舞妓としてデビューすることをお見世出しといいます。
過去に二度ほど見かけたことがあります。
たまたま京都にいる時期にあると知り見る事ができました。
二回とも、どちらも途中雨に降られてしまいましたが、雨の門出というのは縁起が良いそうです。
希望や夢に溢れ、これまでの頑張りが報われて素敵な笑顔でした。
舞妓になるために置屋へ入り、置屋のおかあさんやお姉さん達と寝食を共にしながら、舞や行儀作法、京ことばを習い、半年から一年ほど修行します。
面倒をみて下さるお姉さんが決まり、舞の流派のお家元から舞妓として出して良いとお許しが出ると、お見世出しが決まります。
舞の上達が早い人は早くお許しが出ますし、状況によってはお許しがなかなか出ない、ということもあるそうです。
修行も後半になると、お姉さんの名前から一文字をいただいた名前(例えば姉さんが豆○○なら豆△、など)が決まります。
どのような名前にするか、置屋の人々が考えることもあれば、晴明さんに相談して決めるところもあるとか。
舞妓と世話をする姉芸妓は姉妹となり、これを妹を引く、といいます。
姉芸妓は妹を引き立てるだけでなく様々な責任も負い、妹舞妓の花簪を誂えたり旅行に連れて行ったりすると聞いたことがあります。
姉の名前の一文字を妹が貰い、その妹が新しい妓を引き名前の一文字を与え、ずっと受け継がれて行きます。
これを「筋」と呼ぶそうです。
新しい置屋さんなどでは妹を引く芸妓がいないので、置屋が全面的にその舞妓の面倒を見て、お姉さん無しで出る舞妓さんもいます。
お見世出しの一か月前になると、割れしのぶという舞妓さんが最初に結う形の日本髪を結い、舞妓さんとほぼ同じ格好(帯は短めの半だら、袖は短め)をし、お茶屋に出てお座敷での振る舞い方などを勉強します。
祇園甲部では格式の高い、見習い茶屋と呼ばれるお茶屋で見習いをし、同じ見習い茶屋で見習いをした芸舞妓同士は見習い姉妹となります。
見習い茶屋の女将は発言力が大きいようで、節分の日には舞妓さんは普段と違う特別な髪形を結いますが、髪型によっては置屋のおかあさんが許可しても、こういうのは舞妓さんらしくないからあかん!と反対されてしまうということがあるそうです。
祇園甲部は置屋のみを経営しているところもありますが、甲部以外の他の花街ではお茶屋も兼業する置屋がばかりのようで、余所のお茶屋で見習いをしないのが多いようです。
お見世出しの日のお化粧は、お姉さんがしたり、専門の顔師さんを呼んでして貰うのと、花街や置屋によっても違うようです。
この日は正装なので襟足は三本足と呼ばれる描き方になります。
下の画像のような専用の型を使って描きます。
出たてさんは、眉に赤と黒を混ぜて使う人が多いですが、目元は赤で縁取るだけ。
ある程度キャリアを経ないとマスカラを使ったり黒でアイラインを入れられないようです。
舞妓さんはおぼこいのが一番!と、花街によってはマスカラの使用が奨励されなかったり、置屋によっては眉は黒一色のみ、赤を混ぜてはいけないという決まりのところもあるようです。
正装ではなく通常の拵えの時は、襟足は二本足を呼ばれる描き方になり、二本足の場合は置屋によって形に違いがあります。
マニアな方はこの襟足の描き方でどこの置屋の舞妓さんか判る、という話も。
口紅は一年を超えてお姉さん等からお許しをいただくまでは、「我が出ないように」と下唇のみに紅をいれるという描き方ですが、先斗町は初めから上唇にも両方入れるという話を聞いたことがあります。
髪型は、舞妓さんとして最初に結う、割れしのぶという髪型。
赤い鹿の子を付けた可愛らしい髪型。
お見世出しから三日間は特別な割れしのぶで、形は通常の割れしのぶと同じですが、油を塗った重たいかもじを使って髷を作ります。
通常の割れしのぶに使うかもじは軽い毛です。
結いたての割れしのぶに、下の画像にあるような見送りと呼ばれる銀色の飾り差し込みます。
お見世出しの日から三日間の衣装は黒紋付、豪華な帯、刺繍や箔押しの襦袢。
簪と櫛は鼈甲、銀のびら簪は両側に挿します。
この鼈甲の簪は置屋で代々受け継ぐ財産というべきもので、今時はなかなか作れないらしいです。
先斗町は、左側に挿す一番大きい簪が鼈甲ではなくて松と鶴の簪のようですが、直接見る機会がなく、一度生で拝見したいです。
とある置屋さんでは、同じ置屋内でも複数の筋の芸舞妓が所属しそれぞれ姉さんが違います。
ある「筋」の舞妓だけが、その筋のお姉さんから何代も受け継いできた特別な帯を、お見世出しの時に締めることが許され、同じ置屋の姉妹でも筋が違っていれば締めることは許されない、なんてこともあるとか。
お見世出しの挨拶回りでは、祇園甲部は男衆さんが付き添い、豆○さんの妹の豆△さんです、というように紹介しながら一緒に回ります。
他の花街では、お茶屋のおかあさんなどが付き添うことが多いようです。
ご挨拶用のお扇子を手に持ちながら挨拶回りをしますが、よく見ると背中の着物と帯の間にお扇子を差し込んでいます。
これはお見世出しの時だけするのかもしれません。
祇園甲部の舞妓さんも祇園東の舞妓さんも同じでした。
舞妓さんとして、第一歩。
お見世出しの目録が、祇園甲部と祇園東は玄関の内側に貼っていますが、これも花街によって違うようで、宮川町では玄関の外に貼るので通りがかりに拝見することができます。
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