ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

アナタハン事件

2004年10月01日 | 歴史関連
歴史が大好きなのだが、特に好きなのは幕末~戦後のいわゆる近・現代史。他の時代も面白いが、人物達の息吹や匂いがより身近に感じられるので、好奇心がそそられる。歴史といっても、教科書に載っている様な事象や人物だけが対象ではなく、世相や風俗の視点から、当時の一般庶民の生活に思いを馳せるのも実に興味深い。事件を通して、人間の生々しい部分が透けて見える事も有る。

アナタハン事件」というのが在る。50代以上の方には、結構知られている有名な事件で、”アナタハンブーム”というのも有ったのだとか。太平洋戦争真っ只中の昭和19年、マリアナ諸島の一つである”アナタハン島”に取り残された33人の日本人。その内訳は、男性32人に対して、女性は夫と生き別れになっていた比嘉和子さん1人だった。

暫くは、普通に集団生活を送っていたが、やがて唯1人の女性である比嘉さんを皆が狙い始める。年長者の助言で、或る男性と”偽装夫婦”となり、集団から離れた場所に住む事で、暫しの安息の時を得た比嘉さんだったが、その穏やかな時も長くは続かず、公然と奪い合いの殺し合いが始まる。

最終的に、全ての原因が比嘉さんに在るとして、彼女の処刑が決まるのだが、その事を事前に密告してくれた人間が居た御蔭で、彼女は逃亡し、33日後に米国船に救出される事となる。昭和25年6月の事だ。「米国船は自分達を救出する為に来たのでは無く、敵で在る自分達を生け捕りにしようとしているのだ。」と考えた男達は島の中に隠れたが、約1年後に再度訪れた米国船によって帰国を果たす事に。男達の数は20人、即ち当初居た33人の内13人が死に絶えていた訳だ。和子さんを巡って殺された男達は其の内の11人と見られており、3分の1の男性が、1人の女性を巡る争いで命を奪われた。事になる。

孤島という”閉ざされた空間”で起きた本能のぶつかり合いに、”人間の性”を見る思い。又、島の中で戦後を迎え、近海に米軍の船が何度もやって来て、拡声器で日本の敗戦を知らせたにも拘らず、(戦前教育の影響から)敵の戦略であって日本は負けていないと思い込んでいた悲しさ。戦後30年近く経って、グアム島やルパング島で身を隠していたのを発見された横井さんや小野田さんの話と相通ずる悲しさである。

更に胸を打つのは、戦死したとばかり思っていた比嘉さんの夫が、実は先に帰国し、新しい家庭を築いていたという事。後に訪ねた比嘉さんに、彼は玄関先で涙ながらに侘びたというが、彼も或る意味”戦争の犠牲者”だと思う。

自分も概略程度しか知らない事件なので、今度、関連本を読んでみたいと思っている。
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14 コメント

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トラックバックありがとうございました。 (ぷれこ)
2004-10-01 01:52:09
はじめまして。ぷれこです。

アナタハン事件って知りませんでしたが、壮絶な話ですね。結局、人間も動物。生命の危機に瀕しているときは、特に、子孫を残そうという衝動が無意識のレベルで働くんでしょうか。

それにしても、なんで32対1だったの? 無人島に見知らぬ異性はふたりきりで取り残されたら……みたいな設問が、流行ったことがあった気がしますが、この事件が大もとなのかもですね。
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初めて知りました。 (nene)
2004-10-01 22:40:38
リンク先も読ませていただいたら「映画や劇場に出演」されていたとか。もし、それがご本人の意思であるならば、その後幸せだったということなのでしょうか。

どちらにしても、やはり「戦争の犠牲者」だと思ってしまいます。

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まさに「本能」ですね (まなりん)
2004-10-02 00:33:28
 僕はこの事件は知りませんでしたが、

まさに「人間の本能」というのを知らされた

気がして、衝撃的でした。



 やっぱり、極限の状態に陥った時には、

「性」などの本能的な感情が、何にも勝って

しまうものなんですねぇ。



 そして、戦前教育の影響による思い込み。

プロパガンダの怖さを改めて感じました。
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Unknown (広島)
2004-10-27 05:15:48
戦前教育は関係ない。
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>広島様 (giants-55)
2004-10-27 16:26:55
初めまして。書き込み有難うございました。



基本的に、書き込みして下さった方のブログへ、直接レスを付けさせて戴く形を取っているのですが、貴ブログが見当たりませんでしたので、こちらに書き込む失礼の段を御許し下さい。



