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美人会社員の三木典子(みき・のりこ)が惨殺された不可解な殺人事件を巡り、1人の女性に疑惑の目が集まった。同僚、同級生、家族、故郷の人々と、彼女の関係者達が其れ其れ証言した驚くべき内容。
「噂」が恐怖を増幅する。果たして彼女は残忍な魔女なのか?それとも・・・。
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今年、其の作品が次々に映像化されている作家の湊かなえさん。4年前のデビュー作「告白」が売れに売れ、一躍人気作家の仲間入りを果たした彼女だが、デビューから第10作目の単行本に当たる「白ゆき姫殺人事件」を読了。
デビュー作以降ずっと、モノローグ・スタイルの作品を書いて来た湊さん。マンネリ化が気になっていたのだけれど、第7作目の「花の鎖」でガラッと“作風”を変えて来たのは良かったが、如何せん肝心な“作品の質”が劣化し続けている様に感じていた。
今回は原点回帰という事か、「告白」と同じモノローグ・スタイルとなっている。唯、其れだけでは進歩が無いと考えたのか、巻末に「関連資料」なる物が付いており、其処には登場人物達が書き込んだ(という設定の)ツイッター擬き及びブログ、又、記した(という設定の)新聞記事及び雑誌記事が載っている。「章」の最後に其れ其れ「資料XXを参照」との指示が在り、其れに従って当該資料をチェックするというスタイルで、一昔前に流行った「袋綴じスタイルのミステリー」(袋綴じの中に、証拠品等が入っている。)を思い出してしまった。
湊さんの作品は全て読了して来たが、中でも最悪の出来だと思う。モノローグ・スタイルという事で、登場人物達の会話のみで成り立っている作品なのだけれど、此の会話が冗長。人の会話なんて簡潔じゃ無いのが普通だし、逆に簡潔な会話だけで構成されていたら、其れは噓臭く感じてしまうだろう。だが、此の作品で言えば、余りにも無駄な会話が多過ぎる。其の為に、読み進めるのが億劫になってしまうのだ。
人には様々な“顔”が在り、或る人は好意的に捉えても、別の人が悪意的に捉える事だって在る。1人の人間を取り上げ、其の人物を知る関係者から証言を得て行く事で、様々な“顔”を浮かび上がらせて行くという手法は悪くないが、“中身”が薄過ぎる。又、殺人に到る動機も、惨たらしい殺害方法の割には、「えーっ、こんな動機で!?」と思ってしまう程に深みが無い。
苦笑するしか無いのは、「白ゆき姫殺人事件」というタイトル。一時期「『○○殺人事件』と、『殺人事件』をタイトルに付けさえすれば、小説は売れる。」と言われた時代が在ったけれど、今回のタイトルの付け方は、正に其れだろう。無理無理に「白ゆき姫」を冠した安直さは、一体何なのだろうか?