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裕福だった過去に執着する母と弟。家族から逃れた筈の奈津子だが、突然、夫・太一が不治の病に掛かる。だが其れは、奇跡の様な幸運だった。
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第147回(2012年上半期)芥川賞を受賞した小説「冥土めぐり」(著者:鹿島田真希さん)の梗概だ。
芥川賞受賞作品と言えば個人的には、昔から「肌合いの合う作品」と「肌合いの全く合わない作品」とにハッキリ分かれるが、近年は「何故、こんな作品が受賞したのかなあ?」と訝しんでしまう事が非常に多くなった。2009年上半期から2011年下半期迄の過去3年間、芥川賞受賞作品は全部で6作品在るけれど、「共喰い」に総合評価で「星3つ」を与えた以外、「終の住処」に「乙女の密告」、「きことわ」、「苦役列車」、「道化師の蝶」の5作品は、申し訳無いけれど全て“平均点”以下。
「冥土めぐり」は表題作の「冥土めぐり」、そして「99の接吻」という2つの中編小説から構成されている。何方の小説にも共通するのは、良く言えば「本能に忠実な生き方をしている人達。」、悪く言えば「欲深く、身勝手な人達。」が多く登場するという点。読んでいて、不快さを禁じ得なかった。
其れだけなら「『リアリズム文学』って、こんな物なんだろうな。」と我慢出来るのだろうけれど、「冥土めぐり」で言えば「登場人物達の設定に疑問を感じたり、深みを感じなかったりする点が多い。」等、「小説自体の完成度の低さ」を感じ、読み通すのが正直辛かった。
総合評価は、星2つ。