「戦前教育の影響」と書いたのは、今迄に多くの諸資料を目にした上で、以下の様な事を感じたからです。



① 「生きて虜囚の辱めを受けず。」という教育が徹底していた為、「降伏すると、敵に恥辱を受ける。」という思いが根底に根強く有って(そういう廻りの目もあって)、降伏しなかったり、自害するケースが在った。



② 「日本は神国であり、戦争に負ける筈がない。」という教育が徹底されていた為、敗戦をすんなりと受け入れる精神状況にはなかった。(→敗戦を呼び掛け、降伏を求める声にも応じなかった。)



唯、これはあくまでも私見ですので、広島様の御意見の根拠も御聞かせ戴けると嬉しいです。まだまだ勉強不足の身なので(^o^;;;。



これからも宜しく御願い致します。
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Unknown (ナモナキモノ)
2004-10-29 16:53:29
私見というより、戦後教育の影響がもろに出ている

ように感じました。



戦争が終わっていないと思い込んでいたのは、

近くの島で毎日不発弾処理をやっていたためだと

いうことですが。
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Unknown (ナモナキモノ)
2004-10-29 16:57:16
アナタハン事件については、「三流週刊誌におもしろおかしく書き立てられた」というような誇張ねじ曲げがあったようなので、あちこち見た方がいいと思いますよ > ブログの主さま
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>ナモナキモノ様 (giants-55)
2004-10-30 05:04:13
初めまして。書き込み有難うございました。



基本的に、書き込みして下さった方のブログへ、直接レスを付けさせて戴く形を取っているのですが、貴ブログが見当たりませんでしたので、こちらに書き込む失礼の段を御許し下さい。



「戦後教育の影響がもろに出ている」と言われてしまうと、何とも言えないです(^o^;;;。歴史というのは、それを書き残したり、伝えたりしている人の立場が如実に反映されますよね。或る人にとっては「正」でも、他の人にとっては「悪」となる事も多々有る様に、この件も当事者でないと結局は真相は判らないですね。唯、「不発弾処理を近くでやっていたのを、戦争が終わってないと誤解した。」というのは初見でした。情報有難うございました。



三流週刊誌にも色々有りますよね。言葉は汚いですが、糞の役にも立たない様な記事を垂れ流している雑誌は論外ですが、権力を殆ど意識せずに隠れた真実を報道するものも有る事は否定出来ないと思います。十把一絡げにしてしまうのも違うかなあと。



少なくとも、帰国した後の比嘉さんが、映画に出たりする等、自らこの事件を広める役割を果たしたと言えなくもないのではないでしょうか?そういう意味では、全てが誇張で歪曲されたものと言い切ってしまうのは語弊が有る様な気がします。



これからも宜しく御願い致します。
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書籍の著者?販売先? (オガワ)
2005-03-20 01:14:17
事件の詳細が知りたいのですが教えていただけませんか?

サリガン、アナタハンには訪島した事が有るんですが

絶海の孤島で、戦争の傷跡が在りのまま、残されていて

大変貴重な体験でした。戦争の悲惨な代償なんでしょうね



05 .3.19

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>オガワ様 (giants-55)
2005-03-20 02:51:18
初めまして。書き込み有難うございました。



基本的に、書き込みして下さった方のブログへ、直接レスを付けさせて戴く形を取っているのですが、貴ブログが見当たらなかった為、こちらに書き込む失礼の段を御許し下さい。



この事件を扱った書籍(事件をモチーフにして小説立てした物がメインですが。)としては、下記の物が在ります。



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・ 「アナタハン」

  (著者:丸山通郎氏、出版元:東和社)

・ 「アナタハンの告白」

  (著者:丸山通郎&田中秀吉両氏、出版元:東和社)

この書籍は昭和26年&27年の発行と大昔のものであり、出版元も聞いた事が在りません。恐らく絶版品と思われます。国会図書館に行けば置いてあるかもしれません。この2冊の本を紹介しているサイトです(http://964.jp/ZW3)。



・ 「漂流」

 (著者:吉村昭氏、出版元:新潮社)



・ 「黒衣の聖母」(「魔島」という話)

 (著者:山田風太郎、出版元:ハルキ文庫)



・ 「かわら版明治史」

 (著者:遠藤鎮雄氏、出版元:角川書店)

昭和42年発行の書籍ですので、やはり国会図書館でないと見られないと思います。

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この他にも、当時の新聞の縮刷版(国会図書館に在ると思います。)等でも確認出来ると思います。何度か映画化された様なのですが、如何せん古い話(昭和28年頃)なので、実際に目に出来る機会は限りなく少ないと思います。



これからも宜しく御願い致します。
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