Netbook市場の立役者であるASUSの「Eee PC」。新シリーズの「Eee PC Seashell」といえば貝殻型のデザインが印象的だが、肝心のモバイルPCとしての実力はどうだろうか?
「Eee PC 1008HA」は、ASUSTeK Computer(ASUS)の新型Netbook「Eee PC Seashell」シリーズの日本発売第1弾モデル。貝殻をイメージした滑らかな曲線で構成されたボディが印象的だ。国内では7月11日に4万9800円で販売が開始された。
貝殻をモチーフにしたボディの具体的なサイズは、262(幅)×178(奥行き)×18~25.4(高さ)ミリ、重量は約1.1キロと薄型軽量にまとめられている。前面や側面の端に向かって次第に薄くなるフォルムは、見た目だけでなく、手に持ってみても数値以上にスリムな印象を受ける。
各部の処理は、アップルの「MacBook Air」を意識したようにも思えるが、ボディのサイズやカラーが違うために似ているという印象はあまり受けない。
ボディは評価機のパールホワイトのほか、クリスタルブラック、ロイヤルブルー、ローズピンクの4色を用意する。いずれも樹脂製のカバーに美しい光沢塗装が施されており、Eee PC Sシリーズのような金属ボディの高級感こそないが、Eeeシリーズらしいカジュアルで親しみやすいイメージに仕上がっている。
基本スペックはNetbookの標準的な構成だ。OSはWindows XP Home Edition(SP3)がプリインストールされ、CPUはAtom N280(1.66GHz)、チップセットはIntel 945GSE Express(グラフィックスコアのIntel GMA 950を内蔵)、メインメモリはDDR2で1Gバイト、HDDは160Gバイト(10Gバイトのオンラインストレージ利用権付き)を搭載する。従来機種よりも内部基板などを小型化したとのことで、このスリムなボディに1.8インチHDDではなく、通常のノートPCと同様に、9.5ミリ厚の2.5インチ HDDを内蔵しているのは好印象だ。
メモリスロットやHDDベイへ簡単にアクセスできるような手段は用意されていないため、メモリやストレージを交換するには本格的な分解が必要になる。分解の仕方は別記事でも取り上げているが、かなり面倒な作業のため、メモリモジュールやストレージを交換しようと考えているユーザーには向かないといえる。
使い勝手を左右するインタフェース類は、ボディの側面にまとめられている。USB 2.0×2、アナログRGB出力用の小型D-Sub、ヘッドフォン、マイク、SDメモリーカード(SDHC対応)/MMC用スロットを装備する。
通信機能はIEEE802.11b/g/n(nはドラフト2.0準拠)の無線LAN、Bluetooth 2.1+EDR、100BASE-TXの有線LANを搭載する。旧モデルの「Eee PC S101」や「Eee PC S101H」ではカードスロットや有線LANなどを背面に配置していたが、これらを側面に並べたことでアクセスしやすくした。
一方、薄型化の影響として、S101やS101Hと比べてUSBポートの数が3基から2基に減り、アナログRGB出力が小型のD-Sub端子に変更されている。USBポートに関しては、付属のマウスを接続すると1基しか残らない。この数では、USBメモリやデータ通信アダプタなどを使う頻度が高いユーザーには少し不便だろう。
アナログRGB出力に関しては、本体底面に変換アダプタが収納されているため、別途アダプタを持ち歩く必要はない。常用するには心もとないが、いざというときに使えればよいというユーザーにとっては特にマイナス面でもないだろう。ただし、アダプタの収納部分は実に簡易な構造で収まりが少々悪く、耐久性にもやや不安が残る。紛失や故障の際に汎用パーツで代替できないため、もう少ししっかり作ってほしかった。
また、端子類にカバーが取り付けられている点も好みが分かれるところだろう。見た目がすっきりして、ホコリなどの混入を防げるというメリットもある一方、USBポートを使うためにもいちいちカバーを開くのは面倒と感じる人もいるに違いない。
また、各端子はカバー内の奥まった場所にあるため、USBポートの周辺、特に上下のスペースに余裕がなくなっており、少し大きめのカバーが付いた USBメモリなどを使う場合は少し本体を浮かせないと差し込めないといったこともありそうだ。もっとも、これは延長ケーブルを使えば解決できる問題であり、そういった大柄なUSBメモリにはだいたい延長ケーブルが付属しているものでもある。
液晶ディスプレイの画面解像度はNetbook標準の1024×600ドットだ。画面サイズは、S101やS101Hの10.2型よりもわずかに小さい10.1型となっている。対角の画面サイズを実測してみると約5ミリほど小さくなっており、並べてみればサイズの違いははっきり分かるが、ドットピッチはほとんど変わらないので、アイコンや文字の視認性に問題はない。
1008HAのみディスプレイの表面が光沢処理されていることもあり、表示は明るく鮮やかだ。ただし、光沢パネルということで外光の映り込みは目立つため、この辺りは好みが分かれるところだろう。
液晶ディスプレイの角度は約140度まで開き、特に実用上支障はない。ちなみに、S101は約145度、S101Hは約140度まで開く。なお、液晶ディスプレイのフレーム上部にあるWebカメラは有効画素数130万画素と、S101、S101Hが搭載するWebカメラの30万画素よりも高画質となっている
バッテリー駆動時間のテストは、BBench 1.01(海人氏作)を用いて行った。省電力機能の「Super Hybrid Engine」は標準の「Auto(バッテリ駆動時はPower Saving)モード」、ディスプレイの輝度は16段階中8段階目で統一した。BBenchの設定は「120秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」「20 秒間隔でのキーストローク」としている。
数あるNetbookの中でもキラリと光る存在
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Eee PC 1008HAはパフォーマンス、バッテリー駆動時間、静音性、発熱の処理など、Netbookとしての基本的な部分はどれをとっても非常に高いレベルにある。もともと完成度が高かった従来のEee PC Sシリーズをさらに上回る静音性やバッテリー駆動時間を実現しているのは特筆したい。
使い勝手の面で気になる点としては、バッテリーパックが着脱できない、USBポートがNetbookの標準より1基少ない、カーソルの上下キーのサイズが小さいなどが挙げられるが、いずれもNetbookとして一般的なユーザーが使ううえで致命的な欠点とはいえず、慣れや工夫で解決できるものといえる。貝殻デザインの小型軽量ボディと天秤にかければ、ガマンできるという人も多そうだ。
それだけこのエレガントなフォルムは見た目にも新鮮だし、手に持ってみても心地よく、何ともいえない魅力を備えている。5万円でこれだけ存在感がある製品は、なかなか見当たらないのではないだろうか。似たような仕様の製品で飽和気味のNetbookの中にあっても、キラリと光るものを持った1台といえる。上記の使い勝手の部分を許容できるならば、購入する価値は大いにある。