ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

ふるさとは遠きにありて思ふもの

2008年05月04日 | 時事ネタ関連
「リアル・タイムで見て来た首相の中で、最も社会に悪影響を及ぼしたと思われる人物は?」と問われたならば、自分は安倍晋三前首相の名前を挙げたい。「えっ!小泉純一郎元首相ではないの?」という声も在るだろう。確かに小泉政権下で無闇矢鱈と可決された諸法案が、今の日本の大混迷を招いているとは思う。だから彼自身の評価も非常に低いのだが、安倍前首相の場合には小泉元首相以上の無思慮さで物事を押し通す恐ろしさを感じた。そして「彼が最も社会に悪影響を与えた。」と断じざるを得ないのは、内閣支持率に殆ど意味を持たせなくなってしまったという点に在る。

それ迄は内閣支持率が著しく下がれば、衆議院解散を以って国民に信を問うたり、首相の座を降りるなりという政治決断をして来たもの。ところが安倍前首相の場合には、内閣支持率がどれだけ下がろうとも「熱し易く冷め易い国民性故、逆風も暫く無視を決め込めば収束するさ。」とばかりに“権力の座”に居座り続けてしまった。最後は体調不良という事で政権を放り出した訳だが、「国民の声なぞ無関係!」といった厚顔無恥さを露骨な迄に感じさせたのは彼が最初だった気がする。(森喜朗元首相もかなり酷かったが。

誤解しないで欲しいのだが、自分は「首相の出処進退は全て、内閣支持率の低さとリンクさせるべき。」と言っているのでは無い。国家百年の計を考えた場合、国民の大多数が猛反対していても、時にはそれを押し切って断行しなければならない事も在ろう。だから内閣支持率が絶対的な数値では無く、あくまでも指標に過ぎないのは事実。でも、これはあくまでも首相に明確な思慮が在る場合で、それが無いままに首相の座に低支持率でも居座るのは、単なる国民無視としか思えない。安倍前首相は悪しき前例を残してしまったし、今後も国民を無視して居座り続ける首相が出て来る事だろう。

その安倍前首相が昨年7月の参院選を前に、「地域格差」*1や「住民税アップ」の逆風を避ける為、持ち出したのが「ふるさと納税」という新システム。しかし都市圏と地方自治体でその賛否が真っ二つに割れた事も在り、ずっと店晒し状態に在った。ところが先月30日、ガソリン税等の復活に紛れ、税制改正関連法案の一部としてこのふるさと納税は衆議院で再可決&成立。過疎地や故郷等、自身が望む地域に納税(厳密に言えば寄付)出来るというこのシステム、考え方自体は悪くないと思っていたのだが、5月2日付けの東京新聞(朝刊)に載っていた記事「ひっそり成立『ふるさと納税』」を読む限りでは、仕組みが何とも妙なのだ。*2

居住地以外の地方自治体に5千円を超えて寄付した際、居住地の自治体に支払う住民税が1割を上限に控除出来る仕組み。つまり他の自治体に納税(=寄付)して住民税を上限1割迄控除して貰うには、5千円もの手数料が必要と言っても良い。一般給与所得者の場合、支払いたい自治体に方法を確認して支払い、其処から発行された受領証を持って、地元の税務署に確定申告するスタイルが基本との事だが、「イレギュラーなスタイルで納税(=寄付)を行う以上、その手間処理費として5千円を支払いなさい。」という事なのだろうか?

