ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「完全恋愛」

2009年04月16日 | 書籍関連
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他者にその存在さえ知られない罪を
完全犯罪と呼ぶ
では
他者にその存在さえ知られない恋は
完全恋愛と呼ばれるべきか?
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本格ミステリベスト10」及び「このミステリーがすごい!」では3位、そして「週刊文春ミステリーベスト10」では6位と、昨年度のミステリー・ベスト10に軒並み顔を出していた「完全恋愛」。著者名は「牧薩次」となっているが、その正体は「鉄腕アトム」や「サザエさん」等のアニメの脚本を多く手掛け、ミステリー作家としても「迷犬ルパン・シリーズ」等を世に送り出した辻真先(つじまさき)氏で在る。「つじまさき」をアナグラムで「まきさつじ」とした訳だが、彼程の大御所が別名で作品を著す“冒険心”には恐れ入るし、又、それがこれだけ高い評価を得たというのは素晴らしい事。

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我が国洋画界の巨匠・柳楽糺(なぎらただす)、本名「本庄究」(ほんじょうきわむ)が主人公。太平洋戦争末期の1945年、両親と妹を空襲で失った中学2年の彼は、東京から父の実兄・坂上隼夫が住む福島の温泉地・刀掛(かたなかけ)へと疎開

やがて日本は敗戦を迎え、進駐軍が日本を支配する事に。隼夫の営む旅館「刀掛本館」は「平和本館」と名前を変え、進駐軍将校相手の保養所となる。そして或る日、近くの河原で進駐軍の大尉の刺殺体が発見されるが、素行不良の彼は平和本館の常連客だった。彼を刺し殺した凶器は消失していたが、事件は一応の解決を見る事に。

時は流れて1968年、或る男が一人の女性の殺害を予告する。そして福島の山村に在るのナイフが時空を超えて、西表島に居る女性の胸を突き刺す。予告殺人が完成した瞬間だった。

更に時は流れた1986年、バブル景気の始まったとされるこの年に、「東京にいる筈の犯人が、同時に福島にも出現していた。」という不可思議な事件が発生。

3つの完全犯罪の犯人は?そして、そのトリックは?
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1945年に中学2年だった究が、2007年に75歳で亡くなる迄を描いたこの作品、史実や類似の事件を思い起こさせる話が記されていたりと、読者を惹き付けるストーリー展開で、流石ベテラン作家だけの事は在る。唯、謎解きに関しては「やられた!」と唸る点が在る一方で、早い段階から見破る事が出来た点も在ったりと、フィフティーフィフティー出来栄えといった感じ。

又、「純愛」とも言える切ない展開が、最後の最後でガラッと崩れてしまった様に感じられたのは、非常に勿体無い気が。個人的には、最後迄切なさを感じさせる展開で在って欲しかった。

読み応えの在る作品なのは確かだが、上記した不満点も在ったりで、総合評価は星3.5個としたい。

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4 コメント

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完全○○ (tak)
2009-04-16 10:42:22
この作品、中々面白そうですね^^機会を見つけて読んでみたいと思います。

>他者にその存在さえ知られない罪を
>完全犯罪と呼ぶ
>では
>他者にその存在さえ知られない恋は
>完全恋愛と呼ばれるべきか?

そもそも犯罪ってあってはならない、バレたらおしまい(犯罪を犯したほうの立場で)という前提での「完全」が犯罪の前につくから、恋愛は別に他人に知られても問題ないので、同様の完全論は当てはまらないかなぁ~ もし言い換えるなら「完全不倫」「完全浮気」とかいかがでしょうか
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>tak様 (giants-55)
2009-04-16 19:04:41
書き込み有難う御座いました。

「恋愛」って概念が人によっては様々在るんでしょうね。個人的には受け付けないけれど、人によっては「不倫」も「純愛」と捉える人が居るだろうし。そもそも「他者にその存在を知られない恋」というのも、その「他者」に「恋愛対象」が含まれるか否かによっても捉え方が違うかと。ストーカーなんかは、このケースに入るんでしょうが。
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Unknown (マヌケ)
2009-04-21 00:02:43
ちょっと前にドキュメンタリー番組で時空を超えた恋愛に出会いました。 わずか2週間の新婚生活で夫が戦地に赴き遠い南の島で戦死してから今日まで再婚せずお年を召した女性が主人公でした。 出征直前の写真の顔から夫が年をとることもなく自分だけが老いても、心の中や記憶の中ではあの時のままの本人とご主人がいらして、恋愛をしているから、私たちは若い男女のままなんですよ。 でも、戦争さえなければね。 若くてハンサムなままの彼しか知らないでいられてね、今でも彼から愛を告白された時は感動して、まじめな青年で、うれしかった。 一生の思い出ですね・・・という言葉を聞いてとてもジーンときました。 フィクションでない感動でした。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2009-04-21 02:05:29
書き込み有難う御座いました。

その番組、自分も見ました。記憶違いで無ければ「なでしこ隊」(http://wwwz.fujitv.co.jp/nadeshiko/index2.html)の女性でしたよね。残された手紙、そして女性の言葉の端々から、御互いに信頼し合った「純愛」が感じられ、グッと来る物が在りました。
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