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韓国で強まる賃上げ要求、インフレが長期化 ― 利上げ長期化で景気下振れのリスク ―

2023-04-06 18:41:40 | 日記
リサーチ・アイ No.2022-086

韓国で強まる賃上げ要求、インフレが長期化 ― 利上げ長期化で景気下振れのリスク ―

2023年03月09日 立石宗一郎

韓国の消費者物価の伸びは、通貨安や資源高の一服で昨夏から低下しているものの、コア指数は高止まり。2月のコアインフレ率は前年同月比+4%と、韓国銀行(中央銀行)のインフレ目標2%を大幅に超過。

コアインフレの高止まりは、賃金の上昇が一因。

最低賃金の伸びは抑えられているにもかかわらず、賃金上昇率は高止まり。

これには、労働者の交渉力が強まっていることが影響している可能性。

労働組合の組織率は2010年代後半から上昇しており、最近では日本やドイツなどの先進国と遜色ない水準。

組織率の上昇は、前政権が、

①非公認であった公務員労働組合を承認、
②失業者や解雇者の労働組合加入を認める改正労働組合法の施行などの政策を実施したことによるもの。

この結果、最近は大規模なストライキが頻発するなど、労働組合による賃上げ要求が強まっている状況。

高インフレを受けて、韓国銀行は過去1年半にわたり利上げを実施。

政策金利とともに長期金利の上昇は続き、2月末には2019年末の水準から約2%上昇。

アジア主要国のなかでは金利上昇幅が最大。

労働者の賃上げ要求が一段と強まると、インフレの沈静化が遅れ、利上げが長期化し、内需悪化による景気下振れリスクが増大。

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ロシアの東方進出

2023-04-06 18:25:31 | 日記
日本史・世界史(目次)ロシアの東方進出ロシアの東方進出地図 

©世界の歴史まっぷ

ロシアの東方進出


 世界史研究 > アジア諸地域の動揺 > 東アジアの激動

 公開日 2018-08-05
 最終更新日 2018-08-09

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清の衰退

アヘン戦争(中国の近代の起点)

ロシアの東方進出
  • 1689 ネルチンスク条約: ピョートル1世(露), 康熙帝(清)
  • 1727 キャフタ条約 :ピョートル2世(露), 雍正帝(清)
  • 1828 トルコマンチャーイ条約: ニコライ1世(露), ファトフ・アリー・シャー(カージャール朝)
  • 1858 アイグン条約: ニコライ1世(露), 咸豊帝(清)
  • 1860 露清北京条約: アレクサンドル2世(露), 咸豊帝(清)
  • 1881 イリ条約 :アレクサンドル2世(露), 光緒帝(清)

ロシアの東方進出


1689ネルチンスク条約ピョートル1世(露)康熙帝(清)
1727キャフタ条約ピョートル2世(露)雍正帝(清)
1828トルコマンチャーイ条約ニコライ1世(露)ファトフ・アリー・シャー(カージャール朝)
1858アイグン条約ニコライ1世(露)咸豊帝(清)
1860露清北京条約アレクサンドル2世(露)咸豊帝(清)
1881イリ条約アレクサンドル2世(露)光緒帝(清)
ロシアの東方進出地図 ©世界の歴史まっぷ
16世紀後半、イヴァン4世時代のイェルマークによるシベリア探検( ロシアの台頭)以来、ロシアは毛皮などを求めてシベリアを東進し、バイカル湖畔のイルクーツク Irkutsk (1652)など拠点となる都市を建設しつつ、17世紀前半には太平洋岸に達した。

ロシアはさらにシベリアから南下して、黒竜江こくりゅうこう(アムール川 Amur )方面への進出をはかったため、黒竜江以北からモンゴル高原にかけてを領土の北端とする清朝と衝突することとなった。

このため両国は1689年ピョートル1世(大帝)と康熙帝のときにネルチンスク条約 Nerchinsk を結び、スタノヴォイ山脈(外興安嶺そとこうあんれい)からアルグン川を両国の国境線と定め、黒竜江流域は清の領土とすることを確認した。

