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取り柄と言えるのは「日本一綺麗」とされる空気だけで、夕方6時には「グリーンスリーブス」(曲)のメロディが街中を流れる。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい「美少女殺害事件」。殺害された少女と事件直前迄一緒だった4人の少女達は、犯人と目される男と会話したにも拘わらず、全員がその顔を思い出せなかった。そんな彼女達に被害者の母親が投げ付けた激情の言葉が、その後の彼女達の運命を大きく狂わせて行く事になる。
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昨夏に刊行された処女作「告白」が高い評価を受け、一躍人気作家の仲間入りを果たした湊かなえさん。今年初めには二作目の「少女」が、そして2ヵ月前に三作目の「贖罪」が刊行された。冒頭に記したのは、「贖罪」の梗概で在る。
「贖罪」とは、「金品を出したり、善行を積んだりして、犯した罪を償う事。」という意味。直前迄一緒に遊んでいた友人を殺され、その事で彼女の母親から余りにも酷い言葉を浴びせられた4人の少女達。心に深い傷を負わされた彼女達は、本来歩むで在ったろう“道”から外れ、別の道を歩む事になる。それから約15年が経ち、殺人事件の時効が成立間近となった頃、4人それぞれに悲惨な出来事が降り掛かるのだが、それも全て端を発していたのが「彼女達が負わされるべきでは無かった贖罪意識」から。「フランス人形」、「PTA臨時総会」、「くまの兄妹」、そして「とつきとおか」という4つの章は、それぞれ4人の少女達の告白という形、即ちモノローグ形式でストーリーは展開されて行く。その次の章「償い」も“或る女性”のモノローグで、最終章の「終章」へと繋がる。
強烈な体験がトラウマとなり、その後の人生に大きな影響を与えるというのは、結構在る事だろう。ましてや感受性の強い幼少期の体験ならば一層の事で、この小説に登場する4人の少女達の場合は「友人の死」と「友人の母から受けた酷い言葉」が或る種のトラウマとなり、彼女達を自縄自縛状態にして行く。彼女達が約15年後に直面した惨事は余りに極端な例だろうが、トラウマに縛られた者が悲惨な方向へと導かれてしまうケースは少なからず在りそうな気がする。
ストーリー的に面白さは感じるが、これ迄刊行された“湊作品”全てが似たテーストというのが残念。どれもモノローグ形式で、尚且つ御都合主義的な展開が見受けられるからだ。才能溢れる作家と思うからこそ厳しい事を書かせて貰うが、それ迄とは全く毛色の異なる作品を“開拓”して行かないと、徐々に飽きられて行ってしまうだろう。読者は、常に新しい物を求めて行くから。
総合評価は星3つ。
取り柄と言えるのは「日本一綺麗」とされる空気だけで、夕方6時には「グリーンスリーブス」(曲)のメロディが街中を流れる。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい「美少女殺害事件」。殺害された少女と事件直前迄一緒だった4人の少女達は、犯人と目される男と会話したにも拘わらず、全員がその顔を思い出せなかった。そんな彼女達に被害者の母親が投げ付けた激情の言葉が、その後の彼女達の運命を大きく狂わせて行く事になる。
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昨夏に刊行された処女作「告白」が高い評価を受け、一躍人気作家の仲間入りを果たした湊かなえさん。今年初めには二作目の「少女」が、そして2ヵ月前に三作目の「贖罪」が刊行された。冒頭に記したのは、「贖罪」の梗概で在る。
「贖罪」とは、「金品を出したり、善行を積んだりして、犯した罪を償う事。」という意味。直前迄一緒に遊んでいた友人を殺され、その事で彼女の母親から余りにも酷い言葉を浴びせられた4人の少女達。心に深い傷を負わされた彼女達は、本来歩むで在ったろう“道”から外れ、別の道を歩む事になる。それから約15年が経ち、殺人事件の時効が成立間近となった頃、4人それぞれに悲惨な出来事が降り掛かるのだが、それも全て端を発していたのが「彼女達が負わされるべきでは無かった贖罪意識」から。「フランス人形」、「PTA臨時総会」、「くまの兄妹」、そして「とつきとおか」という4つの章は、それぞれ4人の少女達の告白という形、即ちモノローグ形式でストーリーは展開されて行く。その次の章「償い」も“或る女性”のモノローグで、最終章の「終章」へと繋がる。
強烈な体験がトラウマとなり、その後の人生に大きな影響を与えるというのは、結構在る事だろう。ましてや感受性の強い幼少期の体験ならば一層の事で、この小説に登場する4人の少女達の場合は「友人の死」と「友人の母から受けた酷い言葉」が或る種のトラウマとなり、彼女達を自縄自縛状態にして行く。彼女達が約15年後に直面した惨事は余りに極端な例だろうが、トラウマに縛られた者が悲惨な方向へと導かれてしまうケースは少なからず在りそうな気がする。
ストーリー的に面白さは感じるが、これ迄刊行された“湊作品”全てが似たテーストというのが残念。どれもモノローグ形式で、尚且つ御都合主義的な展開が見受けられるからだ。才能溢れる作家と思うからこそ厳しい事を書かせて貰うが、それ迄とは全く毛色の異なる作品を“開拓”して行かないと、徐々に飽きられて行ってしまうだろう。読者は、常に新しい物を求めて行くから。
総合評価は星3つ。
「理想」と「現実」のギャップに懊悩し、現実の方向に自分自身を擦り合わせて行くというのは、どんな職業でも在るでしょうね。特に「生き死にと常に対峙する可能性の在る職業」に従事している場合、「何処で自分自身を納得させるか。」というので悩む事は多そうな感じがします。