サムスンの1~3月期は、泥沼状態のメモリー半導体市況に足を取られて半導体部門がついに営業損益で4兆7000億ウォン(約4700億円)程度の大赤字に落ち込んだ模様である。
4月7日発表の同社決算で明らかになった。
サムスンはこれまで、メモリー半導体の人為的減産を否定してきたが、ついに「減産」へ方向転換すると明らかにした。これにより、最悪期を脱する条件の一つが整った。
『日本経済新聞 電子版』(4月7日付)は、「サムスン営業利益96%減 1~3月 半導体不況が直撃」と題する記事を掲載した。
韓国サムスン電子が7日発表した2023年1〜3月期の連結決算速報値で、営業利益が6000億ウォン(約600億円)と前年同期比96%減と大きく落ち込んだ。
景気低迷を背景に幅広いデジタル製品の需要減によって主力の半導体メモリーの販売が振るわなかった。
市況の底打ちはまだ見られず、半導体産業の苦境は当面続きそうだ。
(1)「売上高は19%減の63兆ウォンだった。
売上高営業利益率は1%と前年同期から17ポイント低下し、赤字転落の一歩手前で踏みとどまった格好だ。
純利益や事業部門別の収益は4月下旬に発表予定の決算確報値で公表する。
収益急減の主因は半導体の不振だ。
SK証券の部門業績推計(3月30日時点)によると、半導体部門の営業損益は4兆7000億ウォンの赤字(前年同期は8兆4500億ウォンの黒字)と14年ぶりの赤字だった。
売上高も49%減の13兆8000億ウォンに落ち込んだ」
韓国の金融経済情報メディアの聯合インフォマックスが最近、証券会社18社の予想を取りまとめたところ、サムスンの1~3月期の売上高は64兆2953億ウォン、営業利益は7201億ウォンと推計されていた。
発表された売上高・営業利益は、この証券会社予想すら下回った。半導体市況の急落が響いたもの。
(2)「新型コロナウイルス禍でのパソコンやタブレット端末、ゲーム機の特需がなくなり、米IT(情報技術)大手のデータセンター投資も縮小。
半導体供給網(サプライチェーン)の各所でメモリー在庫が積み上がったことで販売価格が急落した。
半導体メモリーで4割弱のシェアを握る最大手サムスンでも営業赤字に陥った。SK証券の業績見通しによると、半導体部門の営業損益は1〜3月期に底を打つものの、23年10〜12月期まで赤字は続く。
需要回復のけん引役が見当たらないためで、韓国SKハイニックスや米マイクロン・テクノロジー、日本のキオクシアホールディングスなど競合各社も同様に赤字が続く見通しだ」
下線のように、半導体市況が底入れして赤字を脱するのは、この10~12月期という予想が出ている。この見方は、世界的なコンセンサスと一致している。
「山高ければ谷深し」で、半導体の長く続いた絶好調期の反動(設備投資過剰)面が現れたものだ。
(3)「サムスンは7日、「一定水準までメモリー生産量を下方修正する」と減産を表明した。具体的な減産幅は言及しなかった。その上で、「中長期的には堅調な需要拡大を見込み、インフラ整備や研究開発投資を増やす」としている」
サムスンは、メモリー半導体で「人為的減産拒否」と強気姿勢を貫いてきたが、市況急落でついに「降参」した形だ。これで、市況急落にカンヌキがはまったので、次第にその効果が出てくるだろう。
(4)「サムスンで半導体に次ぐ収益の柱であるスマートフォン部門は売上高・営業利益ともに前年同期並みの水準を維持した。スマホ市場全体が落ち込む中で、旗艦モデル「ギャラクシーS23」シリーズが想定を上回る販売を記録したという。その他の家電とディスプレーの収益力は弱く、稼ぎ頭の半導体部門の落ち込みを補えなかった」
サムスンは半導体専業でなく、最終製品を擁する総合経営である。これが、半導体市況急落のショックを吸収し、最終赤字を免れた理由だ。
(5)「年間売上高30兆円を誇るサムスンの主要4部門はいずれも中国企業との競争にさらされている。
その中で唯一、中国勢を大きく引き離しているのが半導体だ。その半導体がひとたび市況急落に陥れば営業利益が96%減となるほどに、他部門の競争力低下が大きな課題となっている」
サムスンは、半導体を除けば中国企業との競り合い局面が増えてゆく流れだ。
このため、半導体を強化して経営基盤を固めなければならない。
その一環として、非メモリー半導体のテコ入れが不可欠だ。
この分野では、台湾TSMCが絶対的な地盤を築いている。
さらに、日本が2027年以降になれば、「2ナノ」の最先端半導体量産化で乗り出す。サムスンは、気の抜けない時代に入った。