口が流出し、税収減に陥った事が背景とされる。政府の介入は最低限に留めるべきだとする「ネオ・リベラリズム(新自由主義)」の1つの結末なのか。
「デトロイトには自己責任で御入り下さい。」、「全米一殺人件数の多い町です。」。同市の球場で昨秋行われたメジャー・リーグの試合で、市警の警察官がこんな文言が書かれた散らしを配った。
最近、現地を訪れた日本人男性は「外国人が訪れる事は先ず無いが、『8マイル・ロード』と呼ばれる道が在り、其処から向こうが危険な地域とされていた。」と話す。
目を覆う許りの同市の凋落振りは、ハリウッド映画「ロボコップ」を地で行く様な事態に陥っている。1987年に製作された同作品は、近未来(2010年)の同市が舞台。民営化された警察は、犯罪都市と化した町の治安をロボットに委ねるという内容だ。
実際の状況はと言うと、市警に通報してから警察官が到着する迄の時間は、全米平均の約5倍の58分。稼働している救急車の数は保有台数の3分の1しか無く、街灯の4割は故障。人口約70万人の同市で、約7万8千軒の廃屋が無残な姿を晒している。
同市が出した破産法申請を承認した州知事の書簡では、殺人事件の発生率は過去40年間で最悪の水準に達し、全米で最も治安の悪い都市の1つになっていると指摘している。
同市の負債総額は180億ドル(1兆8千億円)以上。税収が減る一方、市職員の年金等、社会福祉費の増加や人件費を含む経費の高止まりで支出の削減が進まず、慢性的な財政難に陥っていたとされている。
在デトロイト日本総領事館の元専門調査員で、労働政策研究・研修機構の山崎憲副主任調査員は「州が市に対する助成金を出さなくなった事が直接の原因とされているが、此れ迄状況を放置して来た州と市の責任は大きい。」と指摘。更に「ミシガン州は共和党知事。助成金を出さず、民主党の大票田で在る市職員の労働組合の力を弱め様という狙いも在ったのだろう。」と解説する。
米国では、自治体にも市場原理が容赦無く適用され、財政難に陥って破綻するケースは珍しく無い。米国の自治体財政に詳しい佐藤学・沖縄国際大教授は「米国の自治体は、自己責任で運営されている。基本的なサーヴィスを維持する為に財政のばらつきを調整する日本の地方交付税の様な仕組みは無い。」と語る。
日本では2006年に表面化した北海道夕張市の破綻を教訓に、自治体財政健全法が2009年に全面施行された。財政面で行き詰る恐れの在る地方自治体は減りつつ在る。唯、佐藤教授は「日本には自治体の破綻を回避する制度は在るが、何時迄維持出来るかは判らない。」と懸念する。
「新自由主義的な小泉政権の登場以降、地方切り捨ての風潮が強まっている。『自治体も潰れる所は潰れても良い。』となれば、国として成り立たなくなる。」。
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アメリカに駐在している知人から予々、「デトロイト市の財政悪化は、冗談抜きでやばいレヴェル迄来ている。」という話は聞いていたけれど、今回、「同市の財政破綻」のニュースを見聞し、改めて「其処迄酷かったのか・・・。」という思いが。
1950年の同市の人口は約180万人だったそうで、現在は其の半分以下になっている訳だ。「景気の悪化→人口流出→財政の悪化→治安の悪化→更なる人口流出」という負の連鎖。此方で「デトロイト市内の様子」を写真で見る事が出来るが、「スラム街」といった雰囲気。「割れ窓理論」から言っても、此の儘では治安悪化の一方だろう。
7年前、「夕張市の現状は決して対岸の火事では無い」という記事を書いた。「日本には自治体の破綻を回避する制度は在るが、何時迄維持出来るかは判らない。」と佐藤教授が懸念している様に、我が国でもデトロイト市の様なケースが出て来ないという保証は無いだろう。
「人」同様に「地方自治団体」も、「明々白々に“努力”を怠っている相手迄、国が手を差し伸べる。」というのは違うと思っている。「何でも彼んでも『国』に依存というスタンス。」は誤りだが、だからと言って「地方切り捨て」で在ってもならない。「何処で境界線を引くか?」は難しいが、深く考えて行かなければならない問題なのは間違い無い。
「民主党へと政権交代した選挙時」、そして「自民党に再び政権交代した選挙時」、メディアは「政権交代間違い無し。」という報道を一貫して行っていました。「政権交代を望む国民の思い」というのが強かったのは確かですが、余りにも「確実」という報道がされた事で、其れに流されて投票したり、逆に「其れなら、投票しても意味が無いな。」と棄権したりした人が少なく無く、結果として「事前報道と全く同じ結果」と相成った。
「寂れた地方都市=夢も希望も無い場所」という捉え方の報道が恣意的に行われれば、生じさせる必要の無いマイナス要素を、態々生じさせてしまう事も在る。其の辺は報じる(伝える)側もそうですが、受け取る側も留意しないといけないでしょうね。
私の叔父叔母の時代からその傾向はあったようです。当時は日米自動車戦争時代なので余計にブルーカラーの町に行ったら危ないってのもあったかも。いつも郊外の住宅で広々優雅に暮らす姿や、自転車で田舎に行きました的な写真が送られてきました。ロックマニアになりつつあった自分はデトロイトが荒くれすさんだパンクの本場と知っていたので、「なるほど~」と興味深く眺めていました。
>寂れた
最近、自営の友人と会いましたが、さまざまな補助金がカットされ、町の事業に協力しても足代も出ない。だから潤沢だった時代の年代が協力しなくなったとぼやいていました。昔は全町の町内会長の総代やったらお礼に町内会長連合の海外旅行の補助が出た、とか神輿担ぐと1万円日当が出たとかそういうレベルのボヤキだったので、返答に困りました。町おこしだのなんだのと熱く語るが結局やめてった爺様連中が得てきた利権が欲しかっただけではと言いたかったが、「いかに今、故郷で自営をやることが…」と反撃されそうだったからやめました。何、神輿に1万円出てたの?とか海外旅行ジジイ団体で行ったらろくなことしないだろうね!とも思いました。
「自動車業界に従事する人の殆どが、デトロイト市の中心街に住んでいる。」というイメージが在りましたので、spade様の書き込みは意外でした。確かに他国でも、富裕層は中心街よりも郊外の環境が良い場所に住む傾向は見受けられますし、そう言われてみれば判らなくも無いです。
「他人様が遣りたがらない事を、どういう形で在れ遣ってくれる人。」というのは在り難いと思うし、其れに見合った対価が在っても良いとは思うのですが、其れを露骨に要求するというのは、一寸「美しい国」とは似つかわしく無い気もしますね。