野外で金木犀の濃厚な香りに鼻孔を擽られたり、彼岸花の燃え立つ様な赤さを目にしたりすると、自分は“秋の到来”を感じる。そして、球界で秋の到来を感じるのは、レギュラー・シーズンでの優勝チームが決まる時期で在り、戦力外通告を受けた選手達の名前が報道され始めた時期で在る。
両リーグの優勝チームが確定し、歓喜に沸く選手達が居る一方、今季も戦力外通告を受けた選手達の名前が報道され始めた。タイガースの久保田智之投手、ベイスターズの藤井秀悟投手、スワローズの岩村明憲選手、ファイターズの多田野数人投手、ライオンズの小林宏之投手等、馴染み深い名前が並ぶ中、ジャイアンツ・ファンの自分にとってショックだったのは、越智大祐投手が戦力外通告を受けた事。
2008年~2010年、山口鉄也投手と共にリリーフとして大車輪の活躍を見せた越智投手。しかし、2011年は成績が今一つ振るわず、翌2012年には難病の「黄色靭帯骨化症」に罹患している事が判明。同年に手術を受け、以降はリハビリに励んでいた。ジャイアンツは球団職員のポストを提示したが、本人は現役続行を強く希望したと言う。3年間活躍出来なかったとはいえ、彼だけチームに貢献してくれた選手なので、せめてもう1年チャンスを与えて上げて欲しかった。非常に残念だ。
「戦力外通告」と言えば、一昨日放送された「ヨソで言わんとい亭~ココだけの話が聞ける(秘)料亭~」では、「ドラフト1位でプロ入りするも、戦力外通告を受けた選手達。」を呼び、解雇の裏側を明らかに。加藤哲郎氏、藤田太陽氏、一場靖弘氏、そして辻内崇伸氏という4人の元プロ野球選手が呼ばれていたのだが、興味深い話が聞けた。
戦力外通告は、意外な程にあっさりとされる物なのだとか。一場投手の場合、部屋に呼ばれて「御疲れ様。」の一言だけで、別の仕事の斡旋等は一切無し。他の3人も「そんな感じですよ。」と言っていたので、其れが球界では普通なのだろう。
笑ってしまったのは、加藤氏の話。彼は「近鉄バファローズ→カープ→ホークス」と3つのチームを渡り歩いたのだが、カープでは書面で以て戦力外通告をされたのだとか。「貴方を戦力外と判断し、通告致します。」といった文章が記されており、「口頭で済ませるのでは無く、書面で通告するとは、随分丁寧なチームだなあと思った。」と加藤氏は真顔で語っていたけれど、一般社会では其れが普通だと思うのだが。
努力を怠り、結果を残せない儘、戦力外通告を受ける選手は致し方無いと思うが、そうじゃ無い選手に対しては「御疲れ様。」の一言だけで済ませてしまうのは、ファンとして虚しさを感じてしまう。別の仕事の斡旋も含め、もう少し選手達に優しい環境が在っても良いのではないだろうか。