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其の決断が、未来を大きく変化させる。様々な人や出来事が連鎖し、“3つの世界”を変動させる。
「PK」:今から思えば、試されていたのかもしれない。
「超人」:君も闘っているのか?俺達は楽じゃない。
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2012年3月に刊行された伊坂幸太郎氏の小説「PK」は、同氏の久し振りの新刊。(小説としては)2010年9月に刊行された「マリアビートル」以来なので、1年半振りという事になる。
「PK」の後書きで伊坂氏自身が「あの地震が起きた直後(特に三月中)の僕は(大きな被害がなかったにもかかわらず)精神的にくたびれ、何もできない自分に嫌気が差し、日々の物資のことを考えることで頭がいっぱいで、小説については意識を向ける余裕もありませんでした。」と吐露されている。今回収録された「PK」、「超人」、そして「密使」の3作品は東日本大震災が発生する以前に完成していたという事だが、未曾有の大震災が1人の作家に与えた影響は決して小さくなく、今後の彼の作風にも少なからずの変化を与えそうな気がしている。
話を「PK」に戻すが、“伊坂ワールド”は相変わらず奇想天外。登場する人物や出来事に脈絡が感じられず(スーパーマンと思しき人物が登場したりと)、又、ゴキブリに関する或る出来事が食い違いを見せていたりする等、読んでいて頭が混乱する事が何度か。しかし最後の最後には全てが上手くリンクしているのだから、大した物だ。
「表面的に見えている物だけが、本当に事実なのか?良く良く、自分の頭で考えた方が良い。」、「世の中では多くの人や物事が、無意識の内にもリンクし合っている。」といった事を、此の小説からは再認識させられる。著名人の発した言葉を絶妙に、且つ印象的に文章内に潜り込ませるのも、彼にとっては自家薬籠中の物とする所だ。