小説「臨床真理」で第7回(2008年)「『このミステリーがすごい!』大賞」を受賞し、文壇デビューした柚月裕子さん。此の作品に関する自分の総合評価は、「星3.5個」だった。以降、彼女の作品は「最後の証人」(総合評価:星3つ)、「孤狼の血」(総合評価:星4.5個)、「慈雨」(総合評価:星3.5個)、「盤上の向日葵」(総合評価:星4.5個)、「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」(総合評価:星3つ)、「凶犬の眼」(総合評価:星3つ)、「検事の本懐」(総合評価:星3.5個)、そして「検事の信義」(星3つ)と9作品を読んで来た。
柚月さんの「佐方貞人シリーズ」は第1弾「最後の証人」、第2弾「検事の本懐」、第3弾「検事の死命」、そして「検事の信義」と4作品上梓されており、自分の場合は「第1弾→第2弾→第4弾」の順番で読んで来た。今回は残る第3弾「検事の死命」を読む事に。
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電車内で女子高生に痴漢を働いたとして、会社員の武本弘敏(たけもと ひろとし)が現行犯逮捕された。武本は容疑を否認し、金を払えば示談にすると少女から脅されたと主張。更に武本は県内有数の資産家一族の婿だった。担当を任された検事・佐方貞人(さかた さだと)に対し、上司や国会議員から不起訴にする様圧力が掛かるが、佐方は覚悟を決めて、起訴に踏み切る。権力に挑む佐方に勝算は在るのか。(「死命を賭ける」)。
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出世に興味を持たず、真実の追究にのみ血道を上げる検事・佐方貞人。“上”だけを目指している者からは“変人”と思われている彼が、「佐方貞人シリーズ」の主人公。今回の作品では「刑事部」に所属している彼が、「公判部」に移った所迄を描いている。
佐方が抱える複雑で悲しい過去は、第2弾「検事の本懐」の「本懐を知る」で明らかにされているが、「検事の死命」に収録された4つの短編小説の内、「業をおろす」は其の完結編となっている。「本懐を知る」が未読で在っても、「業をおろす」だけでも話は通じるが、「本懐を知る」を事前に読んでいた方が、より心にぐっと来る事だろう。4作品の中では、一番印象に残った。
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「秋霜烈日の白バッジを与えられている俺たちが、権力に屈したらどうなる。世の中は、いったいなにを信じればいい。」。
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総合評価は、星3.5個とする。