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祐希:「くすんだ緑言うな、カーキって言え、カーキって。」
芳江:「一寸変わったグレーで良いわねえ。」
祐希:「ライトアッシュだっつってんだろう。」
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人に貸してしまい、手元に当該本が無いので、此方の記事を参考にさせて貰ったが、冒頭の会話は、先日読了した小説「三匹のおっさん」の中の物。或る事件を切っ掛けに、還暦を迎えた祖父・清一(きよかず)と心を通わせ合う様になった孫・祐希(ゆうき)は、ファッションに無関心だった清一に対してファッション・アドヴァイスをする様になるのだが、高校生の祐希と高齢者の清一及び其の妻の芳江とは、如何せん「ファッション感覚」が噛み合わない。「色の呼称」1つ取っても冒頭の有り様で、思わずニヤッとしてしまった。
唯、ニヤッとはしてしまったものの、気持ち的には清一や芳江に共感。若い頃からファッションには全く無頓着で、其の当時に流行ったファッションどころか、ファッション用語すらも満足に理解していない自分なので。
「ズボン」を「パンツ」と呼ぶ事には、未だに抵抗が在る。「『パンツ』と言えば、『下着』の事だろう。」という思いが捨て切れないので。「『チャック』が開いてますよ。」と言った所、一緒に居た女性から「今は、『ファスナー』って言わないと。」と笑われてしまった事も在る。
「彼の『ジレ』御洒落だよね。」と言われたので、「ジレ」なる物が何なのか全く判らなかったけれど、聞くのも恥ずかしいので「うん、御洒落だね。」と然も判った振りで返事。帰宅して直ぐに調べ、「何だヴェストの事か。」と思った事も。
「スパッツ→レギンス」、「コールテン→コーデュロイ」、「下着→インナー」、「Tシャツ→カットソー」(厳密に言えば、『Tシャツ』と『カットソー』は100%同一の物では無いらしいけれど。)等々、何時の間にか呼び方が変わってしまったファッション用語は、枚挙に遑が無い。古い呼称を口にして、恥ずかしい思いを何度した事か。
ただ、静かにすべき場所で口を閉じているように指示する言葉としては、「お口にファスナー」や「お口にジッパー」では何か締まりがない。やはり「お口にチャックしときなさい」だと思います。小学校低学年の時の担任の先生が「チャック」と呼ぶ世代だったからかもしれません。
冒頭の「三匹のおっさん」の祖母と孫のやり取りのくだりを読んで、手前味噌ながら、学生時代に中華料理店でバイトしていた時のことを思い出しました。ご注文確認の時に、お客様に言われた名称ではなく、メニューや伝票に記載の名称を読み上げていたのですが、ある時、「お客様に言われた名称を尊重した方が良いのではないか」と思い、以後、メニュー通りに言われたらメニュー通りに、別称なら別称で復唱するようにしました。
電気機器メーカーの相談室係の人の禁句は「先ほど申しましたように」だそうです。
高校生の祐希くんも、もう何年か経てばこういうことに気づくでしょうね。
そうそう、「パンツスーツ」といった様に他の語とセットになっていれば「パンツ=下着」というイメージは薄れるけれど、「パンツ」という呼称を単体で使われると、どうしても「下着」をイメージしてしまうんですよね。
メニューに記されたのと違う呼称を口にすると、店員から訂正される事は在りますね。誤註文を避けるという意味合いも在るのでしょうが、口にした側からすると「メニューに書かれた文字が読めないの?」と見下された様に感じる事も在り、ぷりな様の遣り方は凄く良かったと思いますよ。
ある老婆が「クールビズ」を「クールヒズ」「クールヒス」等々ずっと間違っていっていたのですが、優しい自分は年寄りをいたわり指摘しませんでした。単にめんどくさい婆さん相手に言ってもしょうがないと思ったという面もありますが。
コールテン・・・何とも懐かしさを覚える呼称です。
亡くなった祖母は、「PTA」を「ピーチーエー」と言っていました。殿さまキングスの宮路おさむ氏はビューティ・ペアの全盛期、歌番組で「びゅうて“え”ぺあ」と真顔で連呼していたのも印象に強く残っています。