母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

ムラサキシメジ

2014年10月12日 | 季節
ムラサキシメジは森の中の
細い小道から離れた木々の足もと
木の葉にうもれた土からそっと顔を出す
土は沢山の葉を重ね
何年も荒い雨風にもまれて
山の養分を孕むきのこたちのやさしい寝床

ムラサキシメジはほんに小さなちいさなきのこ
人知れずにひっそり生まれ
のんきに欠伸してしのび来る雨露に背伸びする

ムラサキシメジはまぼろしのきのこ
森の精が冬の衣を纏い始める頃
滲みわたる妖しい匂いを漂わせ
細い首はむらさき色に 傘は小さく健気に
誰にも気付かれない場所に起き上がってくる

葉を落とし始めた森の
たくさんの木々に護られ愛され
清涼の冷気の朝夕
また傾いた太陽の木漏れ日をちらちら浴び
秋色染む森の中で
木の実やリスやヤマネたちやと一緒に冬の到来を知らせる

鍋に入れ味噌うどんに入れ
食べたいきのこ
懐かしい森のちいさな友人
香りが恋しいムラサキシメジに 
またきっと会おう



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