現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

石田郷子・句集『万の枝』ふらんす堂

2024-10-04 | 俳句
火柱の見えしと思ふ白雨かな  石田郷子
暗がりに人詰めてをる里祭  同
寄せ合へる椅子のまちまち天の川  同
冬林檎剝けば夕べの月の色  同
万の枝けぶらふバレンタインの日  同
 

増田まさみ・句集『かざぐるま』霧工房

2024-10-04 | 俳句
にんげんの回転木馬さくら散る  増田まさみ
何処へも戻らぬひとよ冬花火  同
手花火の手の入れ代わるニルバーナ  同
空蝉にまだ陽の残る浅きゆめ  同
二つ折り厳禁とあり天の川  同
 

月野ぽぽな・句集『人のかたち』左右社

2024-08-10 | 俳句
街灯は待針街がずれぬよう  月野ぽぽな
真水汲むように短夜のFM  同
松茸に太古の空の湿りあり  同
まだ人のかたちで桜見ています  同
太陽は遠くて近し芒原  同
手袋に旅立ちの指満たしけり  同
 

坪内稔典・句集『リスボンの窓』ふらんす堂

2024-08-07 | 俳句

ころがしておけ冬瓜とこのオレと     坪内稔典

長崎に住もう枇杷咲く五、六日     同

リンゴにもオレにも秋の影ひとつ     同

ねじ花が最寄りの駅という日和     同

夕べにはすっかり晴れて栗ご飯     同


「零文学」第十三号(群馬県立太田高等学校文芸部)

2024-08-06 | 俳句

友情にイルカが跳ねる時を待つ     十文字潤

夕焼けが捨てた光に救われて     栗原知也

誰が夢を空へ紡ぎて五重塔     星野煌太


佐怒賀正美・句集『黙劇』本阿弥書店

2024-08-06 | 俳句

地平の目まだ半びらき真葛原     佐怒賀正美

乗るによき父の背いつか天の川     同

地球まだ知られぬ星か磯焚火     同

亀鳴くや天の沖には磁気嵐     同

くねりだす街の石みち鳥渡る     同

青嵐や骨のみで立つ電波塔     同


田中信行・句集『プリムローズの丘』(日経BPコンサルティング)

2024-08-06 | 俳句
黒海は波高くして春遠し     田中信行
空白を控へめに埋め冬すみれ     同
夕立に打たれ心の解毒かな     同
 
 

大井恒行・句集『水月伝』ふらんす堂

2024-05-01 | 俳句

覚悟なき死のおびただし核の冬  大井恒行
覚めているほかは眠りぬ鈴の風  同
ひかりなき光をあつめ枯れる草  同
赤い椿 大地の母音として咲けり  同
行方わからぬ光放てり手の林檎  同


「オルガン」33号

2024-02-11 | 俳句

菜種梅雨パレードにひつような橋  田島健一

山桜なにも言わずについてくる  同

人をさがしてと奉じてゐる遅日  鴇田智哉

菜の花の群れが空気を膨らます  同

つま先に春の闇から届く波  福田若之

ゆく春に折り目があれば分けやすい  同

ほんたうはつばきのなかにあることば  宮﨑莉々香

星ぼしや見えなくなつた手に手を振る  同

こゑが地に届いて枝垂桜かな  宮本佳世乃

ともに夜を生き桜蘂降りつづく  同

 


高橋亜紀彦・句集『異邦の神』朔出版

2024-02-11 | 俳句

何度開けてもないものはない冷蔵庫  高橋亜紀彦

仙人掌の永き夢から醒めて赤  同

曼珠沙華汝もサイコパスかも知れず  同

白梅や詩人は生くるために書く  同

長き夜や使ひみちなき砂時計  同

出目金の泪に誰も気づかざる  同

 


俳誌「牧」第15号

2024-02-11 | 俳句

月に住む時代それでも白子干  仲寒蟬

入口のとなりに出口牡丹園  同

息止めて水着売場を抜けにけり  同

バイナップルすら爆弾に見えてくる  同

出目金の赤は黒より不幸せ  同

 


越智友亮・句集『ふつうの未来』左右社

2024-02-11 | 俳句

雪もよい湯気のにおいのからだかな  越智友亮

気を抜くと雨粒こぼす春の空  同

噴水の水やわらかく水に消ゆ  同

駆け足や宇宙は秋の空の上  同

金木犀両手で握手して別る  同

数学をやめ台風を待っている  同

河童忌の鉄のにおいの掌よ  同

稲咲いて朝をくださる光かな  同

革ジャンの鈍きひかりやうまごやし  同

白玉や今が過ぎては今が来て  同

相槌うって君は話さずオリオン座  同

川幅に橋おさまらず枯葎  同


加藤哲也・句集『最終列車』角川書店

2024-01-31 | 俳句

わだつみの道の遠のく秋入日  加藤哲也

顔見世を出て風となる一と日かな  同

宵闇に紛れ込みたる夏館  同

新涼やロダンの肘のあたりより  同

大人にもこどもにも降る木の実かな  同

蠟梅や知覚過敏を憂ひつつ  同

菜の花や月光菩薩立ち上がり  同

 

 


蜂谷一人 著・句集『四神』朔出版

2024-01-25 | 俳句

ぶらんこの裏まで見せて跳びにけり  蜂谷一人

心太突いて夜空を滴らす  同

龍骨のかたちに日本南吹く  同

林檎むくまあるくほどけゆく時間  同

もう土へかへる桜でありしもの  同

蒼き灯の底を聖夜の魚となる  同

蛤の舌夕暮に触れてをり  同

馬跳びの最後冬夕焼と遭ふ  同

ひぐらしや波の広がる心字池  同

空蟬を残して声となりにけり  同

昼点いて白熱灯や虚子忌なる  同


佐藤文香・アメリカ句集『こゑは消えるのに』港の人

2024-01-18 | 俳句

噛みてなほ七面鳥の皮の照り  佐藤文香

ぬかるみのあかるみを踏み友なりけり  同

にはとりのはぐれて一羽春の中  同

夏霧を鳥おりてきて馬となる  同

終の住処鉄扉に薔薇を這はせあり  同

こゑで逢ふ真夏やこゑは消えるのに  同

音楽のあをく膨らむ熱帯夜  同