経済評論家の森永卓郎氏はふるさと納税の実効性に関して、次の様に疑問を呈している。

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嘗て東欧の国で導入したが、各自治体が宣伝合戦を繰り広げ、宣伝費が増収を上回って失敗した。*3

先ず、利用者が居るかどうか。ガソリン税復活で車列が出来る時代。5千円払い、手間を掛けて納税先を変える人がどれだけ居るのか。それに財務省横槍で規模も縮小した。(1987年導入の)特定支出控除の特例は単身赴任者の帰省費用や研修費を控除するとぶち上げたが、煩雑な手続きで失敗した。あの二の舞になるのでは。
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又、政治評論家の森田実氏は「このシステムはガス抜きのごまかしだ。」とした上で、地域格差の元凶は地方を犠牲に中央官僚が生き延びる小泉改革。それに人々は気付き、昨年7月の参院選で自民党にノーを突き付けた。ところが地方への補助金や福祉カットはそのままで、こんな姑息な策で失政を覆い隠そうとする。一刀両断にしている。

上記した様に、自身が望む地域に納税(=寄付)するというシステムそのものは悪くないと思うのだが、訳の判らない“手数料”を取ったり、手続きを煩雑にするというのが理解不能。

*1 「格差」と言えば、読売新聞(5月2日)に「『蟹工船』再脚光・・・格差嘆き若者共感、増刷で売り上げ5倍」という記事が載っていた。プロレタリア文学の代表的存在で、過酷な労働の現場を描いた昭和初期の名作「蟹工船」が、今年に入って“古典”としては異例の2万7,000部を増刷。例年の5倍の勢いで売れているそうだ。購読層は10代後半から40代後半迄の働き盛りの年代が8割近くを占め、「非人間的な労働を強いられる人々の暗澹たる生活を、自身のそれと重ね合わせて共感しているケースが多いのではないか。」と。

*2 プロのスポーツ選手等がわざと住民票を移さない形で、故郷に「恩返し納税」をしているケースも在る。だが、これは転居した際、14日以内の届け出を義務付ける住民基本台帳法に違反する行為との事。

*3 北九州市が高額寄付者に小倉牛のプレゼントを検討する等、自治体によるPR合戦の兆候は見え始めてるとか。

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7 コメント

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知らぬ間に (ハムぞー)
2008-05-04 07:05:32
この法案もどさくさにまぎれて
衆議院を再可決されてましたか・・・

納税手法を読んだのですが、
よく判りません。
おっしゃるように一般庶民が
こんな面倒臭い方法をとってまで
地方に納税するとは思えません。

こんな小手先のことをしたって
なんにもならないでしょうね。
地域格差を解消するのは
政策です、そのための内閣です。
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平仮名片仮名には気をつけましょう (破壊王子)
2008-05-04 08:50:21
役人が大して難しくも無い言葉を平仮名にしたり、意味の判りづらい片仮名表記(時には英語、時には仏語。独語だったりしたこともあったかなって、『カリオストの城』の峰不二子みたいな言い回し)をしてきたら注意しましょう。

インチキ臭いものは大体そういう物だそうです。
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Unknown (薔薇)
2008-05-04 13:35:22
格差の下の方と上の方があまりに目立つので、よく取り上げられる今日この頃です。 しかし小泉の改革でいちばんメタメタにされたのは社会参加意識もある程度あり、勤勉でリベラルな人々が多い中間層ではないかと思うのです。 言い方がよくありませんが、ここから下に脱落した人たちの不満が渦巻く社会になりつつあるというのは、それなりに企業や社会で中堅として役割を担う人々が将来を悲観しつつあるということで、それは社会から活力を奪うことです。 法やシステムがアメリカ型に改正されてサラリーマンでも10億円の出来高払いを受けられる時代を讃えるのか、社会に還元するべきか、恩恵を受ける一部の者は今をよい時代と言い、苦難ばかりの多くは改革の間違いの部分を正せと言う。 夢のような成功例は社会のごくごく少数に過ぎないのに、大きく扱われるという情報の偏りにも問題があると思うが、安倍のような人間では少なくとも、成功例しか頭に思い浮かばないのだろう。 2世というものはだいたいこんなものだろうと思う。  
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>薔薇様 (giants-55)
2008-05-04 14:57:47
書き込み有難う御座いました。

