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岡山の名士が亡くなり、遺言に従って瀬戸内の離島に集められた一族の面々。球形展望室を有する風変わりな別荘「御影荘」で遺言状が読み上げられた翌朝、相続人の1人が死体となって発見される。折しも、嵐によって島は外界から孤絶する事態に。幽霊の目撃、鬼面の怪人物の跳梁、そして、20年前の人間消失・・・続発する怪事の果てに、読者の眼前に、驚天動地の真相が現出する。
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「『謎解きはディナーのあとで』シリーズ」等、ユーモア・ミステリーを十八番としている小説家・東川篤哉氏。今回読んだ彼の作品「仕掛島」を初めて書店で目にした時、違和感を覚えた。と言うのも、ユーモア・ミステリーを十八番にしている彼の作品の表紙の多くは、ユーモラスなイラストなのだけれど、「仕掛島」の場合は“陰鬱でシリアスなイラスト”だったから。なので、「テーストを変え、本格派ミステリーに挑戦したのかな?」というのが、読む前の印象だった。
岡山県経済界の巨星にして、西大寺出版社長・西大寺吾郎(さいだいじ ごろう)が亡くなり、“2通目”の遺言状が公開される事になった。吾郎が離島に所有する「御影荘」に一族が集まったのは、相続人捜しの依頼を受けた私立探偵・小早川隆生(こばやかわ たかお)や遺言執行人の代理を務める 弁護士・矢野沙耶香(やの さやか)等の“部外者”6人を含めた、総勢13人。そして、公開された“2通目”の遺言上の内容は意外な物だったが、其の翌日、相続人の1人が死体となって見付かるというストーリー。
彼等が御影荘に集められる前に起こった(と思われる)或る事件が、冒頭で描かれている。表紙のイラストに見合った“不気味な展開”で、「矢張り本格派ミステリーなんだな。」と確信したのだが、本編に入ったら何の事は無い、何時もの“こてこての東川ワールド”が待ち受けていた。人によっては“くどさ”を感じるで在ろう程の“乗り突っ込み”が満載。こてこての東川ワールドが好きな読者なら、ほっとさせられる内容だろう。
小早川隆生が探偵のシャーロック・ホームズ役、そして矢野沙耶香が助手のジョン・H・ワトスン役として謎を解いて行く。彼等の遣り取りにも、乗り突っ込みが溢れている。
綾辻行人氏の「館シリーズ」には、秘密の抜け道やら隠し部屋といった“普通では無い作り”が設けられている上に、見た目も風変わりな形状の館が次々と登場する。今回の御影荘も「館シリーズ」に入れられる程の存在だが、加えて“現実では考えられない様な大掛かりな仕掛け”が登場する。「こんなの現実じゃあ無理だろ。」と絶句してしまう物だが、余りにも大掛かりな仕掛けで在り、爽快さすら感じてしまう。「『馬鹿馬鹿しい。』とも思える様な、此の大掛かりな仕掛けを知られる。」だけでも、此の作品を読む価値が在る。
総合評価は星3.5個。