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「そうです、賀川(かがわ)少尉を殺したのは私です。」。
ビルマ北部のヤムオイ村に駐屯する事になった日本人将校の突然の死。一体誰が、何の為に殺したのか?
皆目見当が付かず、兵士も住民も疑心暗鬼に駆られる中、長閑な村に人知れず渦巻く内紛や私怨が、次第に炙り出されて行く。
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1970年生まれの古処誠二氏は、作家になる前、様々な職業を経て来られた。航空自衛隊に入隊されていた時期も在るそうで、其の経験が「従来の戦記文学を超越し、戦争体験者には書けない物語の領域を切り拓き続けている。」と評されてもいる。
今回、「いくさの底」で初めて彼の作品に触れた。「このミステリーがすごい!2018年版【国内編】」にて5位に選ばれたからだ。
決して読み易い作品では無かった。軍事用語のみならず、「戡定」等の一般用語でも難解な物が多用されていて、其れ等の説明が無かったりする。又、戦中の歴史に興味が在り、一定以上の知識を持っている者で無いと、良く理解出来ないで在ろう記述が、説明無しにさらっとされていたりするのだ。
読み進めて行く内に、人と人との関係性が判り難くなる。ネタバレになってしまうので其の理由は書かないが、「あれ?此の人物が〇〇という事ならば、XXは何で判らなかったの?」と不思議に思い、前に遡って確認した所、「そうか!だから、~の時に現れていなかったんだ。」と判り、「成る程。」と理解する事に。
“組織”という物は概して、“体面”を保つ事に汲々としたりする。“規律”を重んじる軍隊の場合は特にそういう傾向が強く、“日本軍”でも上層部が、自分達の体面を保ちたいが為だけに無謀な指令を出し、結果として少なからずの兵隊が亡くなったとも言われている。そういう理不尽さを、読後に感じる方も多い事だろう。
「一般的にもっと判り易い記述だったら、もっと良い評価が出来たかも。」、そんな思いが在る。総合評価は星3.5個。