しかし、この条約では、モンゴル方面での両国の国境が定められておらず、また貿易問題についての解決も必要であったため、1727年、ピョートル2世と雍正帝のときにキャフタ条約を結び、アングン川よりアルタイ山脈にいたるモンゴル方面での国境線を取り決めるとともに、国境をはさむキャフタ(ロシア側)と買売城マイマイチェン(清側)に交易場を設けて、両国間の貿易をおこなうことなどを定めた。

またピョートル1世は、デンマーク人ベーリング Bering (1681〜1741)に探検航海をおこなわせ、カムチャツカ半島 Kamchatka の探検のほか、アラスカおよびベーリング海峡の発見などの成果をあげた。

1792年には、エカチェリーナ2世の使節ラクスマン Laksman (1766〜96以後)が北海道の根室に来航し、1804年にはレザノフ Rezanov (1764〜1807)が長崎に来航して日本との通商を求めるなど、極東での交易増大をはかった。

このことは、鎖国中の江戸幕府に北辺問題をひきおこした。

ロシア皇帝ニコライ1世は、アヘン戦争でのイギリスの勝利に刺激され、1847年、ムラヴィヨフ Muraviyov (1809〜81)を初代東シベリア総督に任命し、積極的な東方進出政策をおこなわせた。

ムラヴィヨフは極東への植民を推進し、清が太平天国やアロー戦争に苦しんでいるのに乗じて、1858年アイグン条約(璦琿 Aigun )を結び、ネルチンスク条約を修正して、アルグン川と黒竜江を新たな国境線と定め、同江以北の地を獲得したほか、ウスリー江 Ussuri 以東の沿海州を両国の共同管理とした。

さらに1860年には、アロー戦争に際し、ロシア公使イグナチェフ Ignatyev (1832〜1908)が英・仏と清朝を仲介し、講和条約(北京条約)を成立させた見返りとして、露清北京条約が結ばれ、ロシアはウスリー江以東の沿海州を獲得した。ロシアは同地にウラジヴォストーク港 Vladivostok ❶ を建設し、極東・太平洋方面への進出の拠点とした。
またロシアは、清朝に対する新疆しんきょう(東トルキスタン)=イスラーム教徒の反乱 ❷ (1864〜78)を機に、居留民保護を名目として、1871年にイリ地方を占領した。反乱は、欽差大臣きんさだいじん ❸ として清軍の指揮をとった左宗棠さそうとう(1812〜85)の奮闘などにより鎮圧されたが、反乱終結後もロシアは同地方から撤兵しなかったため、露清間の紛争となった(イリ事件)。

この紛争は結局、ロシアに対しても強い姿勢で臨んだ左宗棠の努力がみのり、1881年イリ条約が結ばれ、ロシアに新疆での通商権を認めるかわりに、イリ地方は清朝に返還された。この間ロシアは、中央アジア(西トルキスタン)方面でも積極的な進出を進め、1860年代から70年代にかけて、同地にあったウズベク族の3ハン国のうち、コーカンド=ハン国を滅ぼし(1876)、ブハラ=ハン国とヒヴァ=ハン国を保護国とした(1868, 73)。こうした中央アジアにおけるロシアの南下は、アフガニスタンに勢力を伸ばしていたイギリスとの間に緊張を生じたため、1895年、両国の協議により、ロシア領トルキスタンとアフガニスタン間の国境協定が結ばれた。またロシアは、イラン(カージャール朝)にも早くから圧迫を加え、カフカス地方の領土を奪ったほか、前述のように、1828年にはトルコマンチャーイ条約によってアルメニアを獲得し、イラン国内におけるロシア人の治外法権を認めさせている。

ロシアの拡大  北京条約(清-露)

2023-04-06 18:10:10 | 日記
北京条約(清-露)

