「ドル高がいいのか・・・それともドル安のほうがいいのか・・・どちらのほうが米国にとっていいんだ?」
と、トランプは真夜中にフリン大統領補佐官に尋ねたという。
フリン大統領補佐官は「自分の専門外のことなので、わからない」と言ったら、トランプは不満そうだった。
専門家であったとしても、今の米国の状況でドルが強くなるのは、想定内だと言うに違いない。
当たり前の話だが、トランプの打ち出す政策は、すべてアメリカに雇用を増やし設備投資を増やすというものなのだから、資金が集まり、それが結果的にはドル高を誘う。
しかし、他方彼は貿易収拾赤字を見ていて、それをドル高のせいだと考えて、ドル安が良いのかな?と思ったのであろう。
米国に多くのインフラをするということは、外国からの資材の輸入が増えるということなので、ドル高はむしろ歓迎することでもあるだろうから、当面のドル高とそれによって資材調達を滑らかに行うことは、間違いだとも言えない面がある。
こういう色んな事を、考えているうちに夜も寝られなくなり、ついにフリンさんに電話をかけて相談してみたのだろう。
笑うべきではない。
彼は真剣に悩んでいるのだ。
そのうえで、電話したのだが、色よい返事をもらえなかった。
もっとも、真夜中に大統領から電話でたたき起こされて、分からないと言ったら、不機嫌になられても・・・とフリンさんも困惑したに違いない。
ただ、さすがにトランプは、勘がいいと私は感心した。
なぜなら、アメリカを立て直すという公約を守るためには、ドルの為替がどうなるのか?というビジョンを持っていることは、とても重要だからだ。
今の、矛盾は、トランプ自身も気が付いていないことだが、ドルがあまりにも多くサプライされてしまってそれが、様々な副作用を起こしてしまったことがひとつ。
次に、中国経済が不安定さを増してきており、それが、世界の市場に時折 冷や水をかけているという点。これが二つ目。
さらに、米国の孤立主義が、米国を繁栄に導くという単純さでは、複雑に入り組んだ現在の多くの企業の持ち合いや貸借の現状を、簡単に薪を割るかのようには、解決することにはならないということ。これが三つめ。
移民の排除によって、白人の仕事が増えるということを、トランプは考えていたのかもしれないが、多くの移民がする汚れたきつい仕事を、白人たちが代わりにするだろうか?ということについて、あまりにも無知だということだ。例えばエアポートの便所掃除を20代の白人がするだろうか?ということも、現実を見て彼は感じたことがあるのだろうか? これが4つ目。
最後に、もっとも彼の盲点になっているのは、多くの製造業が米国で物を作っている現実を知らないまま、140文字のツイートで米国の政策について毎日更新している点である。
アメリカの通貨は今後しばらく強くなる。
いくらトランプが歯ぎしりしても、そうなるだろう。
おそらく、ほとんどの経済学者が同意見のはずだ。
そして米国産の輸出は衰えるだろうし、グローバル企業は海外に出て行ってしまうかもしれない。
企業にとって、米国内での雇用を担保するよりも、自分の企業がより競争力の高い為替レートで物を作ったり、開発を進めたりすることは、重要だと考えるはずだからだ。
それに、もっとも大きなトランプの間違いは、彼の近視的な目標の立て方と性急な解決を常に求めている点だろう。
彼の任期は4年しかない。年齢からみても、あるいは、人気の点から考えても、次も当選するとは、私には思えない。
しかも・・・
4年後の米国では、衰えた輸出産業と、集まりすぎたドルの暴落とスーパーインフレーションが待っているかもしれない。
その時に、もういちどTPPをしましょうなんて、いくらなんでも 虫が良すぎる話だろうし、カナダやメキシコだって、今までとは違うお付き合いを望むに違いない。
そして、今度は、中国の習近平とまずは、文通から始めるのだという。
シャイな中学生のようなお付き合い。
それにしても、朝日新聞は中国にトランプが「一つの中国を支持する」と言ったと報道しているが、それは、本当のことなのだろうか?
と私は耳を疑った。
唐突で、しかも、今 彼がそれを言って何のメリットもない。
さらに、おととい中国からのアスファルト材に372%!!!の関税をかけると発表し、さらには昨日、肥料原料 硫酸アンモニウムには、493.4%!!!の関税をかけると発表したばかりではないか。
朝日新聞は、中国の発表を鵜呑みにして、トランプが言ってもいないことを、中国大本営が捏造したものを、書いたのではないか?と、疑ったのだ。
少なくとも、ここから見えることは、中国はアメリカに「なんとか自分たちのメンツを保たせてほしい。」と願い、「なんとか、物を買ってほしい」と乞い、しかも、「自分たちも第二次世界大戦の戦勝国であり、米国と同じ立場なのだから、それ相応の、敬意を払え」と言っている間に、米国は、着々と、THAADの配備をして、対中国の戦争準備を怠りなくしているという構図だ。
中国が、自分たちの置かれている立場をもう少し理解できていたならば、戦争は却って回避できるだろう。しかし、北京の共産党幹部たちは、おおよそ、米国の軍事的戦術とその準備の周到さを、見ているとは思えないのである。もし、見ていたならば、米国がやるまえに、北朝鮮をもっと、経済的に圧迫して引き締めていただろう。韓国に対しても、あいまいな制裁ではない方法を取ったに違いない。
だが、中国はアメリカを甘く見ている。
THAADを8月には配備完了させて、次の段階に移ろうとしている米国の戦術を、事細かく分析もせずに、ただただ、楽観的に大国を気取っているようだ。