鶴彬(つるあきら) は反戦川柳作家である。国語の教科書にも日本史の教科書にも出てこないからあまり人には知られていない。私もこのつい最近までその名を知らなかった。週刊金曜日の記事を読んで、初めてそういう人がいることを知ったのである。荒れ狂う風と海を「恋」と形容した、その激しさに衝撃を受けて脳裏から離れなくなってしまった。
万歳とあげて行った手を大陸において来た
屍のゐないニュース映画で勇ましい
ざん壕で読む妹を売る手紙
修身にない孝行で淫売婦
紡績のやまひまきちらしに帰るところにふるさとがある
ふるさとは病と一しょに帰るとこ
奴隷となる小鳥を残すはかない交尾である
鶴彬の故郷である加賀は浄土真宗の盛んなところである。どれだけ貧しくとも寺への寄進は欠かさない、そんな老婆がたくさんいる、信仰心の厚い土地柄である。鶴の実家も真宗の門徒であった。しかし、窮乏する人々に支えられながら、政治の矛盾に目を向けない仏教に対する鶴の視線は辛らつである。
仏像の虚栄は人の虚栄なる
凶作を救えぬ仏を売り残してゐる
工賃へらされた金箔で仏像のおめかし
そう言えば、「生産性」がどうのこうのと言っていたクサレ議員に聞かせてやりたいのもある。
タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう
暁をいだいて闇にゐる蕾