ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「靖国への帰還」 Part2

2008年03月17日 | 書籍関連
あの時代に生き、そして“死んだ”武者の言葉だ。彼の言わんとしている事は理解出来ないでも無い。しかし自国民を戦争に駆り出し、その多くの命を失わせた以上は、国家の重要なポジションに居た人間がその責任を問われ続けるのは致し方無い事と“自分は”思う。どれだけ高邁な理念が其処に在ろうがだ。ましてや戦争で一儲けしようと企図する輩と結託し、自国民の生命を多く失わせた輩は言語道断。又、積極的には「戦争反対!」を叫ばなかった者の中にも、“時代の風潮”によってそれが叫べなかったという者も少なくなかったのではないだろうか。「武者の主張が100%正しい。」となってしまうと、「今の北朝鮮が存在しているのは、この国家を作り上げさせてしまった全国民の責任。だから、独裁者によって民達が理不尽に惨殺されようが、それは全く当然の事だ。」といった論理も正当化されてしまう危険性を感じてしまう。それよりは、“或る人”が口にした次の言葉の方が、“個人的には”しっくり来る。

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(こだわりが在るのは)A級戦犯合資の事です。既に合祀された以上、今更どうする事も出来ませんけれど、私は嫌い。特に東条さんが大嫌いです。

あの方(東条元首相)、戦争を始めた責任者でしょう。でしたら、戦争を終結させるのも、御自分の責任でなさるべきでしたわよ。それを、陛下の御聖断が下る迄、漫然と、何もしないで、それこそ生き長らえていたなんて、無責任ですわ。もしもっと早く、例えばサイパン島玉砕した時ですとか、硫黄島が玉砕した時とかに無条件降伏をしていれば、武者さんは戦死なされなくて・・・いえ、武者さんはともかく、大勢の若い方々や、空襲原爆で亡くなられた方の命は救われていたんですもの。ですからね、東条さんだけは大嫌いなんです。

(靖国神社には)行きますよ。春と秋の例大祭には欠かさず。だって、靖国神社には武者さんが祀られていたんですもの。

[「大嫌いな東条さんが居ても(靖国神社に参拝するの)ですか?」の問い掛けに。]ええ、気持ちの中で、東条さんは除いてって思い乍ら、御祈りしました。
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A級戦犯は大嫌い。でも、愛する者が祀られた靖国神社は嫌いではない。そういった複雑な思いを抱えた人も少なくないのではないだろうか。この作品の中では、単純に理屈だけでは割り切れない「靖国問題の深さ」が、一方向からの意見だけでは無く公平に取り上げられている。ネット上の書評に靖国の是非を問うているのでは無く、様々な思想等を盛り込んだ上で、『もっと重要な何かを、皆忘れてはいまいか?』と現代の日本人に問い掛けている内容。というのが在った。これは正鵠を射た御意見だと思う。

元コピーライターでも在る内田氏は、「読者のニーズをリサーチし、作品を読み終えた時点で『読んで得したなあ。』と思って貰える様な情報を盛り込んだ作品を心掛けている。」という考えを嘗て記されていた。(自分も当ブログでは、それを出来るだけ実践したいと思っている。)そんな彼だからこそ、「人相判断」という記事でもチラッと触れた様に、入念なリサーチに基づいた様々な情報が盛り込まれている。軍事関係には疎い自分なれば、勉強になる点が幾つも在った。

「これは私の代表作になるかもしれない。」と内田氏は述べている。それだけの力作と自負しているのだろう。何とも切ない結末が待っているこの作品は決して悪い出来では無いが、個人的には内田氏が述べている程の出来では無い気がしている。「戦国自衛隊」を始めとして、主人公が過去や未来にタイムスリップする小説やドラマ等はこれ迄にも多く発表されており、ストーリー的には決して目新しい物では無い。又、この作品のタイトルから、凡そどの様な結末が待っているかは想像が容易に付くと思うし。総合評価は星3つとしたい。

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3 コメント

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Unknown (マヌケ)
2008-03-18 20:02:39
とりあえず、まず、読んでみようかと思います。 「八月十五日の開戦」「ミッドウェイの刺客」などをちょっと前に読みまして、日本の部分的な勝利があった戦記にちょいといい気持ちになっていました。 以前読んだ、直木賞候補にもあがった古処誠司さんの「ルール」という作品を読んだ時には南方で飢餓状態にあった日本兵の鬼畜の所業に胸が痛みました。 フィクションではあっても取材に基づいた事実を基にしたエピソードが随所にあり、いずれも戦争の苦難を文字でたどるだけでも、どれだけ苦しい思いをしたことかと当時の兵隊だったごくごく一般の日本人たちを気の毒に思わざるを得ません。 原爆資料館で見た写真や遺品など、悲しみの集約された形がそこにはありました。 小説や映画やさまざまなかたちで戦争が描かれてきましたね。 戦争によって踏みにじられた親子の愛や引き離された恋愛や失われたものの大きさは計り知れません。 当事者ではない私たちはそのような作品を読んだり見たりすることで想像するしかありませんが、作品が大きく影響したり、中には事実であるかのごとく捉えてしまったりすることもありますね。靖国についてもさまざまな意見や、気持ちがあるように。   
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>マヌケ様 (giants-55)
2008-03-18 20:19:19
書き込み有難う御座いました。

第二次大戦をテーマとした書物は多く在りますが、それが小説で在れノンフィクションで在れ、描かれている事が戦争の全てで無いのは言う迄も在りません。中にはフィクションも在りましょうし、又、何等かの意図を以て“虚飾”が為されている物も在りましょう。実際にその時代を生きた人間で在っても、その人が置かれた環境や立場によって捉え方は当然違いましょうから、その時代を生きていなかった自分等としては、一つの方向からだけの情報では無く、様々な方向からの情報に積極的に触れる事で、自らの頭で想像して行くしか出来ない。唯言えるのは、戦争が多くの人間を不幸にするという事でしょうね。
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昭和の戦争の二面性 (o_sole_mio)
2008-03-18 23:17:53
昭和の戦争を語る時、軍部を中心にした当時の体制について、どうしても全肯定VS全否定といった二項対立が起きてしまいます。個人的には、当時軍部を中心とした日本の官僚機構が他国の主権を暴力をもって侵害したということはぬぐいようのない事実だと思います。

さりながら、自らの判断や良心に基づいて戦場や占領下というある種異常な状況の中で理知的かつ人道的に行動した人物も少なくありません。最近そういう人も一方で紹介していきたいと思っています。

靖国に対する評価もそういった昭和の戦争の二面性が影響しているのかもしれない、と思っています。
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