以前、「橋下徹・大阪市長は平成の龍馬になれるか?」と書いたことがあるが、衆院選を前にした太陽の党との合流以降の動きを見ていると、それも甚だ怪しくなってきた。大阪府知事としての実績や発信力の魅力などから、どちらかと言えば期待感の方が大きかったのだが、石原慎太郎氏との連携によって、残念ながら橋下氏の持ち味が薄れてきてしまった。選挙を意識して数に拘るあまりに、政策の目玉である「船中八策」についても、変化してきている。
たとえば、
○企業団体献金の禁止は→経過措置として上限を設ける。
○脱原発依存体制の構築→2030年代までにフェードアウトする
○TTP交渉参加→「国益に反する場合は反対」と付記する
○首相公選制の導入→今後扱いを協議 などだ。
政権公約の基本方針は、維新八策の価値観、理念に基づいて、日本を賢く強くする△少子・「超」高齢化社会を生き延びる、したたかな日本を構築する△自主憲法の制定―と謳っているが、石原新党との合流によって今までの主張はト―ンダウンして分かりにくくなっている。
これでは、今まで魅力的に見えていた橋下氏にとってはマイナスだ。加えて、石原氏の記者会見における言動は、全く人をバカにしている。「そんなくだらない質問はするな!」「そんな細かいことは聞くな!」とは、どういうことか。確かに、記者連中の質問の中には、そう感じる質問があるが、国民に向って言う言葉ではない。もっと言い方があるだろう。石原慎太郎だから許されるだろうと思ったら大間違いだ。
橋下氏の場合も、言っていることを、簡単に変えるという場面が多くなってきている。かつて、大阪府知事選に際し、出馬は2万%ないと断言していたにもかかわらず結局出馬したという過去もある。だから、「日本維新の会」の二枚看板とマスコミはもてはやすが、急速に鮮度が落ちてきている。
とくに、石原氏にいたっては、声に張りがなく、活力も感じない。一度は「総理に」の思いがあって、勢いのある橋下氏を利用して今回の勝負に出たのだとは思うが、日本維新の会の候補者を見ても、とても政権を担えるような人材は見当たらない。「みんなの党」なども、ついて来ると思ったら、ついて来ない。そんなこともあって、早くも戦意喪失という雰囲気ではないか。従って、衆院選の結果次第では、早々に分裂しかねない。
言うまでもないことだが、どんな組織でも、トップがいかに優秀で魅力的であっても、それを支える人材が集まっていなければ決して良い仕事は出来ないし、長続きはしない。また、しっかりした組織を構築するには時間もかかる。このドタバタ解散劇を見ていると、政策も組織も急ごしらえでは、良い結果を出せるはずもない。
解散が決まってから右往左往する国民の代表たる国会議員諸氏の行動は、日頃のカッコイイ言動とは裏腹に、「当選至上主義」の一点のみで行動しているとしか見えない。われわれは、少しでもましな候補者に思いを託すしかない。
「日本維新の会」が 早くも混乱ぶりを露呈している。
下記の記事を参照。
原発フェードアウト公約「見直す」 維新・石原代表
朝日新聞デジタル 11月30日(金)15時3分配信
日本維新の会の石原慎太郎代表は30日午後の党首討論会(日本記者クラブ主催)で、29日に発表した政権公約に「(原発は)2030年代までにフェードアウト(消えていく)」と盛り込んでいることについて「そういう公約はやっぱり直させます」と語り、見直す考えを示した。
石原氏は29日、維新代表代行の橋下徹大阪市長とともに記者会見して政権公約「骨太2013~2016」を発表。「脱原発依存体制の構築」「原発政策のメカニズム・ルールを変える」と明記した。政策の実例として「既設の原子炉による原子力発電は30年代までにフェードアウトすることになる」とした。
石原氏は討論会で、原子力利用の選択肢を失うことは「困る」とした上で、「私はそういう公約はやっぱり直させます。(エネルギー政策などの)シミュレーションをして、そのシミュレーションの中で、原発の淘汰(とうた)を考えていくことだ」と語った。