最近では読む機会が減ったけれど、学生時代に良く読んでいたのが総合スポーツ雑誌「Sports Graphic Number」。読むのは専らプロ野球関連の記事だったが、印象に残る写真や記事が多かったっけ。今回読んだ小説は、総合スポーツ雑誌の編集部で働く女性を描いた内容。
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老舗出版社「千石社」に入社し、2年間を営業部で働いていた目黒明日香(めぐろ あすか)。仕事にも慣れて来た彼女に、異動の辞令が出る。移動先は総合スポーツ雑誌「Gold」の編集部。幼い頃に少しだけ水泳を習っていた明日香だが、基本的にはスポーツに関する知識が乏しく・・・。
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「ブログをしていて良かった。」と思う事の1つに、「ブログを通じて知り合えた方々から、様々な情報を戴ける。」というのが在る。大好きな読書に関しても、「紹介して貰った小説が非常に面白く、以降、其の著者の作品を読み続けている。」という事も。8年前、青空百景様から紹介して貰った「配達あかずきん 成風堂書店事件メモ」もそんな小説で、以降、著者・大崎梢さんの作品は全て読んで来ている。今回読んだ「彼方のゴールド」は「千石社シリーズ」の第4弾で、意に沿わない部署に異動となった若い女性の成長を描いている。
スポーツの世界で生きる選手達の煌めきと挫折。より高いレヴェルの集団に行けば行く程、“持ち続けていた自信”と“現実”との差に、大きな挫折を味わう事だろう。大きな挫折を味わった際、「以降、どう生きて行くか?」によって、其の人の“進む道”は大きく変わって行く。「進む道を変えず、突き進んで行った事が良かったのか?又は、進む道を変えた事が良かったのか?」は、其の人が“生”を終える時点で無いと、答えは出せないと思う。
6つの短編小説で構成されているが、個人的には明日香と幼馴染みの2人を描いた「水底の星」、(幼馴染みは少ししか登場しないが)「高みを目指す」、そして「速く、強く、熱く」が良かった。特に、3人の挫折を描いた「水底の星」は、ずしんと心に響いた。又、挫折を味わった彼等3人が、長い時を経て、20代半ばを迎えた“今の姿”が描かれる「速く、強く、熱く」も、爽快感が在って良い。
「Sports Graphic Number」を夢中になって読んでいた頃、雑誌から伝わって来る“作り手の熱量”を思い出した。総合評価は、星3.5個とする。