ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「向日葵の咲かない夏」

2006年12月22日 | 書籍関連
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明日から夏休みという終業式の日、不登校を続けている同じクラスのS君に「夏休みの宿題等を届けて欲しい。」と担任の先生から依頼された小学生の僕。彼の家に辿り着いた僕が見たものは、家の中で首を吊って死んでいるS君の姿だった。慌てて学校に戻り、先生に状況を報告した僕。それを受けて先生と警察はS君の家に向かうも、何故かS君の死体は消えていた。

「嘘じゃない。確かに見たんだ!」と主張する僕に、先生や警察は疑念の目を向ける。そんな時、混乱した僕の前に現れたのは、一匹の蜘蛛に生まれ変わったS君だった。半信半疑のまま、僕は妹のミカと共にS君に言われるまま真相を探る調査に乗り出す。

近所で続発していた動物虐待死事件との関係は?先生の不可解な行動は何を意味するのか?S君の死体は何故消えてしまったのか?僕が御母さんから冷遇されている訳は?様々な”謎”が徐々に解き明かされて行って・・・。
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道尾秀介氏の作品「向日葵の咲かない夏」を読破。道尾氏は2004年に「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した作家で在るが、不勉強にして自分はその存在を全く存じ上げていなかった。先だって発表された2種類のミステリー・ベスト10(本年度)にて彼の作品がランク・イン、それも「本格ミステリ・ベスト10」に到ってはベスト10に3作品も選出されていたので、「これは是非読まなければ。」と遅まき乍ら食指が動かされた次第。

実に不思議な作品というのが第一印象。死んだS君が蜘蛛に生まれ変わって、主人公にアドヴァイスを送ったり、祈祷師の様な”婆さん”が登場したりと、何処となくジュブナイル小説の匂いを感じさせる非現実的な内容。登場人物の年齢を考えると、「こんな思考をする訳無いよなあ。」という言動もチラホラ在り、それが又非現実的さを助長している。

”謎解き”の面で言っても然程の意外性は無い。強いて言えば登場人物の”素性”に、3年前ミステリー・ファンの間で絶賛された歌野晶午氏の作品「葉桜の季節に君を想うということ」(個人的にはピンと来なかった。)と同様の意外性を覚える人も居るかもしれないが。

とは言え、凡庸な作風でも無い。「となり町戦争」で文壇デビューを果たした三崎亜記氏の様な不思議な作風が、ついつい次の頁を追わせてしまう。道尾氏の他の作品にも興味が湧いた。

リアリズムを求める人には、先ず肌合いが合わない作品かもしれない。総合評価は星3.5としたい。

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2 コメント

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そろそろ本棚がまた満杯ですので足元に積み上げてます (マヌケ)
2006-12-25 14:54:52
ミステリーと言われる分野はあまり読んだことがないのですが、ちょっと前にZOOという不思議な作品を手にしました。 あまり聞いたことのない作家で乙一という方のものでした。 短編集でしたが結構引き込まれたストーリーもありました。 この方の原作でたぶん今上映されていると思いますが「暗いところで待ち合わせ」という作品が映画化されています。 タイトルからすると昔のオードリー・ヘプバーン主演のミステリーかとも思えるのですが、どうなのでしょう。 昨年からこの一年にかけては太平洋戦争ものに手が伸びて福井晴敏や古処誠二氏などのものの影響もありましょうか、戦記ものなどが多かったように思えます。 やっぱりオヤジになっちゃったからでしょうか。 ただし、漫画もたくさん読んだような気もします。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2006-12-25 20:13:15
書き込み有難うございました。

乙一氏の作品読まれた事在るんですね。彼は10年前に「夏と花火と私の死体」という作品でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞したのですが、その時は何と17歳という若さでした。自分はこの作品と「GOTH リストカット事件」の2作を読みましたが、個人的には肌合いの合う作風では在りませんでした。「ZOO」は未読ですが、近い内に読んでみたいと思います。
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