資本主義を導入している以上、格差が生まれてしまうのは必定なれど、額に汗して必死で働いている者迄もが明日に夢を全く描けない社会になってしまってはどうしようもないですよね。カツカツの生活を送り乍ら、家族の娯楽の為に僅かな御金を捻出している一般人が居る一方で、毎晩の様に“税金”で高級料亭通いをしている“次期首相候補”の話が、先日の週刊誌に取り上げられていました。この方もそうですが、自民党では所謂“二世議員”の割合が52%にも上るとか。二世議員が全て悪い訳では無く、中には立派な見識&思想を持った人物も居るとは思いますが、概してその多くは苦労知らずの馬鹿ボンボンが多い気がします。与野党を問わず、世間知らずの人間には政治家を務めて欲しくないですね。
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単純な話ではないですよ (Spa supernova)
2008-05-04 17:47:07
>馬鹿ボンボン

「選挙」という映画ご覧になったことありますか??

川崎の市議戦に出る東大出落下傘候補の選挙戦を追った映画なんですが、いやーリアルでしたよー。

http://www.laboratoryx.us/campaignjp/

馬鹿ボンではないが、東大出のインテリが地域の支援者たちに操られ、だんだんロボットのようになって行くんです。面白いというか怖いというか。
「支援者」「選挙ボランティア」の爺婆(ホント爺婆ばっかり)にしごかれ、電柱にまで挨拶する姿は海外上映時に大爆笑を誘ったそうです。

こういう世の中にしてるのは馬鹿ボン・嬢ではない。
奴らを担ぎ上げてる「善良な爺婆」というのがよくわかりますよ。そういや美容院で読んだ雑誌の広告に平沼赳夫と秘書をしてる娘が出ていたんですが、秘書の娘はよく地元で爺さん婆さんに野菜をもらったりする、なんて言ってました。こういうお人よしの爺婆が全国に沢山いるわけですよ(苦笑)。
自分の首絞めて何が楽しいのかなあ、でも。その手の爺婆って大概大なり小なり土地持ちだから年金減ろうがどうしようが関係ないのかなあ。

しかしふるさと納税いつの間に…^^;。





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確かに (薔薇)
2008-05-04 21:18:28
DVD出てたので見ました。 あれ見たらやはり日本という国はかなりおかしな国だと笑われても仕方ないかもしれない。 政策をうったえるでもなく、経歴を披露するでもなく、ただひたすら名前を連呼して、握手しておじぎして、しまいには「私を男にしてください」とくれば、これが直訳されて、鑑賞している外国人には意味がわからないだろうと思う。 男じゃないのか?この男は? 確かに老人たちがたくさん集まって後援会を旗揚げして、この人たちはいったい彼のなにに共感して、支援する決意をしたのか理解不能でした。 何を公約して立候補したのかも知らない支援者など、おそらく、少なくとも欧米ではあり得ない。 地盤を継ぐ二世議員などの支援は当然のこととして、あの小渕の時の弔い合戦なるものも、担ぎ出された小娘も気の毒だったが、それ以上に選挙民は気の毒なのではなかったか。
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>Spa supernova様&薔薇様 (giants-55)
2008-05-05 00:41:03
書き込み有難う御座いました。

「選挙」という映画、上映当時かなり評判になりましたので内容は知っておりましたが、残念乍ら未だ見ておりません。DVD化されているとの事ですので、近い内に見たいと思います。

善良で在るかどうかは別にしても、「無知」(これは馬鹿という意味では無く、文字通り多くを知らないという意味です。)で在る事によって多くを不幸にする事が在るというのは困った物ですね。無知で在るが故に「誰某さん(乃至は何処何処の党)が推しているから、取り敢えず応援しよう。」と盲目的になってしまうのは、どれだけ国を駄目にする事か・・・。

それにしても選挙で政策を訴えるでも無く、自分の名前を連呼したり、挙句に歌を歌ったりとこの国の選挙は何処か狂っていると思わざるを得ません。
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