1860年、アロー戦争の後、清とロシアの間で締結。ロシアが沿海州に領土を拡大し、ウラジヴォストークを獲得、日本海・朝鮮方面への拠点とした。

 アロー戦争の終結に伴い、清朝が講和条約として英仏と北京条約を締結したが、1860年11月、

それを仲介したロシアがその報酬として清とのあいだに結んだ条約も北京条約という。

 ロシアは清に対し、黒竜江左岸の領有の確認と、沿海州の領有を認めさせた。

このときの国境線が、現在のロシア中国の東部国境線となっている。

またロシアは獲得した沿海州の海岸部に新たにウラジヴォストーク港を建設、不凍港を獲得し、日本海に進出することとなった。

ロシア・中国の国境確定

 ロシアはピョートル1世の時代から東アジアへの侵出を開始し、特にシベリアの資源を積極的に獲得しようとした。

そのため、清との国境策定が問題となり、まず康煕帝のあいだで1689年7月 にネルチンスク条約を締結したが、それは黒竜江の北の外興安嶺を国境とするもので、ロシアが大きく譲歩したものだった。

19世紀になって再びロシアの東アジア侵出が強まり、特に日本海への出口の獲得を課題とするようになり、

アロー戦争(第2次アヘン戦争)で窮地に立つ清朝に迫り、1858年、アイグン条約を締結し、黒竜江左岸の広大な地域の領有が認めさせ、沿海州(ウスリー川以東)は両国の共同管理とした。

続いて締結されたこの北京条約で、ロシアは沿海州を獲得、念願の日本海への進出を可能としたのだった。

 なお、中央アジア方面でも国境をめぐる問題では1727年のキャフタ条約の後、イリ事件などの紛争があったが、それらは1881年のイリ条約で解決された。

POINT  中露の東アジアにおける国境確定は、ネルチンスク条約→アイグン条約→北京条約という三段階をへることとなったが、それはロシアの東アジア侵出の過程である。歴史地図で国境線変遷と、ロシアが拡大した領域の変遷を抑えておこう。

ロシアと朝鮮の国境接触

 忘れてはならないのは、1860年の北京条約でロシアが沿海州を獲得したことによって、ロシアと朝鮮が国境を接するようになったことである。

ロシア領はウラジヴォストークより南に設定され、豆満江(トマン江)をはさんで朝鮮王朝と接することになった。

ロシアは満州進出と共に、ウラジヴォストークよりもさらに南方に完全な不凍港を獲得したいという領土的野心を持ち、朝鮮王朝に対しても圧力を加えるようになる。

それが朝鮮半島をめぐる、清・ロシア・日本の三国の対立という19世紀末以降の東アジア国際情勢の緊迫の背景となっていく。

ソ連・中国の国境紛争へ

 この北京条約で中国とロシアの両国はほぼアムール川とウスリー川の河川を国境とすることとなったが、河川内の中州はほとんどロシアが占有しそれをソ連が継承したため、1960~70年代の中国とソ連の中ソ国境紛争が起きることとなる。


木村 太郎のNon Fake News

2023-04-06 17:54:09 | 日記
木村 太郎のNon Fake News

「中国がロシアの寝首をかく?」ロシア支援うたう一方で旧清朝領ウラジオストクなどの奪還に虎視眈々
ジャーナリスト 木村太郎

木村太郎2023年3月6日 月曜 午後0:32


ウラジオストクは「海参崴」…地名を中国式に
「ロシアを支援すると宣言しておきながら、中国はモスクワの弱みに乗じてその寝首をかこうというのだろうか?」

2月26日ウクライナの英字紙「キーウ・ポスト」電子版に掲載された記事の小見出しだ。

「寝首をかく」とした部分の原文は「stab in the back」で「背中から刺す」だが、不意打ちを仕掛けるという趣旨なので「寝首」の表現にした。

記事は、最近中国が国境近くのロシアの地名を中国式に呼び替えると決定したことに注目し、ロシアがウクライナ侵攻で弱体化すれば、かつてロシアに収奪された地域を奪還しようという伏線ではないかと分析したものだ。

ロシアに割譲させられた旧清朝領(ピンクと黄土色の部分 Library of Congressより)この記事の画像(6枚)

