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虐めや虐待、誘拐等、命の危険を感じた時に起動させると、児童救命士が駆け付ける「ライフバンド」。児童保護救済法が成立し、義務教育期間の子供に、其の着用が義務付けられた。
或る日、新米児童救命士の長谷川創一(はせがわ そういち)は、「ライフバンド」の検査で小学校に出向き、其処で 態と警告音を鳴らす少年・須藤誠(すどう まこと)と出会う。
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「復讐法なる法律が制定され、私刑が認められている日本。」、そんな近未来を舞台にした小説「ジャッジメント」(総合評価:星3.5個)。小林由香さんのデビュー作だが、其の上梓から3年経った今年、彼女は2作品目を書き下ろした。タイトルは「救いの森」で、「児童保護救済法なる法律が成立し、義務教育期間の子供には“ライフバンド”の着用が義務付けられた日本。」という、矢張り近未来を舞台にした作品。
虐待死させられた少女のニュースが連日報道され、激しい怒りと共に、救えなかった命を思うと、何とも遣り切れない思いになる。「実の子供に対して、親があんなにも残酷になれるものなのか?」と自分には考えられない事なのだが、以前の記事でも書いた様に、虐待を受けている子供は、想像以上に多い様だ。
新米児童救命士の長谷川創一は、「助けを求める子供達を救いたい。」という思いが強い男。37歳の同僚・新堂敦士(しんどう あつし)とパートナーを組み、日々仕事に当たっている。必死に取り組む長谷川に対し、小馬鹿にした様な態度を見せたり、全く遣る気の無い姿を見せる新堂は、長谷川に指導らしき指導もしてくれない。そんな新堂に憤りを募らせる長谷川だが、上司は「心身共にきつい環境で在る事から、辞める児童救命士が少なく無い中、新堂とパートナーを組んだ者は辞めない。」と言う。
同僚には横柄な態度を取る新堂が、子供に対して敬語で接するのは何故か?寝ている際、新堂が魘されるのは何故か?
或る事件が元で、心の奥底に自虐の思いを持ち続けている長谷川。“助けを求める子供達”に対し、彼が余りにも熱くなってしまう背景には、其の自虐の思いが在るのだけれど、物語が進んで行くに従い、児童救命士の仲間達も、同様の自虐の思いを抱えている事が明らかになる。新堂も又、例外では無かったのだ。
最終章の「希望の音」が特に良い。「助けを求める子供達に対し、必死で向き合う児童救命士が、救った子供によって手酷く裏切られる。」という展開には遣り切れなさを感じたものの、最後は意外な結末を見せるからだ。又、最後の最後に長谷川に見せた、新堂の意外な姿というのも、自分にはグッと来た。
総合評価は、星3.5個とする。