プロ野球と懐メロを愛する自分にとって、非常に残念なニュースが昨日報じられた。元プロ野球審判員の平光清氏と、歌手の二葉あき子さんの訃報だ。
1950年代から1960年代頭に掛けて、日本プロ野球界には二出川延明氏なる名物審判が居られた。「俺がルールブックだ。」という名言を残した事でも有名な人物だが、残念乍ら自分は彼の審判時代を知らない。自分がリアル・タイムで見て来た審判で、最も印象的な人物となると平光清氏。1986年、ランディ・バース選手(タイガース)が江川卓投手(ジャイアンツ)からホームランを放ち、「7試合連続ホームランの日本タイ記録」を達成した試合で球審を務めていたのは彼だったし、二塁塁審として「『幻のホームラン』事件」を起こしてしまい、結果として其の年に審判を辞職した事も強く印象に残っている。又、インサイド・プトロテクターを早期に取り入れ、構える時に片膝を地面に付くスタイル「ニー・スタンス」を取っていた彼は、何とも御洒落な感じがした物だった。
「ジャイアンツ贔屓の審判」、所謂「ジャンパイア」と呼ばれた人でも在ったが、意外にも「川上哲治監督(ジャイアンツ)を退場させた唯一の審判。」なのだとか。やくみつる氏は、彼を漫画のネタに良くしていたっけ。肺癌による73歳での死は、余りに若い。
二葉あき子さんは、自分が好きな懐メロ歌手の1人。「水色のワルツ」(動画)や「フランチェスカの鐘」(動画)、「さよならルンバ」(動画)等々、彼女の持ち歌には名曲が多いのだけれど、自分が一番好きなのは「夜のプラットホーム」(動画)。張りの在る美声が、実に魅力的な歌手だった。死因は急性心不全との事だが、96歳という年齢を考えると「大往生」といった感じがする。御二方に合掌。
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1873年、オスマン・トルコの辺境、ヒッサルリクの丘。ハインリッヒ・シュリーマンは、伝説の都市「トロイア」が此の地に実在した事を証明する、莫大な黄金を発見した。しかし、其れを切っ掛けに、シュリーマン夫妻の周囲で不可解な事件が続発する。
混沌と緊迫の世界で繰り広げられる推理合戦の果てに、シュリーマンが汲み取った驚愕の論理とは?
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昭和初期を舞台にしたミステリーを何作か著されている柳広司氏だが、夏目漱石やチャールズ・ダーウィン等、歴史上の偉人を探偵役にした作品も少なくない。と言うか、彼のデビュー作自体が、ハインリッヒ・シュリーマンを探偵役にした作品なの。其のデビュー作「黄金の灰」を読了。
小学校低学年の時、子供向けの偉人伝集でシュリーマンの業績を知った。「幼少の頃にホメーロスの『イーリアス』を読んで感動し、伝説の都市『トロイア』を何としても見付け出そうと決意。そして50代の時、所謂『プリアモスの黄金(トロイアの黄金)』を発見し、トロイアが実在していた事を証明した。」という事で、「強い思いを持ち続ければ、願いは必ず叶う。」という教訓が含まれていた訳だが、長じてから「此の逸話は、功名心が強かったシュリーマンによる、後付けの作り話の可能性が高い。」事を知り、ガッカリさせられた。「黄金の灰」に登場するシュリーマンに関しては何処迄がフィクションで、何処迄がノンフィクションなのかは判らないけれど、良くも悪くも「俗」な人物で在り、其の辺が実に興味深かったりする。
或る人物の正体が二転三転するのは面白かったけれど、真犯人の犯行動機が如何せん弱過ぎる。又、ストーリーの結びも今一つだった。
総合評価は星3つ。