その地名を中国式に呼び替える措置は中国天然資源部がこのほど発表したもので、ロシアと中国の国境にある8つの地名について現在ロシア語で発音されている地名に加えて昔から親しまれている中国名も地図上に記載することが義務付けられることになった。

例えばウラジオストクは「海参崴」サハリンは「庫頁島」などという中国名がロシア名とともにカッコ付きで付記される。

ウラジオストクの旧中国語名は「海参崴」

旧清朝領のロシアの地名を中国式呼称に

単なる懐古趣味と考えられないこともないが、実は今回中国式の呼称が義務付けられた地域はいずれもかつては清朝の領土の一部で、「アロー戦争」(1856年)で清朝が西欧列強に敗れて弱体化したのに付け込んでロシアが1860年の「北京条約」で割譲を認めさせたものだった。

中国としてはこれらの地域を回復する願望を隠そうともしていなかったが、ここへきてそれらの地名が中国式に呼び替えられることになったのは偶然ではないという分析が中国のSNSなどで盛んになっているという。

中国の習近平国家主席

病身のロシアに付け込む中国?

それを最も端的に解説しているのが産経新聞の矢板明夫台北支局長のフェイスブック「矢板明夫倶楽部」(中国語)だ。

「今回、ロシアが本当に崩壊したら、習近平は手を振って『失った領土を直ちに回復せよ』と命令する可能性がある。これが『病身に付け込む』ということである」

産経新聞矢板明夫台北支局長のフェイスブック「矢板明夫倶楽部」

「ロシアの崩壊」は西欧側の希望的観測ばかりではない。ロシア政界のナンバー2のドミトリー・メドベージェフ前大統領は先月22日「勝利を収めずに特別軍事作戦をやめれば、ロシアは引き裂かれ、消滅するだろう」とSNS「テレグラム」に投稿した。

プーチン大統領自身も26日放映されたテレビのインタビューで、ロシアの将来が危機に瀕していると述べ「西側諸国の目的は一つしかない。

旧ソビエトとその根幹を成すロシア連邦の解体だ」と危機感をあらわにした。

ロシアのプーチン大統領

「中露関係は岩のように堅固」とは裏腹に

そうしたロシアに中国が軍事支援を行わないように米国が牽制しているが、もし中国がロシア崩壊後に旧領土の回復を目指すのであれば、「病身」のロシアに救いの手を差し伸べるだろうか。

