**********************************************************
昨年、夫の孝之(たかゆき)が事故死した。丸で2年前に他界した義母・佳子(よしこ)の魂の緒に、搦め捕られた様に。血縁の無い母を「佳子さん」と呼び、他人行儀な態度を崩さなかった夫。其の遺品を整理する内、私は小さな桐箱の中に、乳児の骨を見付けた。夫の死は、本当に事故だったのか?其の骨は、誰の子の物なのか?猜疑心に囚われた私は・・・。
**********************************************************
矢樹純さんの小説「夫の骨」は、“家族の秘密”をテーマにした9つの短編小説で構成されている。最後の作品「かけがえのないあなた」は想像通りの結末を見せたが、他の8作品に関しては「こういう展開で、ストーリーは続いて行くのだろうな。」という予想が、完全に裏切られた。数多くのミステリーを読んで来ている自分としては、「完全に騙された。」という降参の思い。
範疇で言えば“イヤミス”という事になるのだろうけれど、読後に“強い不快さ”が残る作品は無かった。「絵馬の赦し」や「鼠の家」、「ダムの底」という作品が象徴的だが、「どろどろとした最悪の結末を予想するも、そうでは無く、ほっとする思いすら在った。」のが理由だ。
唯、全体的に物足り無さを感じるのも事実。“無理さを感じてしまう設定”が幾つか在ったので。
総合評価は、星3つとさせて貰う。