柳生宗厳の末裔としても知られる俳優・柳生博氏。そんな彼が以前、“柳生家の仕来り”に付いて語っていた。何でも柳生家では、「12歳を迎えた男子には、一人旅をさせる。」という仕来りが在り、博氏自身、又、彼の息子達も、12歳で一人旅をさせられたそうだ。
「武士の末裔なのだから、確りした男になれ!」と、幼い頃より祖母から叱咤されていたという我が父。そういう事も在り、自分も幼い頃より、父から似た様な事を言われて来た。「自立心を養う。」という意味も在ったのだろうが、幼稚園の年長組だったかの時、当時住んでいた名古屋から親戚が住む東京迄、一人旅をさせられた事が在る。とは言っても、名古屋駅のプラットホーム迄は両親が付いて来て、車掌に東京駅迄行く旨を説明した上で、新幹線が発車するのを確認、東京駅では親戚が迎えに来ていたのだから、実質的には“新幹線内だけの一人旅”。でも、幼い自分には、ドキドキ体験だった。
先日の出来事。平日だったのだが、昼時に某飲食店でランチを取った。カウンターで料理が出て来るのを待っていた所、店員のおばちゃんがカウンター脇に居たマネージャーと思しき女性の所に飛んで来て、「どうしたら良いんでしょうねえ。」と困惑顔で話し始めた。聞こえて来た範囲では、「幼児が2人だけで入って来て、『食事をしたい。』と言っている。『御母さんは?』と聞いたら、『御母さんは一緒に来ていない。2人だけで食べて来いと言った。』と答えた。御金は持って来ているみたいなんだけど・・・。」と。
入り口を見遣ると、幼稚園年長組か小学1年位の女児2人が居た。確かに引率の大人は居らず、2人だけで来た様だ。ランチは最低でも千円近くし、子供だけで来る様な店では無い。「マジかよ・・・。」と驚いていたら、マネージャーと思しき女性を含めた数人が、幼児達に話を聞きに行った。
結局、4、5分話を聞いた後、幼児達はテーブル席に通される事に。自分が食事を済ませ、店を出て行く迄の20分程に関しては、少なくとも彼女達のテーブルに大人が来る事は無く、幼児2人だけで注文した料理を食べていた。
“幼稚園児が1人だけで新幹線に乗っている光景”というのも、当時の大人達にとっては“異様な光景”だったかもしれないが、“幼児2人だけが飲食店でランチを取っている光景”というのは、同じ異様な光景で在ったとしても、“質”が違う気がする。少なくとも「自立心を養う。」という目的で、親が命じた事では無いと思うのだけれど・・・。