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通夜の為、実家に帰った八尋竜一(やひろ りゅういち)は親戚の少女・久遠(くおん)に「小父さんの思い出を教えて。」と請われた。小学生の時に起きた「百日紅の木の下には死体が埋まっている事件」を切っ掛けに クラスメートの渡良瀬良平(わたらせ りょうへい)と、転校生の北川雪子(きたがわ ゆきこ)と行動を共にする様になった八尋。中学の時に起きた「通り魔事件」、「はらジュエリー、ブローチ事件」、「隠れ家と増水事件」と 思い出を色鮮やかに語って行く。話を聞いた久遠の導き出した物語の真相とは?
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第17回(2018年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で“隠し玉”に選ばれた小説「勘違い 渡良瀬探偵事務所・十五代目の活躍」(著者:猫森夏希氏)。大半は竜一の小・中学校時代が描かれており、其の部分だけ読むと、ほんわかとしたジュヴナイル小説という感じ。ところが、或る人物が“死亡”して以降、雰囲気がガラッと変わる。ほんわかとした感じが全く無くなり、深刻な雰囲気へと変わるのだ。そして、大人になった竜一が描かれる部分では、想像だにしていなった展開に。こういう設定、他の小説でも見受けられなかった訳では無いが、「ほんわかとしたストーリーがずっと続いていただけに、驚いてしまった。」という思いが。
なので、意外性という点では、面白い作品だ。でも、色々不満も残る。「先々で、本筋に関係して来るのかな?」と注意を払っていた人物達が、結局は殆ど大きな関係性を持たない等、登場人物が無駄に多い気がする。又、「結局は、どういう事だったの?」というモヤモヤ感が残る点も、結構存在する。「“彼女”は結局、誰が好きだったの?」、「“彼”が亡くなったタイミングと、“彼女”の死とは、本当に無関係だったの?」、「久遠の設定って、無理が在り過ぎない?」等々。
竜一の小・中学校時代を描いた部分が悪く無かっただけに、“意外な展開”以降の部分の“非現実さ”が、自分には興醒めな感じが。もっと違う結末だったら、より高い評価が付けられたかも。
総合評価は、星3つとする。