*********************************
「此の手紙は15年後の貴方に届ける為に、15年前にポストカプセルに投函された物です。15年の歳月の重みを感じ取って下さい。」。
ラヴ・レターが、遺書が、脅迫状が、礼状が、文学賞の受賞通知が、15年遅れで届いたら。心温まる筈の善意の企画(?)の裏に、驚愕の真相が。
*********************************
1985年に開催された「国際科学技術博覧会(つくば’85)」では、郵政省が「ポストカプセル2001」というサーヴィスを行った。会場内に設置された専用ポストに投函された手紙が、16年後の21世紀最初の元日で在る「2001年1月1日」に届けられるというサーヴィスだ。16年後の自分自身に送ったり、16年後の祖父母に送ったりと、其の内容は色々だったようだが、「明るい未来を信じて自分自身に送ったのに、16年内に亡くなってしまい、受け取ったのは其の両親だった。」というケースが在る等、16年という歳月の長さと共に、人の運命の儚さを感じさせられるエピソードが、配達された当時は幾つか報じられたもの。
そんなポストカプセルを題材にしたのが、折原一氏の小説「ポストカプセル」。様々な男女の下に、“妙な手紙”が届く。其れはラヴ・レターで在ったり、遺書で在ったり、脅迫状で在ったり、礼状で在ったり、文学賞の受賞通知で在ったりと内容はバラバラなのだが、投函されたのは15年前。15年前に投函された手紙が、「ポストカプセル」なるサーヴィスによって届けられたのだ。
「直ちに配達されるべき内容なのに、何故、15年後に配達されるポストカプセルに投函したのか?」と疑問に感じられる物許りなのだが、話が進んで行く中で、配達された男女達には或る共通項が存在する事が判明。話が“過去”と“現在”を行き来し、「此の人は誰なんだろう?」と混乱するのは、叙述トリックを十八番とする折原作品の特徴。
遺書や脅迫状は別にして、15年前に配達されていたならば全く問題にならなかった様な内容の手紙でも、15年後に届くと大きな波紋を投じて行く。大きな波紋は更なる波紋を生み、どんどんと大きくなって行く。意外性も含め、面白い設定だ。
関係性等、一読では判り難い部分も正直在る。叙述トリックの性質上、避けられない所では在る。だから、スラスラ読める作品では無いかもしれないし、減点ポイントにもなろう。
総合評価は星3.5個。