最近モスクワを訪問した中国の王毅政治局員は「中露関係は岩のように堅固だ」と言ったと伝えられるが、前出の「矢板明夫倶楽部」はこう締めくくっている。

「歴史を勉強した人なら誰でも知っているように、露中関係の歴史はごまかしと欺瞞の書である。彼らでさえ、自分たちの言うことを信じてはいない」

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。

アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。

慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転


高金利の長期化が懸念される韓国経済

2023-04-06 14:25:07 | 日記
アジア・マンスリー 2023年4月号

高金利の長期化が懸念される韓国経済

2023年03月28日 立石宗一郎

韓国では、前政権による労働組合への支援が賃金上昇につながっており、インフレが長期化する懸念がある。

インフレの長期化で高金利が続く場合、家計負担の増大を通じて、景気を下押しする恐れがある。

■急速な利上げが続いた韓国

韓国銀行(中央銀行)は、過去1年半にわたり利上げを続けてきた。

本年2月末には政策金利と長期金利はそれぞれ2019年末の水準から約2%上昇し、アジア主要国のなかでは上昇幅が最も大きい国となった。

急ピッチな利上げの背景には、①資源高、②通貨安、③住宅価格高騰を背景としたインフレ率の急加速が挙げられる。

世界的な資源高の影響により、電気・ガスやガソリンなどのエネルギー価格が上昇した。

原油などの資源を輸入に依存する韓国では、輸入品目のなかで鉱物性燃料が最も高い割合を占めているため、資源高は輸入総額を大幅に増加させた。

これにより2022年3月以降、貿易収支の赤字が定着したことから、韓国ウォンの対ドルレートは大きく下落し、幅広い輸入品の価格を押し上げた。

この間、住宅価格は2022年4月まで前年同月比+10%超の高い伸びが続き、賃料の押し上げ要因となった。

もっとも、上記三つのインフレ圧力は徐々に低下しており、消費者物価指数は2022年7月の前年同月比+6.3%をピークに鈍化傾向にある。世界景気が減速するとともに資源価格の騰勢は弱まりつつあるほか、米国の利上げペースも鈍化しており、韓国ウォンに対する下落圧力は低下している。加えて、利上げを受けた住宅ローン金利の上昇で住宅需要は冷え込み、住宅価格も昨年7月をピークに下落に転じている。

先行きのインフレに対する懸念が低下したことを受けて、韓国銀行は本年2月の会合で政策金利を3.5%と、8会合ぶりに据え置いた。市場関係者の間では、今後も政策金利は据え置かれるとの見方が強まっている。

■賃金上昇により高インフレ長期化の懸念
ただし、韓国のインフレが沈静化に向かうかどうか不透明感が強い。エネルギー価格の落ち着きを背景にインフレ率は低下しているものの、食料やエネルギーを除いたコアインフレ率は+4%前後で高止まりしている。コアインフレ率が高い背景には、賃金の上昇が挙げられる。

韓国の尹政権は賃金設定を年功序列から業績主義への移行を呼び掛けるなど労働市場改革を進め、文前政権による極端な労働者寄りの政策を転換している。最低賃金は2023年に前年比+5.0%と前年(同+5.1%)と同程度の伸びに抑制された。しかし、前政権による労働組合への支援策の影響で、組合の交渉力が強まっており、賃金全体を押し上げている。労働者1人当たりの平均月給は、最低賃金引き上げの影響が小さい2021年と2022年でもそれぞれ同+4.6%、同+4.9%と続伸している。

前政権は、①非公認であった公務員の労働組合を承認、②失業者や解雇者の労働組合加入を認める改正労働組合法の施行などの政策を実施した。これを受け、労働組合の組織率は2010年代後半から上昇しており、現在では日本やドイツなどの先進国と遜色ない水準に達している。トラック運転手による全国規模のストライキが昨年2度も発生するなど、大規模なストライキが頻発している。労働組合組織率の高まりとともに、労使交渉の激しさは増しており、組合による賃上げ要求の力も高まっているとみられる。

労働組合の賃上げ要求は、高インフレで家計が苦しくなっていることを背景としているが、生産性の上昇を伴わない大幅賃上げは一段のインフレにつながる恐れがある。このような賃金・物価のスパイラル的な上昇が生じると、インフレの沈静化は容易ではなくなる。

■高金利が長期化する懸念
賃金上昇により高インフレが長引けば、政策金利の引き上げが再開される可能性がある。韓国銀行の李昌鏞総裁は、「政策金利引き下げのタイミングは、消費者物価上昇率が2%台へ低下する目途が立ったときに議論することが望ましい」との見解を示している。韓国銀行は、年末まで3%台のインフレが続くと予測しており、年内に利下げが実施される可能性は低い。米国でも利上げが継続される可能性がくすぶっていることもあり、韓国の高金利は来年以降も継続する懸念が浮上している。

これまでの急速な金利上昇で、住宅市場は大きな影響を受けている。1月の住宅取引件数は前年同月比▲42.8%と大幅に減少した。2月の住宅価格も同▲4.4%と低下しており、1999年8月以来となる23年ぶりの大幅な下落率となった。韓国の家計債務は2021年にGDP比99%と、OECD平均(63.7%)と比べても高い水準にある。その約6割を占める住宅ローンは、変動金利型が7割強を占めており、これまでの金利上昇に伴い家計の利払い負担は増大し、個人消費を押し下げる要因となっている。高金利が長期化すると、利払い負担が一段と増大することに加えて、住宅価格が大きく押し下げ、保有資産価値の下落で消費が手控えられる逆資産効果が生じる可能性もある。高金利の長期化が、韓国景気を大きく悪化させる可能性には注意が必要である。