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東京・赤羽。絞殺死体で発見された1人暮らしの初老男性。親譲りの不動産を所有する被害者の周辺には、多くの捜査対象が存在する。地道な鑑取り捜査の過程で、家事代行業の女性・山本美紀(やまもと みき)が浮上した。然し、彼女の自宅に赴いた赤羽署の捜査員の前に、埼玉県警の警察車両が。彼女の仕事先では、他にも複数の不審死が発生していた。舞台は敏腕弁護士と検察が鎬を削る 裁判員裁判の場へ。
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佐々木譲氏の小説「沈黙法廷」。30歳の山本美紀は、地味でパッとしない風貌の女性だが、彼女の周りでは高齢男性の不審死が相次いでいた。其れ等の死には多額の金銭が絡み、美紀の関与が疑われた。2009年に発覚した「首都圏連続不審死事件」や2013年に発覚した「青酸連続殺人事件」で逮捕された女性達を思い浮かばせる設定だ。此の美紀が逮捕され、裁判員裁判で裁かれる過程を、「沈黙法廷」は描いている。
美紀が如何に毒婦で在るかを、マスメディアは一斉に報じる。伝えられて来る情報を見聞する限りでは、美紀の関与が非常に濃厚な感じがする。そういう中、彼女の裁判員裁判が開かれる。捜査を担当する刑事、弁護士、検察官、美紀自身、そして美紀に思いを寄せる男の視点から、ストーリーは進む。
報道から出来上がって行くイメージだけで、物事を判断する事の危うさに警鐘を鳴らしているのだろう。其れは理解出来るのだろうけれど、美紀が取り調べや裁判の過程で“沈黙”する理由が、個人的には理解出来なかった。「其の程度の理由で、自分に不利に働く様な“沈黙”をする物だろうか?」という思いが、どうしてもしてしまうので。まあ、人によって考え方は色々なのだろうが。
裁判員裁判制度に関する描写は興味深い物が在ったけれど、全体としては非現実的に感じる点が少なく無かった。無理無理にハッピーエンドに持って行っている感じも。
総合評価は、星3つとする。