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自宅で強盗に殺害されたと思われた母が、実は父によって殺害されていた事実を、母の初七日の夜に知ってしまった大学生・種田静馬。父には愛人が居り、保険金目当ての犯行だった。夫婦仲が悪い様には見えず、父親が外で愛人を囲っている事も全く知らなかった彼だが、母は愛人の存在に気付いていて、父に離婚を迫っていたと言う。激しい衝撃を受けた静馬は怒りに任せて父を階段から突き落としてしまい、亡くなった父は単なる転落死として処理される事に。結果として両親を相次いで亡くす事になった彼は自暴自棄となり、自殺を決意する。
自殺の場所に選んだのは、或る伝説が伝わる寒村「栖苅村(すがるむら)」だった。其処で彼は、水干姿の少女に出遭う。嘗て数々の難事件を解き明かし、「隻眼の探偵」と呼ばれた「御陵みかげ(みささぎ・みかげ)」なる女性が居り、少女は10数年前に亡くなった御陵みかげの一人娘だと言う。僅かに碧がかった彼女の左目は義眼で、詰まり母と同じ「隻眼」。其れ許りか母と同じ探偵の道を歩み出すべく、「御陵みかげ」の名を名乗っていた。
そして、栖苅村で起こった「少女の首切り事件」。犯人の罠により殺人犯と疑われた静馬を、みかげは見事な推理で救う。静馬は助手見習いとしてみかげと共に事件の謎に挑み、難事件を解決するのだが、18年後に同じ村で再び惨劇が・・・。
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「2011年版『本格ミステリ・ベスト10(国内編)』」では第1位、そして「2010年度『週刊文春ミステリーベスト10(国内編)』」及び「2011年版『このミステリーがすごい!(国内編)』」では共に第4位と、昨年のミステリー界で高い評価を受けた小説「隻眼の少女」(著者:麻耶雄嵩氏)。「寡作だけれども、本格ミステリーを著す作家。」として古くよりカルト的支持を集めている方なのだそうだが、自分が彼の作品を読むのは此れが初めて。「隻眼の少女」というタイトルも然る事乍ら、本のカバーに使われている「暗闇に立つ水干姿の美少女」という写真に、「一体どういう内容なのだろう?」と強い興味を惹かれた。
寒村で次々に発生する禍々しい殺人事件は、横溝正史氏の「金田一耕助シリーズ」を彷彿とさせる。(みかげと静馬の間で時折軽い遣り取りが在ったりするので、金田一耕助シリーズよりはやや禍々しさは薄れて感じられるかもしれないけれど。)
又、どんでん返しの多さは、余りの意外な展開の連続に「ジェットコースター・ドラマ」とも呼ばれ、高視聴率を稼いだ嘗てのドラマ「もう誰も愛さない」(動画)並みで、或る人物の意外な正体には、ミステリーを相当読んで来た自分も驚かされた程。
登場人物が多い上に、似た様な名前が揃っている。元々人の名前を覚えるのが苦手な自分なので、何度も「人間関係」を整理しなければいけないのはしんどかったけれど、ストーリーは高い評価に違わず面白かった。
総合評価は星4つ。